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「何かあったらどうするんだ」の基準がみんな違うから話が噛み合わないという件

とある職場でこんな会話がありました。

上司:「なぜ誰にも相談もせずにこの件を勝手に進めた!?」
部下:「いや、これぐらいなら問題ないと思って・・・」
上司:「何かあったらどうするんだよ!」
部下:「そう言われても・・・」
上司:「事の重大さをわかっているのか!」
部下:「はあ、そんな大事とは思わないのですが」
上司:「もういい!次からは勝手に進めるな!」

そして、上司はこの部下がホウレンソウ(報告・連絡・相談)もせずに向こう見ずで無謀な行動に走っていると悩み、部下は上司が「何かあったらどうするんだ症候群」に罹っていると愚痴を言うわけです。

この上司と部下の会話はこの先も噛み合うことはなく、互いに別々の部署になったときにようやく心の平穏が訪れます。

上司:「やっとあのわがままな”問題児”がいなくなった」

部下:「やっとあの器の小さい”クソ上司”から離れることができた」

この件は残念ながら不幸な結果になりましたが、事の発端は「何かあったらどうするんだ」の基準が両者で大きく違っていたということです。

上司の「何かあったらどうするんだ」の基準は「顧客からのクレームに発展する可能性が1%でもあれば回避すべき」ということであったのに対し、部下の「何かあったらどうするんだ」の基準は「別に誰かが死ぬリスクがあるわけではないので何も気にする必要はない」ということでした。

もちろんどちらが正しいかは会社の方針などによって変わるので一概には言えないのですが、少なくとも「何かあったらどうするんだ」という言葉の裏には本人が許容できるリスクの確率と大きさ(それが起きた時の被害)が潜んでいるはずであり、この基準が違うと話が最初から噛み合わないということです。

例えばある人は「0.1%の確率で、お客様に怒られる」というリスクすら許容できないかもしれません。

一方で人によっては「10%の確率で、自分が死ぬ」というリスクも許容してしまうことがあります。

リスクの確率と大きさをどこまで許容できるかは人によってあまりにも違うため、いきなり「何かあったらどうするんだ」と言われても話が噛み合わないとは当然です。

この話はメーカー系の海外駐在員の方からもよく聞きます。

日本のメーカーでは一般的にリスクへの許容度が極めて低いのですが、海外に行くと日本では許されないレベルのリスクすら許容してしまう国があります。

その基準の違いを認識しないまま現地の社員に「何かあったらどうするんだ」と注意しても相手は全く意に介さないので、駐在員としては困ってしまうわけです。

同じ日本人でもリスクへの許容度は人によって千差万別なので海外に行けばなおさらのことですが、もしかしたら無意識のうちについ「同じ人間なので自分と同じだろう」と思い込んでしまっているのかもしれません。

そんなわけで「何かあったらどうするんだ」と言う前に、お互いのリスクの許容度を確かめてからのほうが認識を揃えやすいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございます。