【ショートショート】コンビニ怪人あらわる
「コンビニ怪人あらわる」
未来の東京は、未来の技術と古き良き日本の文化が調和した都市です。超高層ビルが立ち並び、空中庭園や仮想現実技術が日常の一部となっているこの街の一角に、ひっそりと佇むコンビニがあります。その名も「ネオグローリー24」。
夜も更けたある晩、このネオグローリー24に不穏な影が忍び寄りました。店員のサトウ君は、夜勤に備えて店内の棚を整理していたところ、突然背後から低く唸る声が聞こえました。
「サトウ君、おまえには未来が見えるか?」
サトウは驚いて振り向くと、そこには奇妙な仮面をかぶった怪人が立っていました。その怪人は全身を黒いマントで覆い隠し、たまに仄かに光る眼が店内を見渡しています。驚くサトウ君に、怪人は一歩一歩と近づいてきました。
「お、お客さん、何かご用ですか?」
怯えるサトウ君の前で、怪人は一本の指を立てました。
「今日、このコンビニで起こる出来事を予知してみろ。もし間違えば、この街から消えることになる」
サトウ君は冷や汗をかきながら店内を見回しました。しかし、何度見てもごく普通の夜のコンビニです。突然、レジのベルが鳴り、サトウ君はびくりとしました。店内に訪れたのは、いつも来る常連客のお婆さんでした。
「まさよさん、こんばんは」
笑顔で挨拶するサトウ君に、まさよさんが答えます。
「こんばんは、サトウ君。またこれをお願いね」
まさよさんが手にしていたのは、小さなプラモデルの人形でした。彼女はいつもこのコンビニで、小さな部品を買っては人形を作るのが趣味だったのです。この時代でも、手作りの楽しさは人々の心を捉え続けていました。
サトウ君が袋詰めを終えたところで、突然店内の照明が一瞬消えました。暗闇の中で、あの怪人の笑い声が響き渡ります。
「さあ、サトウ君、未来を見通せるかな?」
引き戻された光の中、まさよさんの人形が一瞬燃え上がるような光を放ちました。怪人はそれをじっと見つめ、深い声で言いました。
「未来を見通すには、今を見つめる勇気がいる。人々の小さな努力や優しさが、この都市を未来へ導くのだ」
サトウ君は怪人の言葉に耳を傾け、頷きました。まさよさんが帰り際に笑顔で、
「また来るね」
と言ったその瞬間、サトウ君は未来を見る力を得たように感じました。
怪人は静かに消え、コンビニは再び静けさを取り戻しました。ネオグローリー24には、今日も未来の一歩を踏み出す人々が訪れ続けるのでした。