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kinari1217
夜更けの朝
ああ許されるのならば
きみのそのやはらかな肌に爪をたてたかつた
きみのその生じろい首を覆ひたかった
きみの痛みをこの手に感じたかつた
きみのその澄んだ瞳が私を映すのを見ていたかつた
きみのそのまつすぐな瞳がゆれるのは
それはさう 真夏の水面のやう
きみのその凛とした声が掠れるのは
それはさう 真冬の窓辺の向こうかわ
きみのその痛みは
さう 言いあらはせないほどに綺麗でせう
そんなことを正気で思つている私は
どこかおかしいのでせうか
だつて きみを きみを愛しているのに
まるでこれぢやあ嫌つているやうではないですか
ああいやだ
ああいやだ
こんな私が堪えきれないほど嫌なのです
だけれど 私は
きみの傷ついた時の瞳が
きみの傷ついた時の瞳はとても綺麗で
これが
この焦がれが
恋だと思つたんです