ミスを反省しない部下に反省させるとどうなるか
管理職研修を行っていると受講者の方から部下に対する悩みを相談されることがありますが、最近では以下のようなお悩みをよく聞くようになりました。
「ミスをしても自分は悪くないと思っている」
「自分の責任を棚に上げて、人のせいにしている」
「周囲に大迷惑なのに、本人に反省の態度がまったく見えない」
「叱るとパワハラになってしまうので強く言えない」
お話しを詳しく聞くと、皆さんに共通しているのが「こういう態度のやつには何とか反省させたい!」という思いでした。
そこで、私はあえて皆さんの期待に反することを言いました。
「こういう人に反省させても行動は変わりません」
というのも、ミスをしても反省しない部下はそもそも自分の行動に非があるとは思っていません。
そんなときに上司が怖い顔をして「反省しろ!」と説教すると、部下の心の中はどうなるのでしょうか?
残念ながらこの部下は「ああ、私はやってはいけないことをやってしまった、上司も怒っているので次は気をつけよう」とは思ってくれません。
(そのように考える人は上司が何も言わなくても反省してくれます)
自分に非があると思っていない部下はおそらく心の中で「こっちは悪くないのにうるさいな・・・、でも面倒だからとりあえず頭だけ下げておこう」と考えているのでしょう。そして、それが「反省のない態度」として上司の目に映ります。
そこで上司が更に強い言葉で反省を促すと部下は目の前の上司の怒りをやり過ごしてこの場を早く切り抜けることに意識が向いてしまい、自分の行動に意識が向かなくなります。
そのため、上司の目の前で「反省するフリ」をしても、時が経てばまた同じようなミスをやらかしてしまい、そこで上司が更に強い反省を求めてますます悪循環に入ってしまいます。
「反省の態度」よりも「行動」に目を向ける
部下の態度がどうしても許せない場合もあると思いますが、職場で大事なことはあくまで「やるべきことをやる」ということになりますので、部下の態度を責めるよりも、「自分がやったこと(やらなかったこと)」に目を向けさせたほうが改善につながります。
特に「自分は悪くない」と思っている相手が叱られたぐらいで「私が悪うございました、申し訳ございません」となるはずもなく、むしろ心の中で「何でだよ!」と抵抗してしまいますので、叱れば叱るほど却って事態が悪くなってしまいます。
ミスをしても「自分は悪くない」と思っている人の多くは悪意があるわけではなく、自分の行動と結果を客観的に認識していないだけの可能性が高いため、上司はまず以下のようなコミュニケーションを取るとよいでしょう。
1.部下が取った「行動」を客観的な事実として伝える
(例)
昨日私が業務の指示をしたときあなたはメモを取っていませんでしたが、「わかりました、任せてください!」と元気よく答えてくれました。
2.部下の行動が引き起こした「結果」を客観的な事実として伝える
(例)
今日あなたの業務を確認したところ、指示したことと違っている箇所が3つ見つかりました。このままではお客様の苦情につながるので、私の方で直しておきました。
3.「行動」と「結果」を部下がどう認識しているのか確認する
(例)
メモをしなかったことと、業務での間違いが3カ所あったことは関係があると思いますか?
ここで部下が自分の行動(メモをしない)が自分の望まない結果(間違いを犯す)につながっていると認識できれば、次から行動を変える可能性は高くなります。
もし部下がすぐに認識できなくても、このような会話を進めていく中で自分の行動に意識が向くため、改善の糸口をつかめる可能性もあります。
上記のようなコミュニケーションで重要なことは、部下が「上司に詰められている」と感じないよう、リラックスした雰囲気で穏やかに会話することです。そうすることで、部下は自分がやったことに向き合うことができます。
部下がひどい過ちを犯したときほど、上司は部下に反省を求めないほうが良いかもしれません。
今回もお読みいただきありがとうございました。
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