試験日を間違えた大学受験
ーー試験日を翌日に控えた日、僕は朝から張り切っていました。朝食後、僕は学芸大学のホームページを覗きにいきました。モチベーションをつくるために大学のことを改めて知ろうとしたんです。そこで僕は気付きました。試験日がその日であることに。
人生は物語。
どうも横山黎です。
毎月最終日には誰の目も気にせずに、僕の過去のことについてつらつらと綴っています。今月もその日が来たんで、語っていきますね、お時間ある方だけお付き合いください。
今回は「試験日を間違えた大学受験」というテーマで話していこうと思います。
📚心を動かす物語
今月の頭、5月2日に「BOOK TALK LIVE “Message”」を開催しました。去年出版した僕の初書籍『Message』にまつわるエピソードを物語るライブイベントです。大学図書館の中にあるライブラリーホールという場所をお借りして、30人のお客さんを呼び込みました。
まだ何者でもない大学生が頑張ったところで、集客できるのはそんなもんですが、僕は多くの人に聴いてもらいたいというよりも、ひとりひとりに伝えたいという思いが強かったので、ちょうどいい規模だったと思いました。
このイベントの目標は誰かを感動させること。涙が出るかどうかが分かりやすいので、お客さんの心を動かして涙を流させることを狙いました。音響や照明など、演出にもこだわったことが奏功したんでしょう。イベント自体は大成功、中には涙する人もいました。
イベント後のアンケートではステキな言葉をいただきました。こんな感じ↓↓↓
嬉しい言葉の数々をもらって本当に光栄です。
さて、僕のイベントにおいて、何がそんなに観客の心を動かしたのでしょうか。それはやっぱり「物語」。なかでも、僕の大学受験を巡るエピソードが要因でしょう。
第一志望校の試験日を間違えた、大学受験のときの話です。
📚試験日を間違えた大学受験
僕は創作とは別に、教育にも興味がありました。一番身近な職業が教師だったし、人に教えることは好きだったし、いい先生に巡り会ってきたので、興味を持つことは自然でした。
そんな僕でしたから、中学2年生の頃から学芸大学を目指そうと決めていました。東京の武蔵小金井にある教育に強い大学です。
もちろんちょっとやそっとの努力でいけるようなところではなかったけれど、手を伸ばせば届きそうと思い、第一志望校にするにはふさわしいと思いました。
高校3年生になって受験生となった僕は、塾にも予備校にも通わずに、自力で勉強を始めました。学校の教室や地元の図書館で勉強に励んでいたんです。
4月の模試でこそE判定だった模試の結果でしたが、徐々に成績が上がってきました。E,D,C,B……秋の模試では、A判定を獲ることができたんです。
よし、いける。
……と思ってしまったから駄目だったんですよね。勉強をしなくなったわけじゃないけれど、悪い意味で安心してしまったんですよね。秋をピークに成績は右肩下がり、結局センター試験では想定の1割も低い点数を取ってしまいました。
しかし、くよくよしていては仕方ありません。二次試験までのあと1カ月、ちゃんと頑張ろうと意識を高めました。
1カ月経って、試験日を翌日に控えた日、僕は朝から張り切っていました。過去問をやって、最後の確認をして……と朝ごはんを食べながら計画していたものです。朝食後、僕は学芸大学のホームページを覗きにいきました。モチベーションをつくるために大学のことを改めて知ろうとしたんです。
そこで僕は気付きました。
試験日がその日であることに。
ぞっとしました。体温が消えました。
僕は咄嗟に時計を見ました。針が示していたのは、8時15分。試験開始時刻は9時。実家から大学まで1時間以上かかります。間に合いません。
もう一度ホームページを見てみると、教室入室可能時刻が9時30分となっていました。つまり、この時刻まで遅刻が認められるということです。僕は家を飛び出しました。
最寄りの駒込駅まで駆けていって、山手線で新宿駅まで向かいます。新宿駅から総武線に乗り換えるんです。しかし、電車に乗ってから鞄の中を見ると、受験票が入っていないことに気付きました。
反対電車に飛び乗って、もう一度駒込駅へ戻ります。母親に連絡して、受験票を持ってきてもらいました。改札越しに受験票を渡されて、僕はまた新宿駅へ向かいました。そのときにはもう心も体も調子が悪く、パニック状態。吐きそうでした。
そんなコンディションの僕は、新宿駅でどの電車に乗り換えればいいのか分からなくなって、10分くらい彷徨っていました。
どうにか乗るべき電車を見つけ、乗車し、大学の最寄り駅、武蔵小金井駅まで向かったんです。しかし、電車が到着したのは9時50分。間に合いませんでした。
僕の第一志望校への大学受験は試験を受けることすらできず、終わりました。何という失敗をしてしまったんだろう、どんな顔をして帰ればいいんだろう。悩みながら、嘆きながら実家に帰りました。
悩みながら帰っていたので、実家に帰る頃には夕方になっていました。4時間くらい彷徨っていたんです。
実家の扉を開ける前、僕はあることを決めました。寝て忘れることはできないけれど、とにかく現実から逃げたいから寝室に駆けこもう。
ただいまも言わずに帰宅して、上着を脱いで、鞄を置いて、2階にある寝室に向かい出したとき、行く手に母親がいました。何を言われるんだろう、どんな言葉で責められるんだろう、目を見ることすらできず、俯いていました。
しかし、予想に反して、僕にこんな言葉をかけてくれたんです。
「ごはん、どうする?」
📚間違えたけど良かった
ご飯も食べずにさまよっていたことを心配して、そんなことを口にしたんです。母親の優しさを耳にした瞬間、僕の感情を堰き止めていたダムが崩壊しました。込み上げるものを抑えきれません。
僕は慌てて、寝室に駆け上がりました。
そして、泣きました。
やがて階段の音がしました。寝室に母親が入ってきました。震える僕の肩に、毛布のような言葉をかけてくれたんです。
それだけを言い残して、母親は部屋を出ていきました。
僕はさらに泣きました。
泣き疲れて眠るまで、泣きました。
今でもあのときのことは鮮明に覚えています。あのときの感情もこの心臓が記憶しています。きっとあの瞬間、僕の人生において何かが終わり、また何かが始まったんだと思います。新しい未来が生まれたんです。
こんなにも希望的に捉えているのは、今があるから。高校3年生の僕が想像もしなかった未来に、今、辿り着いているからです。
試験日を間違えたけれど、この人生で正解だった。
そんな風に思えるからです。
この出来事を語るとどうしても熱くなっちゃうからもう3000字を間近に控えています。もう少し語りたいことがあるんですが、続きは以下の動画をご覧ください。
「BOOK TALK LIVE “Message”」の最後の13分を公開ました。観客の心を震わせたライブの様子を、是非ご視聴ください。伝えたいことは、全部この13分に詰め込みました。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
20230531 横山黎
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