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物語は「マスク美人」でいい


【#76】20210914

人生は物語。
どうも横山黎です。


作家を目指す大学生が思ったこと、考えたことを物語っていきます。
是非、最後まで読んでいってください。

今回は、
「物語は『マスク美人』でいい」というテーマで
話していこうと思います。


☆マスク美人


コロナのせいで、
外出するときや人と会うときは必ずマスクをつける文化が成熟しました。

いつか感染が収束して、
ワクチンの接種状況も良好で、
マスクを外して生活できる日が来たとしても、
もはやその未来に違和感を覚えてしまうほど、
マスク文化は定着しています。

そりゃあもう一年半もマスク生活を続けているわけですから、
仕方ないのかもしれませんね。


そんななか、マスクに関するワードが誕生しました。


その一つに、「マスク美人」があります。

つまり、マスク姿が美しい人のことですね。


理由としましてはいくつかあると思います。

「目元以外のパーツが隠れるから」とか、
「小顔に見えるから」とか。


僕が考えるに、
一番大きい理由は、
「隠れている部分を想像できるから」です。


つまり、
マスクで隠れている顔下半分を
自分の都合の良いようにイメージすることができるので、
マスク姿が美しいと思い込むというわけです。


人間は欲の多い生き物ですから、
隠れている部分を良いように想像するので、
こういう現象が起きるのです。


☆dele第三話の魅力は「語らないこと」


前置きはこのくらいにして、
僕が今回言いたいことは何なのかというと、
「あえて『描写しない』ことが魅力になる」ということです。


マスク美人のように、
全てをさらけ出さず、隠れている部分があると、
読者はそこを都合のいい解釈で補填するので、
作品に奥深さを感じたり、読後の余韻に浸れたりするわけです。

昨日『dele』というドラマの第三話を観たんですが、
多くを語らないからこそ魅力的な作品だと思いました。

このドラマ全体的に台詞数は少なくて、
情景描写が中心的な印象を持っているんですが、
わざわざ言葉にせずに、
あるアイテムを見せたり、
表情を見せたり、
スローモーションにしたり、
そういった演出が言葉よりも多くのことを語っている、
描いているんです。

この話では、
ある高齢の男性が
海に飛び込んで自殺をしてしまうんですが、
飛び降りるシーンはなくて、
港の埠頭に立って、
朗らかに微笑んでいるシーンが描かれるだけなんです。



他にも、
その恒例の男性は近くで理髪店を営む女性の監視、盗聴をしていたんです。
山田孝之さん演じる主人公の坂上圭が、
自殺した男性の部屋で
盗聴が記録された音声データを聴くというシーンがあります。


ここもね、
いろんなことを物語っているんですよ。


時間の流れ、季節の流れも然ることながら、

自殺した男性が監視対象の女性に好意を抱き始めることを
さりげなく描いていたり、


音声データを聴く坂上が、
男性の孤独を理解したような切ない表情を描いていたんです。

ここには、
説明するための言葉はいらなくて、
たんたんと音声データが流れているだけだから、
魅力的なシーンだと思うんですね。

愛の告白の言葉なくていいんですよ。
言葉にしたら、突然味気ないものになってしまうんです。
それをほのめかすだけでいい。
相手に伝えるのも、言葉じゃなくていい。



実は、男性は自殺をする前に
菅田将暉さん演じる真柴(坂上の相棒)と出逢い、
あることをお願いしていたんです。

それは、
「理髪店の女性に音声データのコピーとバラを渡してほしい」
というもの。


自分が盗聴した記録とバラを渡すことで、
相手への想いを伝えようとしたわけです。


言葉じゃないんですよ。
音声データとバラだからこそ、
この男性の心理がなんとなく理解できるし、
そこに込められたメッセージや想いに、
いろいろと想像が働きますよね。


最終的には、
真柴が理髪店の女性に
音声データとバラを渡すことが叶うわけですが、
そのバラを用意したのは坂上で、
選んだ本数は五本。

真柴は「貧相じゃない?」と口にするんですが、
後になって、調べてみて、
五本という本数に込められた意味を知るわけです。


でも!
それがどんな意味であるのかを、ドラマでは描かないんです。
だから、視聴者には分からない終わり方をするんです。

ここもね、語らないことで
鑑賞者の好奇心をくすぐっているわけですし、
ドラマが終わった後で、
自分で調べてみて、
五本のバラの意味を知った瞬間に、
本当の意味でこの話が完結するというメッセージでもあると思うんですよね。



☆「描写しない」ことが魅力を描写する


『dele』の話で盛り上がっちゃいましたが、
今回言いたいことは、

「描写しない」ことが魅力を描写するってこと。


受け手の想像力に頼ることで、
作品の世界観が膨らむし、
ぐっと奥深くなる。


言葉は有限だから、
この世の全ての現象や人の感情を表現することはできません。

だからこそ、
言葉で無理やり表現して、正解を決めるよりは、
あえて語らないで、読者一人一人の答えを正解にする方が、
魅力的な物語になるのかなあと考えました。


正解は隠していい!
隠すから美しくなれる!


したがって、物語は「マスク美人」でいいという結論に至りました(笑)



☆お知らせ


今回、
「マスクの話」と、
「あえて描写しない」ことを軸に語っていきましたが、
それに通じる僕の作品があります。

『君はマスクを取らない』という作品です。


いつもマスクをつけている寡黙な女子高生と、
考えることしかできない内気な男子高生の物語です。

彼女がマスクを外すとき、
二人だけの青春が始まります。


興味を持たれた方は是非、下の記事をご覧ください。


ということで最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
横山黎でした。


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