零(れい)

「言葉を伝える」ということは難しく、ときに虚しい。それでも、私は詩を綴る。

零(れい)

「言葉を伝える」ということは難しく、ときに虚しい。それでも、私は詩を綴る。

最近の記事

ゆく年くる年

大きな影が見据えてる 私はあわてて足跡隠し お多福様にしがみつく 小さな影が見据えてる 子どもの手 握る私 もう隠れやしないのさ 小さな影 赤い目細めて ぴょんぴょこ踊る つづけて子ども ぴょんぴょこぴょ お多福様 私の手とってぴょんぴょこぴょ さあ あなたも一緒にぴょんぴょこぴょ

    • 寅様のお通り

      丑三つ時に 我も彼も忘れてすたこらさっさ 今日はいよいよ年越しだ サンタの靴下かくしとけ ああ、サンタの靴に菓子いっぱい 鳥の骨も残ってるじゃない 赤白紅白並べてさ 蕎麦切りずずっとすってると 丑様こたつにもぐくって 寅様のお通りだ 尻尾に年玉握って サンタに負けじとやってきた トナカイソリもないけれど 幸福握ってやってきた さあさ あけましておめでとう

      • ふわっと

        少しだけ つまらない話 銀河鉄道に ゆるく腰掛け 君はふわっと笑う 君はふわっと泣く ここはさ 無重力だから 涙もお空に 帰されて キラッとひかる 星になる 愛された分だけ 辛くなるのは まだ愛を受け止めきれてないから ティッシュがしゅるしゅる鳴いている ここはね 無重力だから 願いも空に 届くのさ あーした天気になあーれ!

        • キコキコ

          てくてくと 進んでゆくと わらわらと こち見て笑う どうしてどして 笑うのか 水の絵の具が ぽたぽたと 水面上に 落ちてゆく どうしてどして 沈むのか 誰も教えちゃくれないが きょうもきょうとて 木を削る  きこきこきこきこ 木を削る だあれも教えちゃくれないが 吾と我を守るため キコキコきこきこ 削るのさ

        ゆく年くる年

          色と色

          青に白  青にしろ? 赤に白 赤にしろ? ・・・ だあれの言葉 だあれの文句? 私はこの色がいいの 緑に白 緑にしろ? 黒に白 黒にしろ? いえいえ 私はこの色選んだの ああ恐ろしや 恐ろしや どっちか出ないとダメなのかしら?

          切手と私

          切手を貼ろうと思った 舌先でぺろっと舐めて ぺたっと貼った わたしの一部も ぺたっとくっついた 指先でちょんちょん かくにん かくにん ここまで想像できたら 切手を貼ろう 白い部分に 私を乗せて

          ぎらぎら

          黒い鍵盤は 白い鍵盤にはなれないのです でもそれと同じように 白い鍵盤は 黒い鍵盤にはなれないのです 理由は特にないけれど 別なものになるということは 時には残酷なことなのです 紛れることも同じこと ジリジリ心を痛めてしまうのです それでもいいのなら それでもいいけれど 逃げることだって 大切なことなのよ

          窓枠

          頭の数センチ先 静かな色のカーテンから 青空が絵画のように 燦然と輝いている たなびく雲は 私の思考を掠め取り 全てを一に戻してしまう 空っぽの頭で 数センチ先を眺める 昨日の残響が聞こえなくなる 正午のこと 今日という日が 静かに動き出した

          地下の秘密

          地下の土を掘る 日の当たらない 偽物の太陽が光る 不気味な大地を せっせ せっせ 土のような土を ぱっぱ ぱっぱ 汗水垂らして掘ってゆく 突如として 薄汚い牢屋に 女が一人現れた 本物の太陽 我らの処女 パッと花を散らし 消えていく 小さな世界の 我らの神よ

          地下の秘密

          わ た し 、 、 、 ?

          詩を綴る 「わたしは」と書いて 思い悩む 私の詩に 「私」は存在していいのだろうか 口にしてみると なんだか「私」が 瞼の下にくっついて 離れてくれない 考えあぐねる 瞼ではなく 隣に寄り添うような 言葉は 「わたし」はいないのだろうか それともやはり ひつようではない?

          わ た し 、 、 、 ?

          悩み痛

          納屋の中で 悩みあぐねて ぐるぐるまわる 透明で すてきに輝く 大事な尻尾を あれこれ悩んで 追いかけ回した それを見た まんまるおめめの 鈍感わんこ わうっ 一声 かけて飛び去った わたしもこんなふうになりたいわ

          息吹く

          庭先に蕗の薹 こんにちわ こんにちわ あれ おはよう なのかな まあ なんでもいいけど ただいま ただいま あれ おかえり なのかな どっちでもいいよ ありがとう

          ルール

          自分だけのルールを作ることが好きだった 4の数字は不吉だからシャンプーのプッシュは3回まで 寝る前にぬいぐるみに感謝しないと呪われてしまうから 必ず一通り頭を撫でてありがとうと伝える 団地の階段は息を止めて登らないと不幸なことが起こる ちっぽけな『私』という世界を守るための 私だけのルール   もう忘れかけてしまった 私の世界 限定の法律

          鈴の三月の独り言

          田んぼの真ん中 真ん中  まんなか ま ん な か ぽっつり ぽつりと深呼吸 はじめは目を開いて 啄む鳥たち見て じっくりと。 肺の空気が入れ替わってきたら つぎは目を閉じて 鳥の声 風の声 笑い声 じっと我慢して 耳を澄ませる。 なんだか 目の前に どーんと聳える山々から 「おはよう」 と囁かれてるみたいなので 答える代わりに じっと耳を澄ませた。 朝 8時過ぎ 田んぼの真ん中 まーんなかで。

          鈴の三月の独り言

          溢れんばかりの誘惑

          お砂糖頂戴よ うんと頂戴 ありの行列が途絶えないように うんとね お塩頂戴よ うんと頂戴 漬けたものが腐らないように ちゃんと水があがるように うんとね あれれ あれれ じゅうぶんあげたはず まだ足りないのかしら・・・ お砂糖頂戴よ お塩頂戴よ うんとね

          溢れんばかりの誘惑

          In a mirror

          鏡に話しかけるなんて どこかの御伽噺みたい でも話しかけずにはいられない 「昨日の私 ありがとう」 おばあちゃんの思い出 ぎっしり詰まって 心地の良い日差しを 鈍く反射する おばあちゃんは どんな言葉をかけたのかな きっと魔法の言葉をかけたのだろう だってこの姿見は 私のこと みちゃあくれない そっぽ向いて 私の形を鈍く映し出す おばあちゃん どんな言葉をかけたの 鏡を虜にする魔法のことば 私に教えてくださいな