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夜更けの朝

ああ許されるのならば
きみのそのやはらかな肌に爪をたてたかつた
きみのその生じろい首を覆ひたかった
きみの痛みをこの手に感じたかつた
きみのその澄んだ瞳が私を映すのを見ていたかつた

きみのそのまつすぐな瞳がゆれるのは
それはさう 真夏の水面のやう
きみのその凛とした声が掠れるのは
それはさう 真冬の窓辺の向こうかわ
きみのその痛みは
さう 言いあらはせないほどに綺麗でせう

そんなことを正気で思つている私は
どこかおかしいのでせうか

だつて きみを きみを愛しているのに
まるでこれぢやあ嫌つているやうではないですか

ああいやだ
ああいやだ
こんな私が堪えきれないほど嫌なのです

だけれど 私は
きみの傷ついた時の瞳が
きみの傷ついた時の瞳はとても綺麗で

これが
この焦がれが
恋だと思つたんです

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