Rei

人文・社会科学系の書籍を中心に読んでいます。 しばらくnoteの更新が止まっていますが、また少しずつ感じたことや考えたことを綴っていきたいと思います。 【Twitterアカウント】 https://twitter.com/Rei_books0228?s=09

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ドイツの思い出

ドイツのドレスデン工科大学(Technische Universität Dresden)にいたころ、朝から晩まで文献を渉猟していた。 まるで宝探しのようだった。 図書館では静かに勉強に励む学生たちが印象的だった。 現地の学生たちと夕餉をともにしたことを思い出す。 ドレスデンの街並みは美しい。 ツヴィンガー宮殿や聖母教会が、静かに流れるエルベ川に映える。 スーツ姿の男性が颯爽と自転車に乗り、トラム(路面電車)に乗り入れるのを見て、かっこいいなと思ったことを思い出す。

    • 心に残ることば_9(普通じゃないから美しい)

      今回は本からの引用ではなく、映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』から心に残ることばを紹介します。 I was on a train that went through a city that wouldn’t exist if it wasn’t for you. I bought a ticket from a man who would likely be dead if it wasn’t for you. I read up on my wor

      • 心に残ることば_8(わがままという美徳)

        まずはテーマとなる「わがまま」について、私の心に残ったヘルマン・ヘッセのことばを引用してみたいと思います。 ひとつの美徳がある。 私が非常に愛している唯一の美徳である。 その名を「わがまま」という。 私たちが書物で読んだり、先生のお説教のなかで聞かされたりするあの非常にたくさんの美徳の中で、わがままほど私が高く評価できるものはほかにない。 けれどそれでも人類が考え出した数多くの美徳のすべてを、ただひとつの名前で総括することができよう。すなわち「服従」である。 問題はただ、誰

        • 心に残ることば_7(賑やかな孤独)

          「孤独」について描かれた私の好きな詩を紹介します。 茨木のり子「一人は賑やか」という詩です。 一人でいるのは 賑やかだ 賑やかな賑やかな森だよ 夢がぱちぱち はぜてくる よからぬ思いも 湧いてくる エーデルワイスも 毒の茸も 一人でいるのは 賑やかだ 賑やかな賑やかな海だよ 水平線もかたむいて 荒れに荒れっちまう夜もある なぎの日生まれる馬鹿貝もある 一人でいるのは賑やかだ 誓って負けおしみなんかじゃない 一人でいるとき淋しいやつが 二人寄ったら なお淋しい おおぜい

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          1本

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          心に残ることば_6(雨を味わう)

          私がとても好きな一節。 シュティフター「石さまざま」の『電気石』の文章で、登場人物のひとりである「教授」について描いたもの。 物語の筋とは直接関係のない描写だけど、何気ない文章にふと目が留まってしまうのも読書の大きな楽しみのひとつ。 朽ちていくもの、自然に侵食されていくものに対する静かで穏やかな視線を感じさせてくれる。 以前、東京の中目黒で「朽ちていくもの」を対象とした展覧会があり、枯れゆく草木や、使い込まれて独特の風合いをおびた家具などが展示されていて、とても興味深かった

          心に残ることば_6(雨を味わう)

          心に残ることば_5(猥褻な書物)

          如何なる書物でも、良く書かれていれば断じて危険ではない。 立派な文章で描かれるなら、生々しい事件、露骨な事実と雖も決して有害ではなく、精神を毒する所もない。 自然界にはあらゆるものが存在し、それ自体は道徳的でも不道徳的でもない。 唯それを表現する者の魂が自然を偉大にも、美はしくも、清澄にも、矮小にも、愚劣にも、悩ましくもする。 名文である猥褻な書物などは存在しない。 辰野隆『忘れ得ぬ人々と谷崎潤一郎』中央公論新社、p.258 この文章は『ボヴァリー夫人』を執筆するかたわら

          心に残ることば_5(猥褻な書物)

          露伴とビリヤード

          先ほどふと思い出したエピソード。 どこに書いてあったのか忘れたが、幸田露伴がビリヤード場で玉突きに興じた場面を描いた文章を思い出した。 その文章を読んだとき、私は露伴の仙人のような風貌とビリヤードという取り合わせが、どうもちぐはぐな感じがして滑稽な印象を受けたのを覚えている。 露伴先生には大変失礼な話だが…。 私は学生時代にビリヤード場でバイトをしていたので、お客さんの相手をして玉を突くことも多かった。 そんな事情もあって、ビリヤード場で玉を突く露伴の姿が、より鮮明にイメ

