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母の口癖 金は天下のまわりもの

私は、ずっとこの母の口癖が嫌いだった。
というのは、お金遣いが非常に荒く、ほとんど買い物依存症であった。
昔は仕事をしていて、それなりに稼ぎがあったようだが、
私が生まれてからは専業主婦だった。
母が40歳くらいの時には、また仕事をしていたがお小遣い稼ぎのようなもので、人付き合いの多い母の交際費でほぼなくなっていた。
そのころまでは、父も仕事が順調で収入も多く、特に私も母の言葉を気にすることもなかった。
彼女は昔から、「ほしいと願ったものは必ず手に入った。私の願いはいつも叶うし、そもそも金は天下のまわりものである」が口癖だった。
確かに、「あれがほしい~」と彼女が言い出すと、大抵のものがいつの間にかプレゼントされたり譲り受けたりしていたので、引き寄せの法則が成立していたのかもしれない。

しかし、父の事業が傾き生活が一変する。
私も家に稼ぎの大半を入れたし、家事を多く受け持ち、祖母の世話はほぼ私だった。20代でありながら、家と仕事の往復がほとんどだった。
そんな中でも、彼女のブランド買いは止まらない。
理由は、「会社がおかしいとうわさが立ってはいけないから、今まで通りの派手な生活をしていなければ」だった。
一理ある。
でも、それがあるときから言い訳だと気づく。
彼女はお金がないことへのストレスで、カードを何枚も使いまわし、分割でブランド品を買い、家族の知らぬところで借金が膨らんでいた。
そうなると、家族へ嘘もつくようになりだした。
支払いが近づくと、イライラするか具合が悪くなるかで、お金がないのは
父が事業を失敗したからだと喚き、全くでっち上げで私のカードを貸してほしいとか、来月までいくら貸してほしいなどと言い出すようになった。

それでも、彼女の口癖「金は天下のまわりもの」は変わらない。
結婚前の自分が、貯金もできないほど家族を支えているのに、高級ブランドを買い漁って、そっとしまい込む母。
20年ほど、何十回となく喧嘩をし生活を改めること、お金遣いの荒さを改善し老後に備えることなど、泣きながら訴えた。
私や姉は、彼女の借金の穴埋めも何度もしたし、嫌悪感する抱いていた時期が長かった。
そしてついに、彼女の口癖を再び聞いたときに私はぶちぎれて
「二度と私の前でその言葉を使うな!天下のまわりものではなく、我々家族があなたのためにお金を回しているだけだ!」と叫んだ。
それ以来言わなくなったけれども、今度は具合が悪くなる日が増えていく。

しかし、最近私はあることに気が付いたのだ。


よくスピリチュアルな話としても言われたり、ビジネスでも引き寄せの法則などの話題でも上る「宇宙銀行」というワードがある。
ずっと、私は「は?なにそれ?宇宙銀行って?アホか」と思っていた。
そしていつも、私は家族にお金を搾取されていて、自分はお金が無くつらい人生だと思っていた。
しかしだ。
考え方を改めるある出来事があってから、私は母を恨まなくなった。
内容については割愛したいが、とあることをきっかけに、病気を理由にしてしまうことで逃げる彼女を、なんとかせねばと思ったことが大きいだろう。
そして、彼女の口癖が変わってしまった。「私はお金が無いの。だから買いたくても買えないの。」ことあるごとにそう言いだすようになった。
買い物ができないことでストレスとため、病気を理由に家事をしなくなりだした。どんどん薬を飲んだり、寝ていることが増えた。
私にとっては、どちらも大きな家族の問題であることは変わらない。
でも健康寿命を全うしてもらうためには、このままではマズいと、真剣に考えるようになったわけだ。

そのうちに自分の意識が変わり、家族を恨むということがなくなれば、仕事もうまくいきだし、自分の暮らしも徐々にステップアップしていく。すると何故か入ってくる情報も変わってくることに気づきだす。
そこで改めて、最近になって「宇宙銀行」「引き寄せの法則」というワードを、再び聞く機会が増えてきた。

そこで初めて気が付いた。
母の口癖は、もはやこれと同等であったのかもしれないと。
彼女自身にとっては、実際に宇宙銀行から流れるように、お金が回っていたのだ。
それが我々家族からであったにしろだ。
そこに今ようやく気付いてしまった気がして、ハッとなった。
彼女の引き寄せの法則の流れを止めたのは、怒り狂った私ではなかったのだろうかと。

「宇宙銀行」なんて、バカげた話しがあるか!と思っていた私だが、
実はこの世界は想念のエネルギー、思考のエネルギーであることに気づく。
行動と衝動が起きれば、物事が変わることを実体験すると、出会い・仕事・情報のレベルが変わりだした。
昔全く理解できなかったモノゴトが、頭にすっと入ってくる。
深く理解する。なぜあの時こんな簡単なことが、理解できなかったのだろうと、逆に不思議にすら思う。
そう、「宇宙銀行はあるのだ」と、気づいてしまった。
スピ系の話に聞こえるかもしれないが、これは宇宙の一部である私たちすべての人間が持っているエネルギーの話しなのだ。
量子力学的にみても正しいという話しであることに、気づいてしまった。

今となっては、彼女が父の事業の失敗で苦労しながらも、普通の生活を続けられた理由は、心の底から「金は天下のまわりもの」だと信じていたからだ。そのお金がどこから流れていたかはまたべつの問題であって。
そのことにようやく気付く、今のわたし。
彼女の逃げ道を塞いでしまい、病気のフリから本当の病気になってしまう前に、今は母にできる親孝行を考えている。


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