展示についての考え。
今回このテーマで展示を開催したきっかけは、もちろん、私自身がそういうものを好きだからというのが大きいです。
若いときにSMの世界を知りその中でもBDSM(ボンデージ、ディシプリン、サディズム & マゾヒズム)、それに付随するフェティシズムという様式美が自分にぴったりフィットしていました。
いまだに惹かれるのは、そのコミュニティが一概 には性的なものだけではない魅力も持ち合わせているからですかね。
美しく、奇妙で、文学的だったり、哲学的だったり、音楽やファッション、芸術、あらゆる文化に影響を与えたりもしています。
今回、開催させていただくギャラリー『KOMAGOME1-14 cas』は、この企画展にも参加している造形作家の石丸運人さんの展示を見に行ったとき初めて伺いました。
そこでたまたまギャラリーの方とお話する機会があったんですね。
自分は過去にフェティシズムを扱った作家の作品をバーなどで企画展示をしたことはあったのですが、スペースの性質上どうしても一部の人だけがターゲットになってしまう閉鎖的な感じがちょっともったいないなと思っていました。
そこで「本来は薄暗い地下のスペースが似合うテーマをアートギャラリーで展示してみたらその異質さが面白そう」とギャラリーの方々にお話ししたところ、とても興味を持っていただき開催に至りました。
フェティシズムという言葉は元々、物神崇拝を意味し、人類学などで使われていましたが、のちに心理学の言葉として、私達に馴染みのあるパーツや素材などに対して強い性的魅力を感じる感情全般のことを指すようにもなりました。
ディシプリンは訓練や規律を意味し、BDSMの世界では躾や懲罰、調教などの意味 で使用します。
SMプレイにおいてフェチと調教は切り離せない関係性なんです。
ただ、調教とするとさすがにストレートすぎて身構える感じもあるだろうから今回は拘束としまし た。
芸術って作品をある程度は鑑賞者の解釈に委ねるところがあって、自由でもあると思うんです。
フェティシズムも、同じものに執着していても微妙なこだわりがあって千差万別。ある意味自由。
でもこの展示は作家たちの執着や拘りのメッセージがあるわけで、そこは自由に解釈できるものでもない。
このフェティシズム(執着、欲望)のためのこれ、というような。
自由解釈のない作品は まさに作家たちから鑑賞者へのディシプリン(拘束、調教)という関係性になるのがこの展示テー マにはあります。
アートとすると触れやすくなるからというのはあります。
春画を芸術として扱うことで広く受け入れられやすくするようなネガティヴな意味ではなく、アートという言葉が内包する懐の深さや表現の自由というポジティブな側面があると思います。
今回の参加作家たちはフェティシズムに絡む事柄を実践していたり深く理解している人たちです。
フェティシストである馬之介さんやオウサムさんの作品は、自身が使用するために自身で製作したもの。そういう実用的なツールであっても芸術的な美しさやすごさがあります。
それはホンモノであるからこそ素晴らしいのですが、普段ギャラリー展示などでは見ることはできません。
アンダーグラウンドな物事は理解がある人たちだけに向けられていると私も思っていますが、 アートというフィルターを通したことで、地上に飛び出して色々な人たちの色々な感情に触れることができます。そこには大きな意義があると思っています。
性癖、フェティシズムはある種の自分自身でもあり、切り離すことができない性(さが)ですよね。
何フェチ?みたいな感じで言うと私自身にとってのフェティシズムも色々あって、たとえば人の太 ももやピンヒールを履いた脚など、本来の性的な目線にもなるんですけど、そこに性衝動はないし、こうしたい、されたいというのも全くなく、寧ろヒールはこうでなくちゃ、みたいなこだわりの執着 の方にいってしまう。
街中でもその感覚はあるので人のヒールを自然と見てしまうし、とても好みのものだったりするとその人にも興味が湧いてきたり。
強い好奇心や興奮ではあるけれどやはり性衝動とは違う。 これは私だけなのか分からないのですが、私自身は女性の肉体を持って生まれたので、フェティシズム=(イコール)性欲、性衝動という感覚が男性の肉体よりは分かりにくいのではないかなと 思っているところがあります。
様々なシチュエーションによってフェティシズムの受け止める意味合いも変化するのではないか?
今回ギャラリーという場所で展示をするもう一つの目的でもあります。
制作期間などとてもタイトな進行になってしまい作家から企画自体がディシプリン(拘束)だと言われました(笑)。
東京のアンダーグラウンド・シーン内外、色々な方々のご支援、ご協力で展示を開催することができました。
関わった全ての方に心から感謝をしています。
見どころとして、様々な作家同士のコラボや対比があります。たとえば、造形作家とコルセットデザイナーのコラボ、ヘビーラバリストというハードなフェティシズムとガーリーなイラストレーターとのコラボ。また、女王様、マゾヒスト、フェティシストたちのリアルアート、そして、ヴィヴィアン佐藤やケロッピー前田の新作などが同じ空間に展示されます。
是非ギャラリーへ足を運んで、作家たちの想いと対話して観てください。
お待ちしています。
「アートに見るフェティシズムとディシプリン」展
●日時:2022/6月4日(土)〜6月11日(土)13:00〜19:00
●会場:KOMAGOME1-14cas
●参加アーティスト
石丸運人
緑川ミラノ
SAYO
Doctrine Heavy Rubber Tokyo(作品協力)
大谷ひろみ(モデル作品協力)
雛奈子(モデル作品協力)
ケロッピー前田
ヴィヴィアン佐藤
鏡ゆみこ
中村馬之介
オウサム
Direction 玲芳龍
※この記事は某記事掲載のために書いたものをケロッピー前田さんが添削してくださいました。
丸のママの記事は使用されなかったのでこちらに掲載しました。
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