小学生の頃から「手紙」が好きだった。
――とりとめのない文章でもいい。書き損じがあってもいい。タイパが正義の時代に、時間をつかって、鉛筆をつかって、本当に伝えたいことを紙面に書き連ねる。何でもないことのように思えるけれど、手紙の持つ特性を整理すると、僕らが忘れてはいけないものがそこには詰まっているよなと感じるのです。
人生は物語。
どうも横山黎です。
作家として本を書いたり、木の家ゲストハウスのマネージャーをしたり、「Dream Dream Dream」という番組でラジオパーソナリティーとして活動したりしています。
今回は「小学生の頃から「手紙」が好きだった。」というテーマで話していこうと思います。
今日、手紙を書く機会があるんです。とある人に宛てた手紙を。それもあって、今日は手紙にまつわる話をしていきますね。
僕は本当に伝えたいことがあるとき、よく手紙を書くんです。つまり、今日、本当に伝えたいことがあるってことになるわけですが、今日はそれを横に置いて、手紙の持つ力についてつらつらと書いていこうと思います。
思えば、小学生の頃から日常的に手紙を書いていました。というのも、当時付き合っていた子とよく手紙でやりとりをしていたので。付き合っていたとはいえ、友達の延長線上のような関係性でした。今振り返れば「仲良い異性の友達」といった程度でした。
小5で付き合い始めて、小学校卒業を機に疎遠になって自然消滅してしまったんですが、小6の頃から手紙のやりとりを始めたんです。「これからはさ、付き合っていないふりをしようよ」という流れになって、秘かに手紙でやりとりをするようにしたんです。
毎日ではなかったけれど、朝教室に来ると、僕の机のなかに手紙が入っていて、僕はそれを手に取り、男子トイレに駆け込んで、個室のなかでそっと開く。その日のうちに返事を書いて、翌朝少し早く投稿して、彼女の机に手紙を置く。そんな日々を繰り返していたんです。
ずっと仲良しだったんですが、卒業という節目に僕らはその関係に読点を打つことになりました。打つ、といっても、僕らが意識的に確実に打ったわけではなくて、自然と生まれてしまったのです。
卒業を機に、彼女は他県へ転校してしまったんですが、彼女が旅立つ数日前に、彼女の家のポストに最後の手紙を送ったこともありました。そういえば、短い詩を同封したっけ。
ちなみに、その彼女とは、中学3年の同窓会で一度、大学生になってから一度再会を果たしました。いくら時が流れても手紙で結んだ絆が解けることはなくて、親しく語り合えることができました。
中学生のとき、親友と衝突したことがあったんですが、そのときも自分の本心を綴った手紙を書いて送りました。彼も彼で短い返事を書いた手紙を送ってくれました。
高校生のときに付き合っていた人とも、記念日や誕生日はもちろんのこと、何でもない日にも付箋やルーズリーフに思いを綴って贈り合っていました。今日は部活で遅れるので一緒に帰れません、なんてことが書かれた小さな置き手紙が僕の靴箱のなかに入っていたり。
大学生になってからも僕は事あるごとに手紙を書いていました。20歳の誕生日には家族全員に手紙を書きました。ちゃんと家族に宛てた手紙を書くことは初めてだったし、突然のことだったから、妹から「もうすぐ死ぬの?」なんてことを言われたっけ。
また、20歳最後の日に出版した僕の初書籍『Message』は成人の日を舞台にしたミステリー小説なのですが、手紙の物語でもあるんです。軽いネタバレをすると、物語の最後を締めるのは手紙です。その手紙のなかで、全ての真実が明らかになるのです。
とにもかくにも、手紙と縁のある人生を送ってきました。僕の人生を「手紙」という軸で振り返ったことはあんまりなかったんですが、こう並べていると、ターニングポイントにはいつも手紙を書いて送っていることが分かりますね。
そんな僕は今、まさに手紙を綴るように日々を共にしている大切な人がいます。今日、その人に宛てて、手紙を書くんです。
日本郵政は、「23」が「ふみ」と読めることから、毎月23日を「ふみの日」と定めているんです。
今日は10月23日。
ふたりの物語を始めてから、今日で15回目のふみの日です。
個人的に「15」という数字もきりがよくてアニバーサリー感があるので、これから書く手紙の内容は長くなってしまいそうです。ただ、だから手紙が好きなんですよね。
とりとめのない文章でもいい。書き損じがあってもいい。タイパが正義の時代に、時間をつかって、鉛筆をつかって、本当に伝えたいことを紙面に書き連ねる。何でもないことのように思えるけれど、手紙の持つ特性を整理すると、僕らが忘れてはいけないものがそこには詰まっているよなと感じるのです。
きっとこれからの人生においても、手紙はとっても大切な要素のひとつ。そんなことを噛み締める今日この頃でした。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
20241023 横山黎