          露伴とビリヤード

          心に残ることば_4(心情の聡明さ②)

          ギッシングの『ヘンリ・ライクロフトの私記』を読んだ感想として、前回は個人的な経験に徴して綴ってみた。 ここからさらに、「頭脳の聡明さ」と「心情の聡明さ」の関連性について少し考えてみたい。 というのも、私は近ごろ、読書をする場合においても「頭脳の聡明さ」にとどまらず、そこを突き抜けて、「心情の聡明さ」にまで辿り着かなければ、ただ頭でっかちになるだけなのではないかと感じているからだ。 ギッシングは、彼が「心情の聡明さ」を見出したある婦人について、このようにも書いている。

          心に残ることば_4(心情の聡明さ②)

          心に残ることば_3(心情の聡明さ)

          愚かしくも生意気であった私は、とかく人の価値をその知的な力量と業績から判断しがちだった。私にとっては、論理のないところにはなんらの善きものはなく、学問のないところになんらの魅力もなかったのだ。 今は二つの形式の聡明さ、つまり頭脳の聡明さと心情の聡明さとを区別しなければならないと思うようになったのだ。 そして後者の方をはるかに重要なものとみなすようになったのだ。 聡明さは問題ではないなどというほど、私は浅はかな人間ではない。愚者は怠屈であるとともに有害でもあるからだ。 しかし、

          心に残ることば_3(心情の聡明さ)

          心に残ることば_2(自然をみる目)

          風の吹くこと、水のながれ、穀物の生長、海の波だち、春の大地の芽ばえ、空の光、星のかがやき、これらをわたしは偉大だと考える。 壮麗におしよせてくる雷雨、家々をひき裂く電光、大波を打ちあげる嵐、火を吐く山、国々を埋める地震などを、私は前にあげた現象より偉大であるとは思わない。いや、むしろ、小さいものと考える。 なぜなら、それらも、はるかに高い諸法則のはたらきによって生れたものにすぎないからである。 * 外的な自然においてそうであるように、内的な自然、すなわち人間の心についても事情

          心に残ることば_2(自然をみる目)

          心に残ることば_1(他者への寛容)

          私は、自分がある生き方に縛られているからといって、みんながやるように、世間の人びとを無理やりそこに引きずり込むようなまねはしない。 生き方というものは千差万別であり、それでいいと思っている。 私は世の人たちとは反対に、われわれのなかにある類似よりも差異をいっそう容易にうけいれる。私は他人から私の生き方や方針をできるかぎり免除してやって、彼を、単に彼自身のなかで、ほかとの関係を抜きにして考察する。 そして彼本来の生活の型にあわせてたっぷり肉付けをしてあげる。 * 私は想像力を働

          心に残ることば_1(他者への寛容)

          心に残ることばの「序」

          ひとつの試み これまでの読書を通じて私の心に残ったことばの数々を、ここで取り上げてみたいと思う。 ひとつの作品は、その全体を読み通し、総体として把握してこそ真に読んだことになるという考えに、もとより私は異論を差し挟むつもりはない。 それでも、摘み取ってみてなお輝きを失わないばかりか、一輪の生け花のように、その存在自身の力において、ますます光彩を放つことばの断片が、たしかに存在する。 記憶力には限りがあるのだから、せめてそうした強く美しいことばだけでも、手元においておき

          心に残ることばの「序」

          読むことと生きること

          なにを読み、なにを考え、どう生きるか。 私の場合は、おおまかに分けて、「深く読みこんで自分の生きる糧にしたい読書」と、「ただ読んで楽しい純粋な娯楽としての読書」があります。 食事で言うなら、前者が主食で、後者がデザートといったところ。 今回は、前者の読書(主食の方)について書いてみたいと思います。 「好きな本が、自分の人生のなかでどういう意味をもっているのか?」 大げさだと思われるかもしれませんが、これは私のなかでいつも渦巻いている問いです。 本が好きな方の中には、頷い

          読むことと生きること

          ここが私の居場所

          こんにちは、Reiです。 note初投稿となります。 フォローさせて頂いている方々のnoteを拝見し、自分も何か書いてみたいと思うようになりました。 今回は、私のいまの読書生活と、簡単な自己紹介めいた内容を書いてみたいと思います。 さて、とつぜん話が飛びますが、私の愛読書であるモンテーニュ『エセー』について少しだけ。 私はモンテーニュの生きる姿勢、考え方に強く共感の念を持っています。 「精神の自由」と、そのための場所を何よりも大切にしたモンテーニュ。 少しだけ彼の言葉を

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