見出し画像

「体験シロ」のあるイベントの意義。

――エンタメを鑑賞したり、イベントに参加したりするだけで、ある程度「特別」や「非日常」を感じられるのだけれど、それだけでは表現欲を満たすことはできないので、お客さんからしたら自分が体験する(主人公になる)瞬間が用意されてほしいんですよね。


人生は物語。
どうも横山黎です。

作家として本を書いたり、木の家ゲストハウスのマネージャーをしたり、「Dream Dream Dream」という番組でラジオパーソナリティーとして活動したりしています。

今回は「『体験シロ』のあるイベントの意義」というテーマで話していこうと思います。



🏨「いい人すぎるよ展」が面白かった。

先日、渋谷の西武のなかで開催されていた企画展「新!いい人すぎるよ展&すぎるよすぎるよ展」に行ってきました。日常のあるあるワンシーンを切り取ってパネルにした展示がたくさん並んでいました。

いい人すぎる人ってこんな人だよね、切なすぎる瞬間ってこういうときだよね、にたくさん答えを出しているんです。「元恋人の幸せを心から願える人」っていい人すぎるし、「買ったばかりのソフトクリームを落としてしまったとき」は切なすぎるじゃないですか。そんなあるあるネタがたっくさんある展示イベントなのです。

僕は友達と一緒に行ったんですが、「これめっちゃ共感するよね」とか「そういえば実はこんなことがあってさ……」とか「俺にはわからんわ」とか、とにかく会話の種が次々と芽吹いていったんです。

「気まずいすぎるよ展」のなかには、「扉を開けたらスタッフが休憩中だったとき」というパネルの貼られた扉があり、それを開けると、本当にスタッフが休憩していて、ちゃんと気まずくなるんです(笑)

普段似たような光景に立ち合ったことは何度かあると思いますが、こうしてイベントとして取り入れて、ちゃんとストーリーをつくっていくと、あの気まずい瞬間すら「体験」になり、面白さを生んでいるんです。

展示には短いフレーズが書かれているだけ。それなのに、それをきっかけにたくさんの会話が生まれ、体験価値が高まり、お客さんの満足度の向上に一役買っているんですよね。


🏨「体験」と「主人公」

今回紹介した「いい人すぎるよ展」もそうですが、最近のイベントとかコンテンツって、どこかひとつのテーマに通じている気がしてなりません。「体験」「参加型」といった要素をはらんでいると思うのです。

イマーシブ・フォート東京」は没入体験型のテーマパーク。ランチしていたらそのレストランが襲撃されるし、街を歩いていたら事件に遭遇するし、ゾンビに襲われたりします。

仕立て屋のサーカス」はサーカスのような舞台芸術。音楽も詩もダンスも喜劇も社会運動も全部一緒くたになったような創作を表現してくれるエンタメです。どの席から見るのか、どこに注目しながら楽しむのか、お客さんによって受け取り方の違うショーが展開されるのです。

「いい人すぎるよ展」に一緒に行った友達は大学生でありながら、謎解きクリエイターとして活動していて、現時点でも企業や街と連携して街歩き謎のイベントに参加したり、主催したりしています。お客さんが街を歩きながら、自分の手で謎を解いていく内容のものです。

ざっと並べてみましたが、やっぱりここには「たったひとつの体験」や「お客さんが主人公になれる導線」が組み込まれているといえますよね。


🏨体験シロのあるイベントを。

家にいたって携帯さえあればゲームもできるし、音楽も聴けるし、映画も見られます。当たり前のように学校で勉強して、当たり前のように大学に行って、就活して、会社に就職して、仕事をしていって……というように、似たり寄ったりな日々を営むしかないのにも関わらず、SNSのせいであらゆる現代人が表現欲に飢えているので、「特別」や「非日常」に対する感度が高くなっているんですよね。

どうすれば普通ではなくなるのか、どうすれば日常から遠ざかれるのか、を考えたときに、答えにつながるキーワードが「体験」や「主人公」だと考えます。

エンタメを鑑賞したり、イベントに参加したりするだけで、ある程度「特別」や「非日常」を感じられるのだけれど、それだけでは表現欲を満たすことはできないので、お客さんからしたら自分が体験する(主人公になる)瞬間が用意されてほしいんですよね。

「いい人すぎるよ展」では徹底的に話題づくりをしているので、主人公になっているのはお客さんなんです。展示を見て、そこから友達と会話が始まって、その人だけのストーリーが生まれる。

そう、だから、僕が行ったときも、カップルがやたら多かったんです。展示って、それらを好きじゃないとデートに向かない美術館とか博物館とかに類するものだと思っているのだけれど、より日常的で体験シロがありお客さんが主人公に慣れる設計のされているイベントだから、足を運びやすくなるんですよね。

イマーシブ・フォート東京も、仕立て屋のサーカスも、街歩き謎も、みんなそう。お客さんが主人公になれる体験がそこに設計されているのが魅力的なんです。

僕はイベントをつくることにも関心がある人だから、今後自分が何かを企てるときも、体験シロをつくる意義、お客さんに主人公になってもらう導線づくりを心掛けようと思いました。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20241210 横山黎












いいなと思ったら応援しよう!