これからのエンタメは「体験」がキーワード。
ーー「アーティストのコンサートで最高のパフォーマンスを見る」はもちろんひとつの楽しみ方ではあるけれども、「イベントでみんなで歌を歌う」という内容のエンタメの価値が高まってきたというわけです。
人生は物語。
どうも横山黎です。
大学生作家として本を書いたり、本を届けたり、本を届けるためにイベントを開催したりしています。
今回は「これからのエンタメは『体験』がキーワード」というテーマで話していこうと思います。
📚耳で楽しむミステリー小説⁉︎
一昨日、お気に入りの本を紹介するイベント「FAVORITE‼︎ -お気に入りの本を紹介する会-」を開催しました。この前で5回目となる本のイベントで、僕を含めて7人の参加者がいました。だいたい5分間で本を紹介して、その後、紹介された本をきっかけに交流をする流れです。
僕が挑戦しているビブリオバトルに似たものですが、それよりもカジュアルだし、交流に重きを置いている点が相違点です。
個人的にはそのこだわりが上手く効果を発揮していて、参加者が前のめりになって参加する姿を見ることができています。これからはもっと「参加者が主役になれる」イベント設計をしていこうと思います。
さて、今回僕が紹介したのは道尾秀介さんの『きこえる』。先日発売したばかりの本なんですが、ビブリオバトル向きの実験的なミステリー短編集だったので選書しました。
というのも、この本に収録されているミステリー小説全部、音声で謎が解かれるんです。
作品のいたるところにQRコードが挿し込まれていて、それを読み取って、その先にある音声データを聴いて読み進めていくんです。音声データは短いものなんですが、それを聴くと「あっ!そういうことか!」と謎が解かれるんです。逆にいうと、文書を読むだけでは謎は解かれないんです。
そんな体験型のミステリー小説を紹介していきました。手応えは感じることができて、やっぱり本を紹介するときは、本自体に魅力のある本を選んだ方が有利だよねと再認識できました。
さらに、重ねて思ったことは、「これからのエンタメは『体験』がキーワードになってくるんだなぁ」ってことです。
📚参加者が主役になれるか?
SNSの台頭で誰もが簡単に発信できる時代、求められているエンタメは単なるお客さんとして参加できるものではなく、お客さんが主役になれるものです。「アーティストのコンサートで最高のパフォーマンスを見る」はもちろんひとつの楽しみ方ではあるけれども、「イベントでみんなで歌を歌う」という内容のエンタメの価値が高まってきたというわけです。
音楽でいえば、「鑑賞」から「合唱」へと内容の変化が起きているわけです。
この変化によってどんな違いが生まれるかっていうと、クオリティが高いことが正解とは限らないということ。参加者が参加できる余白がないといけないんですよね。クオリティが高くて参加者が参加できないなら、クオリティが高いのは間違いになってしまうんですよね。
合唱を例に挙げるとすれば、プロのミュージシャンと一緒に合唱するのは少し躊躇いが生じてしまうじゃないですか。なかなかない特別な機会だけれども、畏れ多いし、なんなら「歌ってるのを聴いていたいです」ってなるじゃないですか。
また、やたら難しくて歌いにくい曲は合唱に不向きじゃないですか。それを歌いこなすのはプロのミュージシャンだし、そのいちばんの楽しみ方は「プロが歌っているのを聴く」です。だから、合唱に向いているのは、誰もが知っているような曲、コード進行もリズムも簡単な曲なんですよね。
以前僕が「いいエンタメ」をつくれたなと思ったのは、「The FAVORITE」で「にんげんっていいな」を弾き語ったときのこと。みんな知ってるし、歌いやすいから、最終的にはみんなで合唱できたんですよね。
📚これからのエンタメは体験
さっき紹介した道尾秀介さんの『きこえる』はまさに「体験」に重きを置いたミステリー小説。従来の「読む」という体験に加え、「聴く」(場合によっては「解く」)という体験も楽しめる。読書が謎解きをする感覚の体験ができるので、他の本にはない楽しみ方ができるわけです。
そんな本をつくった作者の道尾さんは脱出ゲームキットの監修を行ったこともある人です。脱出ゲームとは、密室に閉じ込められた参加者が室内の謎を解き、部屋から脱出することを試みる体験型エンタメ。僕が中学生の頃(つまり10年くらい前)に隆盛したゲームで、僕もこれまでに何度か参加してきました。
それこそ、今日、「The FAVORITE」では別のイベントが開催されました。「あるFAVORITEからの脱出」という謎解きイベント。脱出ゲーム好きの友達しゅんちゃんが主催です。僕は用事があって参加できなかったんですが、一昨日、しゅんちゃんに誘われてテストプレイしてきました。なかなかの仕上がりだったし、伸び代はまだまだあったので、今日のイベントはよりいいものになったんじゃないかな。
道尾秀介の『きこえる』も、僕の弾き語った「にんげんっていいな」の合唱も、「あるFAVORITEからの脱出」も、参加者が主役になる「体験」を重視したコンテンツ。これからのエンタメの主流になっていくんじゃないのかな。
それを証明するように、来年4月には東京お台場に「イマーシブ・フォート東京」というテーマパークが開園します。「完全没入体験」を売りにしていて、お客さんの数だけ物語が生まれ、お客さんの数だけ楽しみ方が存在する場所です。
僕は芸人でもなんでもないけれど、面白いことは好きだし、楽しいことはしていきたいし、心が動く瞬間を追求していきたい。そういう意味で、僕は「エンタメ」を大切にしていきたいんですよね。
ちょうど来週の日曜日、本のエンタメイベントがあります。冒頭でも触れたビブリオバトルの全国大会があるのです。お客さんの「読みたい!」という感情をつくりにいく勝負の場所。心を動かさないといけない、エンタメを追求しないといけないんですよね。
当日まで粘ります。たくさんの人に聴いてもらって、フィードバックをもらって、磨いていきます。最後まで読んでくださりありがとうございました。
20231210 横山黎