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THA術後の痺れに対する理学療法|2022.07.05配信

本ブログはYouTubeの台本を、そのまま掲載しています。分かりやすいオリジナルイラスト付きで確認したい方は、YouTubeKindleで確認してください。

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はじめに

THA術後で、下肢に痺れるような痛みがある、、

THA術後の痛みを、改善してあげられない、、

炎症値も大丈夫だし、筋肉の異常も無さそう、、

色々やってみたけど、痛みが全然変わらない、、

僕も同じように悩んだ事がありました。

そして今日説明する理論をもとに、介入を進めた結果痛みを軽減させる事に成功しています。

人の体は、たくさんの因果関係があるので、

全ての症例において、この動画が活かせるかどうかは分かりませんが、

治療に難渋している人は、ぜひ参考にしてみて下さい。

自分では、気がつけなかった因子が見つけられる事でしょう。

このチャンネルでは、複雑なリハビリの知識を整理して詳しく説明しています。

「臨床を楽しくしたい方」「臨床に行き詰っている方」は、

有益な情報を見逃さないためにも、チャンネル登録しておく事をおすすめします。

また、説明してほしいものがあれば、

コメント欄か各種SNSで、連絡して下さると嬉しいです。

では、本編に進みましょう〜

本編

THA術後と神経障害の関係

まずは、THA術後と神経障害発生の関係について説明していきます。

⏩ 術後の炎症期を過ぎても、下肢な痺れを伴う痛みが残存している

⏩ 筋緊張などの異常がないのに、下肢に痺れを伴う痛みがある

このような場合、

痺れを伴う痛みが発生している要因としては、

次の2つの説を考える事ができます。

脚の延長説

脚の延長説は、健側と比較して患側の下肢長が短縮していた症例で考えられる説になります。

理論は簡単で、患側下肢が短縮していた症例に対してTHAを施工する際、

脚長差を揃えるために、患側の下肢長を延長した結果、

坐骨神経が緊張状態になり、神経障害を呈するというものです。

この説に当てはまりやすい症例はこんな感じ。

高位脱白

殿筋内脱白

ソケットのproximal migration

著明な股関節屈曲拘縮

リウマチ

THAの再置換術

関節強直などの術前可動域がきわめて悪い症例

またこれらの症例では、術前の股関節の可動性が低下している場合が多く、

術後の、可動性の拡大に伴って、

坐骨神経が、さらに伸長されやすくなるという要因も絡んできます。

脚延長の程度よって、症状が出現する神経領域が変わるので、これは覚えておくようにしましょう。

下肢延長量平均27mm(19〜37mm)

腓骨神経領域

下肢延長量平均44mm(40〜51mm)

