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言葉探しの旅

――たまには何気なく使っている言葉を見つめ直したり、言葉探しの旅に出かけるのもいいものです。


人生は物語。
どうも横山黎です。

作家として本を書いたり、木の家ゲストハウスのマネージャーをしたり、「Dream Dream Dream」という番組でラジオパーソナリティーとして活動したりしています。

今回は「たまには言葉探しの旅に出かけてみる」というテーマで話していこうと思います。


🏨歌詞「花火の幽霊」

昨日、久しぶりに歌詞の投稿をしました。「花火の幽霊」という歌詞です。今回はこれをもとに、僕の作詞術のようなものを書いていこうと思います。

前提として、僕は作詞家として仕事していないし、僕の作詞した曲が社会的にヒットをしたことはありません。ただ、僕が良いと思える歌詞は自分のなかでちゃんと言語化できるくらいに、作詞に対する視点は肥えていると自負しています。

中学時代から400以上の「うた(詩のような歌詞のような作品)」をつくってきたから分かるものがあるし、自分のつくった曲を弾き語りして家族の涙をつくったこともあります。詞を評価されることも少なくないので、最低限のスキルはあるのかなと振り返っているのです。

とまあ、この記事が読むに値するかどうかをずらっと書いてきましたが、下に添付する「花火の幽霊」の歌詞を乗せた記事を読んでいただいて、「なんかいいな」と思ってもらえた人は、この記事の続きを読んでいってください。

花火と幽霊を取り合わせた、未練に悩める人を描いた「うた」です。



🏨書き直したフレーズ

「花火の幽霊」、読んでいただけたでしょうか。ここからは歌詞を読んでくれている前提で話を進めていきますね。

この歌詞をもとに、僕が作詞をする上で気を付けていることを話していこうと思います。もちろんいくつか要素はあるんですが、今回は「言葉選び」という観点で話していきますね。

実は僕、記事に乗せた歌詞から書き直そうと思っているんです。昨日の時点ではあれでいいかなと思っていたんですが、今日改めて読み返してみて考え直したんです。ちょっと気持ち悪いフレーズがあったのです。

どこかというと、冒頭の2行です。

夏が来る度にあなたのことを思い出す
遠くの記憶 轟く夜

「花火の幽霊」

「あなた」のことを思い出して、過去の記憶が音を立てるように蘇ってくる真夏の夜を描いています。「夏」「轟く」「夜」という言葉選びから「花火」が連想されるし、「思い出す」「遠く」「記憶」「轟く」「夜」といったう段の音で終わる言葉が並んでごろがいいこともあって、結構気に入っていました。

しかし、今日の僕は、この2行、特に2行目に気持ち悪さを感じてしまったのです。なぜならば、「花火の幽霊」の「花火」は「打ち上げ花火」ではなく「線香花火」だからです。


🏨言葉探しの旅

冒頭に続くフレーズに「線香花火にひとりきり火をつけると……」とあるように、「花火の幽霊」の「花火」とは「線香花火」を指しているんです。線香花火が「轟く」ことはないんです。だから、「轟く」という言葉を選ぶべきではないんです。

また、この歌詞のなかで描いている物語のことを考えてもこのフレーズはあんまりよくありません。

夏が来る度に思い出してしまう人がいて、花火をすると幽霊のように脳裏に現れて、思い出のなかで微笑みかけてくる。忘れたい、早くいなくなってほしいと願うんだけれど、それでもふとした瞬間にその人の姿を探してしまう。未練を抱えた人のどうしようもなさと人間くささを描いた歌詞に、「轟く」といった強い言葉は似つかわしくないんです。

打上花火のように派手な光を放つのではなく、線香花火のようにちりぢりと燻りながら光っているのが、未練というものですから。

ということで、歌詞を変えることにしました。今のところ、次のようなフレーズにするつもりです。

夏が来る度にあなたのことを思い出す
また思い出のそばにしゃがむ

伝えたいことは似たようなものだけれど、「しゃがむ」という言葉選びが線香花火を思わせるし、夏の夜の静けさを描くことができています。線香花火に火をつけるその後の展開にも自然につながります。

作詞をするときは普段こういうことばっかり考えて、言葉探しの旅に出かけているんです。自分の伝えたいことを伝わるように伝えるためにはどんな言葉がふさわしいのか、ああでもないこうでもないを繰り返しているのです。

ただ、その時間はとにかく楽しくて、日本語の奥ゆかしさを知ると同時に、洞窟の奥にいけばいくほど好奇心が沸いてくるものなので、毎度毎度いい旅だったなと振り返るものです。

伝えたいことを伝えるために、言葉探しの旅に出かける。

この姿勢は、作詞するときだけじゃなく、小説を書くときにもnoteの記事を書くときにも大事になってきます。もっといえば、普段の日常的なコミュニケーションにも通じることなので、これを読んでくれている多くの人に心当たりのある話になったんじゃないかなと思います。

たまには何気なく使っている言葉を見つめ直したり、言葉探しの旅に出かけるのもいいものです。是非、みなさんもやってみてください。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20240709 横山黎


※僕が作詞した曲↓↓↓


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