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私が取材して書いていたのべ15万人の富裕層。「人事興信録」とは?

今回は、以前書いた記事の増強改訂版となります。

これは、バブル期まで遡る話ですが、神田の編集校正アルバイトと、丸の内の正社員時代に私が書いていた人事興信録とは、日本の歴史において重要な役割を果たした人名録です。1903年に創刊されたこの人名録は、日本の各界で活躍する著名な人物や在日外国人の情報を網羅していました。人事興信録は、人物の身分や職業、家族構成などの詳細な情報を含んでおり、ビジネスや学術研究の場で広く利用されてきました。

この人名録は、社会的信用度の指標としても活用され、企業間の取引や人材採用の際の重要な参考資料となっていました。また、情報の収集と掲載には厳格な基準が設けられており、戸籍や他の興信所の資料、読者からの情報提供など、多様な情報源が用いられていました。

戦前を代表する紳士録のひとつに『人事興信録』がある。これは私立探偵の先駆であった内尾直二が明治35年(1902)、渋沢栄一の援助を受けて東京に設立した人事興信所が翌年から刊行を始めたもので、全国的な紳士録としては明治22年(1889)に発刊された『日本紳士録』に次いで古い。その後は2年から3年ごとに新しく編さんされ、平成7年(1995)まで続いた。

岸本良信氏のホームページより引用
かなり古い時代の記録。平岡梓。
作家・三島由紀夫の父親の個人データ。企業経営者。三島同様に東大の法学部出身者。
三島は当時学習院大学高等部の高校生。

私は営業・編集者として、著名な会社役員、医師や弁護士、官僚、大学教授などを、
大企業や大学、官公庁の人事や総務、秘書室の責任者から直接取材、会社役員の個人データを収集して、その情報をまとめて書籍化する仕事に携わっていました。もちろん一人でなく、数10人で書く一大作業でした。掲載された人物は最高で15万人。発行は2年に一度。本作の海賊版や、俗悪な偽物も出回りました。コピーして作られていたのです。上下巻で1セット価格は15万円でした。私はこの書籍を執筆、販売して給与を得ていました。

人事興信録は、その後も時代と共に版を重ね、2009年に第45版をもって終刊となりました。最終版では約8万人の人物が掲載されており、日本の社会の発展と人々の活躍の場の拡大を示しています。価格は、1957年版で12000円とされており、当時の情報を求める人々のニーズの高さを物語っています。


丸の内2丁目 岸本ビル内にあった人事興信所。三菱地所が持ち主のビル。

近年では、人事興信録の歴史的価値に着目し、デジタルアーカイブ化への取り組みが進められています。名古屋大学大学院法学研究科では、2014年からテキストデータ化プロジェクトに着手し、初版、第4版、第8版などがオンラインで公開されています。これにより、研究者や一般の人々が容易にアクセスし、活用できるようになりました。

人事興信録は、日本の社会史を映す鏡として、また社会構造の変化や文化の変容を理解するための貴重な一次史料として、その価値が再評価されています。デジタルアーカイブ化により、特定の職業の人々の動向を追跡したり、時代の変遷における社会的地位の変容を分析したりするなど、歴史研究や社会科学研究に新たな知見をもたらす可能性が広がっています。

人事興信録のデータベース化は、日本の近代史を理解するための重要な資料であり、今後もその価値はさらに高まっていくことでしょう。興味深いのは、このような歴史的資料がデジタル化されることで、より多くの人々が歴史に触れ、学ぶ機会を得られるようになることです。人事興信録は、単なる人名録を超え、日本の社会変遷を映す貴重な鏡と言えるでしょう。


人事興信録のデジタルアーカイブは、日本の近代史を研究する上で非常に貴重な資料です。これらのアーカイブは、特定の機関によってデジタル化され、一般の人々がアクセスできるようになっています。例えば、名古屋大学大学院法学研究科では、人事興信録の初版、第4版、第8版などがテキストデータ化され、オンラインで公開されています。これにより、研究者や一般の人々が容易に情報にアクセスし、利用することが可能になっています。

また、国立国会図書館では、人事興信録の第14版などのデジタルコピーが利用可能であり、閲覧や複写(コピー)、インターネットでの読書が可能です。これにより、歴史的な文献を物理的に手に取ることなく、デジタルフォーマットで研究することができます。

さらに、国立公文書館デジタルアーカイブでは、「満洲国名士録人事興信録別冊」などの特定歴史公文書のデジタル画像が閲覧、印刷、ダウンロードできるようになっており、いつでもどこでも自由に利用できます。

これらのデジタルアーカイブの利用は、日本の社会変遷や文化の変容を理解するための貴重な手段となります。デジタル化されたこれらの資料は、歴史研究や社会科学研究に新たな知見をもたらす可能性を秘めており、今後もその価値は高まっていくことでしょう。興味深いのは、このような歴史的資料がデジタル化されることで、より多くの人々が歴史に触れ、学ぶ機会を得られることです。人事興信録は、単なる人名録を超え、日本の社会変遷を映す貴重な鏡と言えるでしょう。

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