脛骨神経領域

ちなみに、THA術後に生じる末梢神経障害の中で、

最も発生頻度が高いのは、腓骨神経とされているので、

これも思えておけるといいですね。

術中操作説

次は、術中操作説について。

これは、術中のなんらかの操作によって、坐骨神経が直接損傷されてしまい、

その損傷によって、痺れを伴う痛みが発生しているケースです。

原因となる操作はこんな感じ

白蓋固定のスクリューやセメントの突出による穿孔

骨切りした大転子を固定するワイヤーによる穿孔

術中の脱臼操作

リトラクターによる坐骨神経の直接損傷

術中ではないですが、

術後に発症する血腫によって生じる坐骨神経の癒着によって神経障害を生じる場合もあり、

この場合、数週間かけて発症する事が多いです。

また、術中操作説にて、

坐骨神経が直接損傷されている場合、

理学療法介入で、改善させることは困難を極めるので、

押さえておきましょう。

理学療法介入で効果が見込めるのは脚の延長説によって、

痺れを伴う痛みを生じているケースになります。

THA術後に関わる神経

では、THA術後に関係する神経について、簡単に説明していきましょう。

まずは、坐骨神経について

坐骨神経は、腰神経叢と仙骨神経叢の末梢神経が合流して太い束となった神経です。

腰椎の側面と仙骨の前面の前仙骨孔から出た神経は、

大坐骨孔を通って骨盤の内面から後面にでます。

大坐骨孔通過した後は、梨状筋の下方の位置を保持したまま通過するのもポイントなので覚えておきましょう。

骨盤後面にでた坐骨神経は、

大殿筋に覆われながら、双子筋や大腿方形筋、内閉鎖筋を横切り、

大腿の後面を下降して膝窩の上方で総腓骨神経と脛骨神経に分かれます。

知覚領域は、大腿後面になりますね。

ざっくり大腿後面の感覚を感じ取っていると理解しておけば大丈夫です。

次は、腓腹神経。

腓腹神経は、坐骨神経から分岐した後、腓骨頭を後外側から前内側部に向かって走行し、

さらに浅腓骨神経と深腓骨神経に分岐します。

両神経は足背部まで走行し、深腓骨神経由来の足背指神経は母指外側と第2趾の内側へ、

浅腓骨神経由来の足背指神経は深腓骨神経支配領域以外の足趾へそれぞれ神経を伸ばしています。

走行から考えると、「股関節屈曲・膝関節伸展・足関節底屈・足趾屈曲」により伸張されやすい事が分かりますね。

この特徴は、治療する際のポイントになるので、ついでに押さえておきましょう。

知覚領域は、それぞれ、

総腓骨神経→下腿上部の外側

深腓骨神経→ 母趾と第2趾の間

浅腓骨神経→ 下腿下部前面の外側と足背

になります。

次は、脛骨神経について。

脛骨神経は坐骨神経から分岐した後、

脛骨内果後面を通過し、内・外側足底神経の2本の終枝にさらに分岐して足底を走行します。

内側足底神経は母指から第4趾内側へ、

外側足底神経は第4趾外側から第V趾にそれぞれ神経を伸ばします。

この走行から、

「股関節屈曲・膝関節伸展・足関節背屈・足趾伸展」で伸張されやすくなる、という事が分かりますね。

こちらも、治療で役立つ知識なので覚えておきましょう。

知覚領域は、

下腿下部後面の外側

足底

神経障害に対する評価とアプローチ

まずは、評価から説明していきましょう。

ここでは、SLRを応用した評価方法を説明していきます。

肢位:

背臥位

方法:

①セラピストは片方の手で対象者の踵を把持し、もう片方の手で対象者の膝を上から把持する

②股関節内外旋中間位・膝関節伸展位・足関節中間位を保たせたままで、下肢を他動的に挙上させる

判定:

0〜35°で痺れに伴う痛みが発生、もしくは増悪すれば

ポイント:

・0〜35°SLRで、坐骨神経の遊びが無くなるとされている

・脚の延長説によって、坐骨神経が過緊張状態にあると0〜35°で坐骨神経に異常な伸長が加わる事になる

・「股関節屈曲0°〜40°・内外旋中間位・膝関節伸展位・足関節中間位」の可動域が確保できない場合、正しく評価が行えない

テストが陽性だった場合、坐骨神経に過剰な伸長が加わって痛みを生じさせている事が疑えるので、

滑走改善エクササイズを行い、坐骨神経の過度な伸長状態を改善させていきましょう。

神経の滑走を改善させる事で、余計な伸長を取り除く事ができます。

✅ 坐骨神経の滑走改善エクササイズ

肢位:

背臥位

手順:

①枕などを用いて、頭頸部軽度屈曲位にする

②a治療側の下肢を「股関節屈曲90°・膝関節屈曲90°・足関節中間位」にする

③股関節の角度を保ったまま、膝関節の屈伸を繰り返す

✅ 腓腹神経の滑走改善エクササイズ

①枕などを用いて、頭頸部軽度屈曲位にする

②Ⅰ〜Ⅳを交互に行う

Ⅰ. 治療側の下肢を「股関節屈曲30°・膝関節伸展0°・足関節底屈位・足趾屈曲位」にして、股関節以外の角度は保ったままで股関節の屈伸運動を他動的に行う

Ⅱ. 治療側の下肢を「股関節90°屈曲位・膝関節屈曲位・足関節底屈位・足趾屈曲位」にして、膝関節以外の角度は保ったままで膝関節の屈伸運動を他動的に行う

Ⅲ. 治療側の下肢を「股関節屈曲30°・膝関節伸展0°・足趾屈曲位」にして、その状態を保ったままで足関節の底背屈運動を他動的に行う

Ⅳ. 治療側の下肢を「股関節屈曲30°・膝関節伸展0°・足関節底屈位」にして、その状態を保ったままで足趾の屈伸運動を他動的に行う

✅ 脛骨神経の滑走改善エクササイズ

①枕などを用いて、頭頸部軽度屈曲位にする

②Ⅰ〜Ⅳを交互に行う

Ⅰ. 治療側の下肢を「股関節屈曲30°・膝関節伸展0°・足関節背屈位・足趾伸展位」にして、股関節以外の角度は保ったままで股関節の屈伸運動を他動的に行う

Ⅱ. 治療側の下肢を「股関節90°屈曲位・膝関節屈曲位・足関節背屈位・足趾伸展位」にして、膝関節以外の角度は保ったままで膝関節の屈伸運動を他動的に行う

Ⅲ. 治療側の下肢を「股関節屈曲30°・膝関節伸展0°・足趾伸展位」にして、その状態を保ったままで足関節の底背屈運動を他動的に行う

Ⅳ .治療側の下肢を「股関節屈曲30°・膝関節伸展0°・足関節背屈位」にして、その状態を保ったままで足趾の屈伸運動を他動的に行う

それぞれの介入のポイントは、愛護的かつゆっくりとした速度で行う事です。

繰り返し関節運動を行い、神経の伸長と弛緩を適度に反復するのが肝になりますね。

おわりに

小さな知識でも、

知っているだけで、目の前の患者さんを

変えてあげられるかどうかが、全然違ってきます。

情報の正確性を確認するのも大切だと思いますが、

知識が少なければ、それが正しいかどうか判断するのもままなりません。

まずは、なんでもいいので、

少しずつインプットする習慣を身につけてみましょう。

臨床が、仕事が、そして人生が劇的に変わっていくはずです。

今日のまとめはこんな感じ。

いつでも復習できるように、この動画を最後まで見て下さった方限定で、まとめ資料をプレゼントします。

詳細は、概要欄に。

りはメモでは、臨床や仕事を楽しくして、

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では、また次の動画でお会いしましょう〜

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