
逃げた先でもしあわせは探せる。
――人によってはガラクタのようなものかもしれないけれど、僕にとって今手にしているものは宝のようなもの。今手にできるのは、最初に逃げるようにして茨城に来たからなんですよね。逃げた先でもしあわせは探せるんです。
人生は物語。
どうも横山黎です。
大学生作家として本を書いたり、本を届けたり、本を届けるためにイベントを開催したりしています。
今回は「逃げた先でもしあわせは探せる。」というテーマで話していこうと思います。
📚不穏な新年
新年早々、能登半島沖で地震が発生しました。北陸にお住いの方をはじめ、地震の被害に遭われた方の不安や心配が一刻も早く払拭されることを祈るように、記事を書いていきます。
地震、津波。
そんな言葉を耳にして嫌でも思い出すのは、13年前に起きた東日本大震災の記憶。当時僕は小学3年生で、体育の授業中でした。校庭でポートボールの審判をしていたんだっけな。2時46分、急に地面が揺れ出して、校庭の真ん中に集められて、校舎が崩れないことだけを憂慮しながら建物を眺めていました。
そのうち学校に保護者がやってきて、僕ら子どもたちは引き取られていきました。僕はすぐに引き取られた人でもなければ、ずっと残り続けていた人でもなくて、教室に半分くらいの人数が残っていた頃、母親が現れました。
僕たちは校庭で再会しました。僕を見つけた母親は抱きしめて、「よかった」と言いました。やせ我慢していたんでしょう。腕に包まれてちょっぴり泣いた記憶があります。ちなみに母親はそのとき確か仕事で新宿にいて、新宿から駒込まで歩いて小学校まで来たことを後から聞きました。
地震が起きてからというものの、母方の祖母が岩手住まいということもあり東北に親戚が多かったもので、祖母はひとりひとり安否を確認して、電話のつながる度に安堵していました。
数日間、テレビの画面は地震と津波の話題ばかり。街を飲みこんでいく黒い波。人も家も車も彼方へと連れ去られていきました。
「高い所へ避難してください!」
「戻らないでください!」
「逃げてください!」
📚逃げるように進学した先で
僕は今茨城を拠点に活動しているんですが、東京から根城を変えたのは大学受験に失敗したからでした。第一志望校だった学芸大学の二次試験の日程を間違えるという滑稽な過ちを犯して、保険で後期日程で出願していた茨城大学に進学することにしたんです。
あのときは自分を責めたし、大学進学が叶ったとはいえ、胸を張ることはできませんでした。逃げるようにして、茨城へ引っ越したんです。
さらに僕を襲ったのは、コロナ。世界的パンデミックのせいで、入学式も文化祭もコンパも何もかもが中止。思い描いていたキャンパスライフとは程遠い生活が待っていました。人とつながることを控え、人と集まることを避け、砂漠のような日々を送っていたことを思い出します。
コロナが落ち着いてきた頃、僕は初書籍『Message』を出版して、それを届けるためにいろんな人に会いにいきました。小中高の旧友にも、お世話になった先生にも会いにいったし、イベントに参加して縁を広げて行きました。
今こうして振り返ったとき、コロナ禍で動かずじっとしていたのは次に動き出すためのばねをつくるためだったんです。
おかげで小説『Message』は250冊手売りできたし、ビブリオバトルで3度目となる全国大会に出場することができたし、ラジオパーソナリティーの仕事を依頼されたり、コンスタントにイベントを開催したり、そして、人生を共にしたパートナーにも出逢うことができました。
だから、僕は思うんです。
逃げた先でもしあわせは探せるって。

📚逃げた先でもしあわせは探せる
受験で失敗して逃げるように進学した先で、僕はあの頃夢想だにしていなかった幸運を掴むことができています。人によってはガラクタのようなものかもしれないけれど、僕にとって今手にしているものは宝のようなもの。今手にできるのは、最初に逃げるようにして茨城に来たからなんですよね。
逃げた先でもしあわせは探せるんです。
この学びは僕にとってはとても大きくて、きっとこの先の人生でも役に立つと思います。塞ぎ込んでしまいたくなるようなとき逃げればいい。逃げた先でまた探せばいい。逃げた先でいちばんのしあわせを手にできた僕がいうんだから、それなりに説得力があります。
きっとこの学びが、誰かを救うこともあるはず。
地震や津波が起きたとき、他人から「逃げてください!」とはいわれるけれど、いざとなったら油断や怠慢のせいで逃げなくても大丈夫だろうと思ってしまうのが人間です。きっと僕も、その立場になったらそう思いそう。
だから、今のうちにいつかの自分に向けて警告しておきます。
逃げてください。
逃げなければ最悪命を落とします。
逃げれば、最悪でも、
持っていたしあわせを落とすだけで済みます。
落としたしあわせは、
逃げた先でも探して拾えます。
逃げて、
探して、
生きてください。
20240102 横山黎
※防災をテーマに描いた物語です↓↓↓