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瑠璃の部屋198

昨日は歯医者の定期検診だった。

帰り際に、受付で精算を待っていた。

長椅子には、年配の女性と付き添いの女性が、俺と1つ離れて座り。
「今は、痛くないでしょ?」
「うん」
というやりとりをしている。

そのあと、さらに年配の女性が、俺と、その2人の間に腰掛けた。

受付のテーブルの一段下に、物を置くスペースがある。
受付からは見えない。

ふと見ると。そこに、10円が乗っていた。

「あの、これ。ありました」と言って、受付に渡した。

そのあと、中華屋に言って。
野菜炒め定食を食した。

950円だった。

財布に小銭が、548円。

あの時の10円があれば、50円をちょうど払えたのに・・・

もんのすごく、考えた。

あれは、判断ミスだったのか。
チャンスを逃しがちな俺の、今までの生き様に対する警告か。
定常性バイアスに囚われるなという、お告げか。

落ち着け。あそこには人がいた。
あの10円を、俺が取れば、あそこにいた3人は気づいたはずだ。
そして、今頃、隣に座った年配の女性は。
「なんか、10円玉をコソッと持っていった男性いてねぇ」と
話したに違いない。

だから、これで良いんだ。これで。と
歩道を渡りながら考えた。

それでも、なんだか釈然としない。
こういう時、ピタッと形になる自分らしくない。

妙だ。

夜、財布の中を確認した。

538円+お釣りの50円。

ということは、あの時にあった端数は、38円。
つまり、10円あっても届かないわけだ。

よっしゃ、こう来なくては。・・・勝った