夜明けのあと
去年の春、渋谷のスクランブル交差点にいた。
イヤホンからdipの13階段が流れてる。
雑踏はスローモーションに見えた。
人混みの中であの時のオレがこっちを見て立ってる。
自分の未来がどうなったのか知りたがってる。
まだ何も答えられないでいた。
自主企画"BLADE"が終了してもうすぐ二週間になる。
その間に色々とあって長く感じた。
今多分人生でいちばん元気だ。
以前と比べて自分がこんなにポジティブな人間になっているのが不思議で、それを更に上に押し上げるような最高のライブができた。
当日別に上手くいってないことも沢山あったけど、見た光がまだ幽霊のように水槽で泳いでいて、それをぼんやりと眺めてる。
そんな感じ。
ぶっちゃけあの日の記憶がかなりおぼろげである。
企画名の由来は映画「凶気の桜」サウンドトラックの「和魂」のリリック「全ての日本人ぶった斬る天命」より。
ROCKとHIPHOPを出会わせるってことだったけど、ある要素が重なっている偶然が奇妙だった。
自分の中でROCKは黒なのだ、真っ黒。
はじめにAKUTAGAWA FANCLUBを誘ったのもあってそのイメージに映画「青い春」も加わった。
そして対称的なHIPHOPには「青い春」と同時期に公開された「凶気の桜」という映画がある。
こちらは白を基調とした3人の主人公が渋谷を暴れ回るものだ。
たまたまだが
オープンワールドのような渋谷、閉鎖的な校内。
大人のイザコザと生徒同士の喧嘩。
白と黒。
ミッシェルガンエレファントとキングギドラ。
ROCKとHIPHOP。
このように2つの映画は同じ時代に奇妙な対極をしていて、それらが全て春と桜で繋がる。
凶春に咲く青桜と言ったところか。
イベントの日にちも青木の放った"13"日だし、、。
こりゃなんかあるなと自分の中で勝手に納得していたイベント内容だった。
フライヤーに小さく書いてるがこれはアルバムリリースパーティーでもあった。
正直そのほとんどが既に過去のアーカイブになっていて、あれは人生プチドロップアウトしていた自分の底辺からの這い上がりをイメージした第0話のような作品になってる。
"DAWN OF THE LOSE"
"敗北の夜明け"と名付けた。
怒りしか知らない、当時のわたしがいる。
怒りしか知らなかったから負けたんだ。
今はどうだ?
怒りは変わらずあるが、それを利用して、ちゃんと武器に変えて笑えてる気がする。
夜明けだ。
やっとバンドをはじめられた感がある。
今は自分の曲に自信があるんだ。
5年前"GAZE"という曲を作り「暴挙 black hole」とわけも分からず形の無い怒りを叫んできた。
最近じゃそれすらダンスミュージックだ。
今は「そろそろメロディーをやるぞ」って気持ちだ。
相変わらずある怒りを連れて、ぶっ飛ばして、笑い飛ばして、走馬灯のように歌う。
メロディーが身体中を流れてるんだ。
それは蒼白に発光する龍のように、限りなく透明に近く、オレの血管の中を泳いでいる。
もうすぐ企画当日のライブ映像を出す。
余ったTシャツはまたどこかで販売する。
夏に向けて色々計画も考えてる。
もっと言うと来月あたりにシングルもまた出せると思う。
もう一度出会えたらその時に笑い合おう。
"TRANSPARENT"
近頃調子に乗って「令和のブルーハーツになる」とかよく言ってるんだけど、そうだ、あのスクランブル交差点にいた過去のオレに言えることがある。
「未来のお前」は決して「過去のお前」を失望させることはない。
やっぱりお前はヒーローになれ。