ダニエル・クレイグの007が誰かに似ていると思ったら…
ダニエル・クレイグが007を演じることになった時、今では考えづらいことですが、アンチサイトまでできて、かなり叩かれました。金髪碧眼であったこと、178 cmの身長など、今までの007にはなかった特徴に違和感を感じる人が多かったのでしょう。
私も最初は違和感がありました。特に、ピアース・ブロスナンが大好きだったので、髪の毛を短く刈り込んだ強面の007を初めて観た時はびっくりしました。ブロスナンは「探偵レミントン・スティール」の時代からのファンで、その軽妙洒脱な007に慣れていたので余計そう感じたのだと思います。
でも、その違和感は決して嫌悪感に変わるものではありませんでした。むしろ、昔どこかで会ったような懐かしさ、既視感にとらわれたのでした。それが何であるのか分からないままシリーズは回を重ね、ついに「ノー・タイム・トゥ・ダイ」で終幕を迎えました。
そして、先日。私はその既視感と懐かしさの正体に気付きました。
それは、アマプラで無料でやっていた「男はつらいよ」の冒頭シーンを観て、突如、昔観た映画を思い出し、それを観たくなったことがきっかけでした。高校生くらいの時に観た映画で、ラストシーンで切なくて切なくて、ぼろぼろ泣いてしまった映画です。主題歌も良かった。
その映画は、「駅 STATION」です。ここまで書くと気付く方は気付かれると思いますが、そう、この映画の刑事役を演じていた高倉健が、まさにその既視感の正体だったのです。
「カジノ・ロワイヤル」で感じた違和感は、それまでのブロスナン007に比べてどん臭い、不器用な感じに対してでした。殺しの許可証を持つ男として、腕も良いし度胸もあって判断力にも優れています。しかし、何となく女性扱いは上手じゃないし、いわゆる瞬間湯沸かし器。無茶苦茶気が短いじゃないですか。
そのキャラクター設定が、まさに「駅 STATION」の主人公、高倉健が演じる三上英次そのものなのです。見た目も、性格も立ち居振る舞いも、良く似ています。
私は高倉健自体が特別好きというわけではなく、彼の出演している他の映画で観たのは「野生の証明」くらいです。ヤクザ映画は一切観ていません。なので、私の中での高倉健は、この「駅 STATION」の三上刑事でしかないのですが、このキャラクターが大好きで、何10回とこの映画を観ました。
八代亜紀の「舟唄」もしみじみと心に沁み入る良い唄です。今でも時々、口ずさみますし、すっかり行かなくなったカラオケに、もし行くとすれば、必ず唄うと思います。
そんなわけで、ダニエル・クレイグの007に感じていた既視感の正体が分かって、20年ぶりにスッキリしたのでした。というか、クレイグ007が登場したのが2005年。ついこの間のような気がしてたのに。クレイグも今年56歳。当時は30代だったわけかぁ……。