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多視点で進む物語が好き。

――最近、恩田陸の『ドミノ』という本を読んだんですが、僕好みの物語だったし、声が出るくらいに笑っちゃったし、バリバリのエンタメ小説でした。この本を読んで思ったのは、僕はやっぱり多視点で進む物語が好きなんだなってことです。


人生は物語。
どうも横山黎です。

作家として本を書いたり、木の家ゲストハウスのマネージャーをしたり、「Dream Dream Dream」という番組でラジオパーソナリティーとして活動したりしています。

今回は「多視点で進む物語が好き。」というテーマで話していこうと思います。


🏨執筆と読書

僕は今、作家として次のステージに立つために、半年で10個の文学賞に応募するという挑戦をしています。

とにかく数打ちゃ当たる戦法を試してみたい思いと、書く習慣を身につけたい思いがここにはあり、この1カ月半は仕事の合間を縫って創作の日々。この前、仙台短編文学賞に応募したので、1カ月半で5つの作品を応募したことになります。

今までの人生のなかでいちばん忙しけれど、いちばん作品をつくっている時期を迎えていて、やれないこともないんだなと振り返っているわけですが、まだ何も結果を出していないし、引き続き執筆の日々を繰り返していこうと思います。

さて、アウトプットが多いなかで、インプットも適度にこなしていかないといけないと思い、隙間時間を見つけてはちゃんと小説に触れているんです。この前は近くのシャアハウスで開催された読書会に参加してきましたし、遠出するときの電車のなかではよく本を読んでいます。

最近、恩田陸の『ドミノ』という本を読んだんですが、僕好みの物語だったし、声が出るくらいに笑っちゃったし、バリバリのエンタメ小説でした。この本を読んで思ったのは、僕はやっぱり多視点で進む物語が好きなんだなってことです。


🏨登場人物が27人と1匹!?

『ドミノ』は、東京駅を舞台に展開されるパニックコメディなんですが、驚くべきはその登場人物の数です。

なんと、27人と1匹。

しかも、ひとつの主人公がいて、その人の視点で描かれる物語に27人と1匹が登場するわけではなく、27人と1匹の視点で物語が進んでいくんです。一人称視点ではなく三人称一元視点なので、カメラワークが次々と変わっていくイメージです。映画のように場面が移り続けます。

東京駅が舞台とはいえ範囲は広いわけで、様々な事情を抱えている人たちがたくさん登場するんです。

一億円の契約書が届くのを待ち侘びている保険会社の職員とか、東京駅で待ち合わせしているけれどその場所が分からなくて途方に暮れるおじいちゃんとか、大事な舞台のオーディションのさなか下剤を盛られた小学生とか……訳ありの登場人物たちが混じり合って、ひとつの物語が紡がれていくのです。

後半はまさに「ドミノ」倒し状態で、あまりの滑稽さに笑っちゃいました。本を読んで声出して笑うなんていつぶりだろう、初めてかもしれません。

そんな風に、内容として面白い読み物だったのですが、それよりも僕のなかで刺さったのは、『ドミノ』の物語が多視点で進んでいく点でした。27人と1匹の視点で、しかも東京駅というひとつの舞台で繰り広げられる物語が28のアングルで展開されるんです。その構成に、胸を打たれたんです。



🏨多視点で進む物語が好き

小説でいうと、米澤穂信の『クドリャフカの順番』とか、朝井リョウの『少女は卒業しない』とかが挙げられます。

前者は、高校の文化祭で起きた事件を解き明かしていく物語なのですが、4人の高校生の視点で展開されるんです。後者は、高校の卒業式の日を舞台に6人の女子高生の視点で紡がれる物語。どちらも視点が変わることによって謎が解かれる構成力が光る作品だし、青春ストーリーとしても味わい深い作品なので僕は繰り返し読んでいます。

僕は卒業研究が芥川龍之介の文学研究だったんですが、芥川の『藪の中』とか『桃太郎』とかも視点の転換によって物語に奥行きが生まれている作品です。

小説以外においても、僕は多視点で進む物語が好きなんですよね。

僕のバイブルの『名探偵コナン』や『進撃の巨人』はまさにそうだし、三谷幸喜の『有頂天ホテル』もまさにそれ。『ドミノ』を映像化したら『有頂天ホテル』に近いものになるかもしれないなと思ったり。

最近は体験コンテンツに目がないんですが、この前、没入型体験テーマパーク「イマーシブ・フォート東京」に行ってきたんですが、その中では常に視点の違いによる面白さがあります。たとえば、「シャーロック」というアトラクションに参加してきたんですが、これは参加者が街を歩いて、事件を目撃したり、推理するシーンに立ち合えたり、知らず知らずのうちに物語を構成する登場人物の一員になっていたりするんです。

ちょっとだけ話は逸れましたが、視点の違いが体験の価値を生んでいるのは間違いないし、多視点で展開されるからこそ、体験後に「どんな物語だった?」と語り合う時間が生まれたりするんですよね。

とにもかくにも、多くの視点で展開される物語にどうしても惹かれてしまうのが僕のようで、僕自身、自分の作品をつくるときは多視点で展開する物語を考えてしまうんですよね。

大学生のときに出版した初書籍『Message』も4人の視点で展開していくし、このnoteでも公開している『初めましての恋』は1万字程度の短編でありながら、2人の視点で展開していきます。そして、今つくっている作品も、やっぱり視点が複数なんですよね。

どうしてこんなにも多視点に惹かれるのか、一言で言語化することはまだできていないんだろうけれど、見たいのもつくりたいのもそれなので、そこに嘘をつくことはなくこれからも楽しんでいこうと思います。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20241118 横山黎







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