美しい瞬間には、名前がある。 〜月編〜
季語の世界で「月」といえば、「秋の月」を意味する。
空気が澄んで空がうつくしく見える秋には、月にまつわる季語がたくさんある。
古代日本人は、天気や時間によって表情を変える「月」に目をとめ、それぞれにちなんだ名前をつけた。
季語というのは、クリエイティブで、繊細で、すばらしい美的感覚の表れだと思う。この趣のある言葉たちを、ぜひ現代にも繋げていきたい。
それでは、この秋を風流に過ごすための「月の季語」7選。
ぜひご覧ください。
夕月(ゆうづき)
旧暦八月の二日月〜上弦の月(今年は9/17-9/23頃)のこと。
この時期の月は、日が暮れてまもなく現れ、夜中早々に沈む。光も弱く儚さを感じさせる。そんな月に名づけられた名前。
中目黒にある日本料理の名店「夕月」は、この季語が由来なのでしょうか。
久しぶりに伺いたくなってしまった。
残月(ざんげつ)
明け方まで残る月のこと。
夜が明けても空に残りつづける月を見つけたとき、ちょっとうれしい。
夜に見る月とは違う、特別感がありますよね。
ところで、「残月」といえば、虎屋さんの人気和菓子の1つでもある。
和菓子は、うつくしい日本語を教えてくれる、おいしい教科書。
月の客(つきのきゃく)
月見をしている人、月見の宴に招いた人のこと。
今年の中秋の名月は 9/29(金)、月末の金曜だなんて最高のシチュエーションですね。
たとえば、月見をする自分たちのことを「月の客」と呼んでみる。普段よりも風流に楽しめるかもしれません。
芋名月(いもめいげつ)
芋の収穫期に訪れる十五夜の月(中秋の名月)の別名。
ここでいう芋は、サトイモのこと。なんとも美味しそうなネーミングですねぇ。
ちなみに、十三夜(今年は10/27)の月は、別名「栗名月」。こちらも美味しそう。
どちらも秋の作物の収穫時期に合わせて月に名前をつけていますね。農業と月が密接に関係しているのがわかります。
月影(つきかげ)
月明かり、あるいは月そのもの。
「影」という字が、光を表す「景」からできていることから、月の光を意味する。
「月明かり」と「月影」って、同じ意味なんですよね。
「明」と「影」が同じ意味と知ったとき、とても衝撃で印象深くて。
それ以来、この季語が好きなんです。
星月夜(ほしづきよ)
月のない夜に、満点の星が輝く夜空の様子。
月夜ではなく、まるで月が出ているかのように星の明かりが輝くことを表す。
「星月夜(starry night)」といえば、ゴッホの代表作のタイトルでもお馴染み。絵の中では、月も星も それぞれ光り輝いていますね。
心の月(こころのつき)
秋の月のように、清く明らかで迷いのない心のこと。
悟りが開けた境地を月に例えた言葉。
自分の心を月に重ね、想いにふけるという行為は、今も昔も変わらないのかもしれません。
禅語には、「吾心似秋月(わがこころしゅうげつににたり)」という言葉がある。
煩悩があれば、秋月のように澄みきった月になることはできない……。
煩悩だらけの自分の心に、喝をいただけるメッセージである。
* * *
月にまつわる季語7選、いかがでしたか?
月にまつわる季語は種類がとっても豊富。
あなたが月を見上げて感じるsomethingを、ドンピシャに言い当てる言葉はきっと見つかるはず。
ぜひ、ご自身でも調べてみてくださいね。
スーパームーンとかブルームーンとか、カタカナで月を表現しがちな現代だからこそ、あえての日本語で月を語りたい🌝
= お わ り =
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