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【あの場所へ】レインボーブリッジの見えるレストランで


 

 小説を書くうえで大事なのは、やはり現地取材。ここでは、作品作りのために訪れた「あの場所」を紹介していきます。※サムネを含め、撮影はすべて柚木怜です。


 第一回目は『姉枕』(匠芸社・シトラス文庫)より。
 第一章「東京」で、弟のぼくが東京に住む姉さんとデートをするシーンです。




 体はくっつけあっているけど、姉さんはやっぱり姉さんで、ふたたび僕を連れ回すように、東京案内をしてくれた。
 まずは「浜松町」駅で降りて、近くのイタリアンレストランで夕食を食べた。恥ずかしながら、僕はレストランで食事をした経験もなくて、ピザやパスタを食べたのもこれが初めてだった。スプーンやフォークの使い方もよくわかっていなかったけど、姉さんが丁寧に教えてくれた。しかも姉さんは、ワインを注文して、僕にも飲んでみて、と自分のグラスを差し出してきた。一口飲んでみたら、ちょっと苦いけどジュースみたいだったので、「うまいわ」と言ったら、姉さんは生意気だと笑った。
 店を出たときには日もすっかり暮れていて、東京タワーもライトアップされていた。東京タワーを目指して歩くこと、二十分ぐらいだった。
 展望台に上って、レインボーブリッジのライトアップを見ることもできた。確かに綺麗であったが、正直、僕は夜景にうっとりするほどロマンチックな男でもなかった。
 それでも地上に夜空が落ちてきたような東京の夜景を、姉さんと並んで眺めていることが夢のようだった。


モデル ちづ姉さん


「姉さんの家は、どのへん?」
「ええ~。どっちやろ。ここからだと、新宿のもっと奥のほうやから……」  
 三百六十度パノラマの展望台の中で、姉さんは真剣に探し回ろうとした。「まあ、ええわ。これから行くんやし」
「……そうやね」 
 姉さんは少しはにかみ、上目遣いでちらりと僕を見上げてきた。


生まれた時から父はおらず、飲んだくれのふしだらな母は、愛人の家に入り浸りで子どもの待つ家にはたまにしか帰ってこない。そんな家庭環境で育った春吉は幼少期に、五歳年上の姉・夏子が「してくれたこと」をずっと忘れられないでいた。

『明君のお母さんと僕』『お向かいさんは僕の先生』などノスタルジー溢れるポルノ小説でおなじみの、郷愁の官能作家・柚木怜が綴る──貧しい生活の中でも逞しく生きようとする、姉弟の禁断性愛ストーリー。

『姉枕』作品紹介より

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プロモーションビデオはこちらから。YouTubeチャンネル「ちづ姉さんのアトリエ」より

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