(中国のデリバリー配達員の話の続き)人間だから自発的に「良いこと」をすることもある
昨日の記事で中国のデリバリー配達員が客への腹いせに料理に小便をかけてしまった事件を紹介しましたが、この一件から得た問いを更に考えてみたいと思います。
この事件については様々な見方ができると思いますが、個人的には血が通っている人間だからこそ「悪いこと」をしてしまったと考えています。
もしこういうことを完全に防ごうと思ったら、もはや高度なAIが搭載されたロボットに任せるしかないと思います。
一方で今回はたまたまネガティブな結果になってしまいましたが、人間だからこそ「良いこと」をすることもあります。
ここで、私が10年前に中国で出会ったファミレスの店員さんの話を紹介したいと思います。
些細なことかもしれませんが、ポイントは店がやらせているのではなく、この店員が自分の意志にこのような行動を取ったことにあります。
(他の店員はマニュアル通りのごく普通の対応でした)
当時の中国の飲食業は待遇も悪く、フロアの店員の給料なんてたかが知れています(日本円換算で月給50,000円行かないぐらい)。特別なことをしたからと言って臨時ボーナスが出るわけでもありません。
あいにくその店員とゆっくり話すことができなかったので、何が彼をそうさせたのかは分かりませんが、一つ言えるのはこういう行動は人間ならではのことであり、AIはやらないということです。
中国のサービス業のレベルもまだまだ発展途上のなかで、このような店員に出会えることが本当に「ありがたい」ことだと思います。
小便をかけた配達員とこのファミレスの店員の違いを「個人の資質」で片づけてしまうこともできますが、資質が低いからといって常に悪いことをするわけではなく、資質が高いからといって常に良いことをするとは限りません。
やはり様々な要因が重なった結果、前者は不適切な行動を取ってしまい、後者は素晴らしい行動を取ったのではないかと思います。
行動をコントロールすることはできるのか
人がサービスを提供する場合、企業は「悪い行動」を無くし「良い行動」を取ってもらう必要があります。そこで、様々な方法で人の行動をコントロールしようと考えます。
例えばUber Eatsには配達員を評価するシステムがあります。
仕事で不手際があれば悪い評価がつきますが、お客さまに喜ばれると高い評価がつくので、配達員が「良い行動をしよう」と思える要因になり得ます。
もっとも配達員にも様々な人がいますので、悪い評価をつけられたら「次は改善しよう」と奮起する人もいれば、悪い評価を見て「ふざけんなこの野郎!」と思う人もいます。
実際に件の中国の配達員は「Bad評価」に逆上して”犯行”に及んだので、評価システムが完全に仇になったと言えます。
悪い行動が一切できないようガチガチに管理するという発想もありますが、そうなると従業員はまさしくロボットを化してしまい、顧客が感動するような「良い行動」も出てこなくなる可能性があります。
人の行動をコントロールするかどうか、どこまでコントロールするのかは企業にとって安易に答えが出せない難しい問題であると思います。
人間だから善も悪も両方含んでいる
この問題は性善説に立つか、性悪説に立つかで立場が分かれるかもしれませんが、100%の善人も100%の悪人もいないように、結局は誰でも善悪両方含んでいるのではないかと思います。
確かに人は目先の欲望に目がくらみ、感情に引きずられて暴走してしまうことがありますが、一方で中国の店員さんのように人は自分から良いことをすることもありますので、その可能性を信じてあげることが大切かもしれません。
何が良い行動を取る「きっかけ」になるかはわかりませんので、お客様に対して不適切な行動を取ってしまった人も、その人への扱いを変えてあげることで次はお客様を感動させることができるかもしれません。
手間がかかって効率が悪いのかもしれませんが、そこがAIにはない人間ならではの価値ではないかと思います。
今回もお読みいただきありがとうございました。
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