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そんなに簡単には癒されないぞ

だいたい、「癒し」って言葉が出たのは、いつぐらいだったかなぁ……。
私が覚えてるくらいの、ある時、「癒し」って言葉で、そこからものすごい勢いで広まった。

それから、何でもかんでも「癒し」でなぁ。

私は猫を飼っている。
世界で一番可愛いと言ってもいい。
でもそれは、他人にはわかってもらえないだろうというのも、わかっている。

たまに他人に聞かれる。
「猫を飼ってると癒されるでしょう」
場つなぎかもしれない言葉にムキになるのも大人気ないかもしれないが
「うちの猫はものすごく甘えん坊で手がかかるので、癒されません」
と、私は言う。

うちの猫は、とても甘えん坊……というよりも、分離不安じゃないか?って思うことがある。
私の姿を求めて泣く。
風呂から出たら、風呂の前にいる。
私がトイレにいたら、トイレの外でにゃんにゃん泣かれたら、出るものも出ない。出すけど。
朝は5時半に眼球の上でパーをして、爪を出す。おはようからお休みまで猫に見守られている。
猫が子猫の頃、猫の愛が重過ぎて、私が近くのドトールに家出してたことがある。

そんな猫も年を取るにつれて、寝てることが多くて、愛の表現ゆえのつきまといは少なくなったが、今も私の膝の上にいて、私は腰が痛い。

人は何か、心の救いを求めているものだろう。
それがたまたま、「癒し」という言葉に全てが集約して、吸われていってるのかもしれない。

でも私は猫には癒されないから。
膝の上にいる、暖かい愛しい生き物、それを「癒し」と言ってしまうのは、もったいない。

この猫のことを世界一好きで可愛いが、私はその感情を表現する言葉を、まだ知らない。