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『君はマスクを取らない』の音楽たち。
――永遠を夢見て名前に関係をつけたふたりが、その息苦しさに離れ離れになり、水のような関係を結びながら、どれだけ時代が流れても変わらないものを自分のなかに見つける物語です。
人生は物語。
どうも横山黎です。
作家として本を書いたり、木の家ゲストハウスのマネージャーをしたり、「Dream Dream Dream」という番組でラジオパーソナリティーとして活動したりしています。
今回は「『君はマスクを取らない』の音楽たち。」というテーマで話していこうと思います。
高校生最後の3月に、『君はマスクを取らない』という物語を書きました。いつでもどこでもマスクをしている高校生の話です。今思えば、僕が唯一書き上げた長編純愛小説です。
大学時代には、その作品をきっかけに仲良くなった人とお付き合いしたり、いろんな関係をいったりきたりを繰り返しました。いつかまた再創作したいなという思いを秘かに燻っていたのですが、最近になってまたその思いの火が大きくなり始めました。
そんなこんなで、今日は『君はマスクを取らない』の話です。
実はちょっとずつ、この物語に合うような曲をつくっていまして、現時点で3曲YouTubeで公開しています。今回はそれをまとめて紹介する記事となります。
別に歌がうまいわけでもない僕が歌っているので歌唱のレベルは期待してほしくないのですが、歌詞や世界観、曲を順番に聴くことによってそこに横たわる物語を楽しんでもらえたら嬉しいです。
「絶対」
星の見えない夜
揺れているブランコ
風にたなびく煙
少し寂れたベンチ
暗くならないように 言葉選ぶ君より
横たわる空気が さよならを酷に告げる
“いつまでも一緒” 冗談みたいに
あの頃言い合っていたけれど
永遠がこれで終わりだなんて
冗談じゃないよ
世界中の誰の手も届かない
時代の大河にも流されない
神様の気まぐれにも怯まない
そんな二人になりたかった
そんな絶対になりたかった
炭酸水みたいに
振りすぎて弾けた思いも
いつか流れに飲まれ
泡となり消えていくの?
街灯の光 濡れた目の奥
君との日々がそっと尾を引く
今さら願いをかけたところで
もう別の星座
新しい未来へ踏み出せば
思い出たちが通せんぼする
そんなに美しく輝くから
無理に手荒な真似はできない
君がいなくたって 海は枯れない
君がいなくたって 陽はまた昇る
君がいなくたって 地球は回る
君がいなくたって
世界中の誰の手も届かない
時代の大河にも流されない
神様の気まぐれにも怯まない
そんな二人になりたかった
そんな絶対になりたかった
君の絶対になりたかった
「水」
炭酸水が好きだった 僕と君の手には今
溜まり溜まった課題と 安い缶のアルコール
少し遅くなったけど 誕生日プレゼント
久しぶりに過ごす夜に静かに響くオルゴール
ディスプレイとにらめっこ 炬燵の中の温もり
君の上手な鼻歌 甲高くなる缶の音
君の前で初めて 滑稽なくらい酔って
飲ませてくれた水が 教えてくれたことがある
流行り病に似た幸せよりも
今 ここにある幸せに感じ染まって
僕たちの関係に名前はいらない
息苦しくて 生きづらいだけ
今さらありふれた名前なんかで
名付ける必要もないから
水のようなふたりでいよう
味気なくても それがなくちゃ生きられない
ただそばにいて 命の意味を確かめて
世界から変わり者だと揶揄されても
変わらず変わり続けていこう
出逢いのおかげでお互い見つけた
本当の自分の姿をいつまでも変えないように
水のようなふたりでいよう
この先また何かあれば あの公園で会うとしよう
生きてるだけで乾杯 安い缶のアルコール
飲みすぎたら そうだな
自販機の水を買って 夜道でも歩こうよ
「君はマスクを取らない」
これからの君に捧げるうた
誰のそばでも幸せでありますように
陽だまりのような優しさと
水たまりのような寂しさを
君の微笑みは抱えているから
それを見ると僕は息苦しくなる
日常に皹が入ろうと
傘のない雨に降られようと
心絆した赤い毛糸を
引き裂かれようと
君はマスクを取らないんだね
僕は沈黙の帳の中で
君の世界への外出を自粛する
新しい季節に着替えたこの街で
着古した命を君は纏っていた
空の下 物語り合った
僕たちの青春の踊り場
次の蕾が開く頃には
幕が下りるけど
君はマスクを取らないんだね
僕はフレーズを今も探している
桜吹雪けど 揺るぎないもの
僕の中にも見つけられたの
春の岐 ふたりの未来
言葉の花を最後に贈らせて
廻り続ける地球の上で
変わり続ける時代の中で
君の中にある絶対をいつまでも守り続けて
君はマスクを取らないでいて
永遠を夢見て名前に関係をつけたふたりが、その息苦しさに離れ離れになり、水のような関係を結びながら、どれだけ時代が流れても変わらないものを自分のなかに見つける物語です。
それが、「絶対」、「水」、「君はマスクを取らない」の歌詞の流れから読み取れるのかなと思います。それをいつかちゃんと物語にして、1冊の本に仕上げることを夢想しています。それが、僕の絶対です。
必ず叶えにいくので、気長に待っていてくれればなと思います。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
20241209 横山黎