「総合職・正社員」が前提の人材育成はそろそろ曲がり角に来ていると思います
本日岸田首相の所信表明演説がありました。
この中で個人的に注目なのは下記の部分で、もし政府が本気で「学び直し支援」を推進することになると企業での人材育成のあり方も大きく変わっていくと考えられます。
これまでの日本の大企業では年功序列・終身雇用を前提とした「メンバーシップ型雇用」が中心であり、新卒一括採用で「総合職・正社員」として入社した人材に対して年次ごとに教育を行ってきました。
下図のように全員が同じスタートラインに立ち、研修やOJTを通じて「出世」を目指すという考え方です。(いわゆる階層別教育)
もちろん実際は全員が出世することはないので、途中で脱落する人は出てきますが、最後まで「出世レース」に残った人材が経営幹部となっていきます。
このやり方は自社の文化・価値観に精通した人材を育成するという点においては強みを発揮しますが、その分専門性を高めることには適しておらず「自社しか通用しない人材」を量産してしまうという課題もあります。
よく転職先で「何ができますか?」と聞かれて「部長ができます」というジョークがありますが、このような内向きの人材ばかり育成してきたツケかもしれません。
一方で今後は岸田首相の所信表明演説にもあったように国を挙げて「ジョブ型雇用」を推進していくと、いわゆる「総合職・正社員」ではない人材も相当の割合を占めるようになります。
そこでもし従来のように「総合職・正社員」を前提に人材育成を考えてしまうと派遣社員、アルバイト、業務委託といった「非正規社員」はことごとく育成の対象から外れてしまうため、このような人材は育成されないまま放置されかねません。
いくら政府が5年間で1兆円出すといっても、人材(あらゆる働き方の人を含む)を教育する責任は最終的には企業にあり、育成を怠った企業は競争力が低下していきます。
そこでこの先の企業での人材育成のあり方は下図にようなものになると考えています。
様々な働き方があるため、スタートラインもゴールも全員異なります。
ある人はキャリア採用で入社して経営幹部を目指しますが、ある人はアルバイトとして生涯現場で活躍する道を選ぶかもしれません。
ただ本人がどのような道を選ぶにしても、企業としては職業人として成長するための教育を提供することで自社の人材を育てることができます。
そして雇用がますます流動化してくると、働く人は「自分をちゃんと育成してくれる企業」を選ぶようになり、育成を疎かにする企業は人材が定着しなくなる可能性があります。
このような企業側も人材育成のあり方が変わっていくと考えられますが、同時に一人一人の働く人も意識の転換が必要かもしれません。
これまでは会社が用意してくれたレールの上を一所懸命走ればよかったのですが、今後は自分自身がどのような職業人になりたいか考え、自分の成長は自分の責任として考える必要があります。
今後はどこかの大企業に「総合職・正社員」として採用されれば安心という時代ではなくなりますが、逆に最初は「時給制のアルバイト」でも努力次第ではいくらでも可能性が切り拓けるようになります。
個人的にはたまたま卒業した年の経済状況によって「氷河期世代」を生む今のシステムよりも、アルバイトでスタートしてもチャンスがあるシステムのほうが本当の意味で公平だと思います。
いずれにしても働き方が大きく変わるのは避けられないので、企業も個人も「人材育成」をより自分事として考えたほうが良いかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございます。