日本の企業で求められる「日本語力」は恐ろしくレベルが高い
今日の日経新聞の一面に、大卒外国人の採用、「高い日本語力要求」が壁、という記事がありました。
記事では求人件数の75%は日本語能力試験で「N1」以上のレベルを求めているのに対し、外国人求職者の37%しかN1レベルに届いておらず、結果的に専門性の高い人材を逃していることを指摘しておりました。
私も様々な企業で大卒の外国人新入社員向けに研修を行ったことがありますが、日本の職場で必要な日本語力はN1レベルでは到底足りないと感じております。
というのも、研修に参加している外国人はN1に合格している方ばかりですが、皆さん口を揃えて「日本人上司が言っていることの意味がわからない」と悩んでおりました。
(過去の記事でこの辺の話について紹介しております)
中には上司から「なんでこんなことをしたのか?」と聞かれたので経緯から詳しく説明しようとしたら、いきなり「言い訳をするな!」と怒られてしまったという人もおり、「なんで?」=「Why?」じゃないのかと戸惑っていました。
日本語は文脈によって意味が大きく変わる言語なので、上司の「なんで?」がそのまま「Why?」の意味を持つこともあれば、「なんで?」=「こんなことをしやがって!(オレは怒っている!)」という意味もありますが、教科書通りに日本語を学んだ外国人がそれを理解するのは至難のわざです。
一方で上司側も「外国人の部下はすぐに言い訳をする」という悩みを言ってくるので、おそらく上司も「自分が言った言葉を相手は理解していない」ということがわかっていないと思います。
外国人を採用すると職場でこのようなすれ違いが起きてしまうため、企業側も高い日本語力を求めたくなるのは理解できますが、前後の文脈まで汲み取れるレベルまで求めてしまうともはや日本語ネイティブを採用するしかありません。そうなると外国人を採用する意味がなくなります。
実際に研修の場でも外国人の新入社員から「そこまでの日本語力を求めるなら、私たちじゃなくて普通の日本人を採用すればいいのに」という身も蓋もない愚痴が出ていました。
もっとも、日本で生まれ育った生粋の日本語ネイティブ同士であってもすれ違いが起きるのが日本語の難しいところです。
上司と部下のわかり合えない関係は日本人と外国人のみならず、日本人同士でも多く見られます。
それこそ日本人の部下しかいない管理職の方向けに研修を行うと、「話が通じない日本人部下」の悩みはいくらでも出てきます。
学校での国語の試験でよく「登場人物の気持ち」について考えさせる問題が出てきますが(私は大の苦手でした)、企業が求めている日本語力はこの手の問題で満点を取るレベルかもしれません。
最近は子供の読解力の低下が問題になっているため、今後は「日本語力」が採用時の大きな課題になってくる可能性もあります。
社員全員に高い日本語力を求めるのは果たして現実的かどうかは議論の余地がありますが、今後ますます人材の多様性が増すことを考えると個人的には日本語力に依存しないコミュニケーション(例えば誤解がないよう数字と絵で示す資料をつくる)を検討してもよいかと思います。
今回もお読みいただきありがとうございました。