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転職前に知っておきたい!療法士目線の業界研究【遠隔心リハ編】

はじめに

ヘルステック企業への転職を考えている方は、企業の事業内容や取り組みについての理解を深めることが重要です。

特に、リハビリテーション領域の中でもデジタルとの相性が良く、ビジネスとしても注目されている「遠隔心臓リハビリ(以下:遠隔心リハ)」は、多くの理学療法士が関心を寄せる分野です。

現状、遠隔心リハは保険適応されていませんが、日本心臓リハビリテーション学会などが保険適応に向けた活動を行っています。これまでの研究から遠隔心リハの有用性が示唆されており、今後普及が見込まれます*1。

本記事では、遠隔心リハについて詳しく解説し、理学療法士としてヘルステック企業への転職を目指す方に有益な情報を提供します。


「遠隔心リハ」についての解説

「遠隔心リハ」とは

遠隔心リハとは、心臓リハビリテーションをデジタル技術を活用して遠隔で実施することを指します。

具体的には、患者が自宅や職場など医療機関以外の場所で、ウェアラブルデバイスやスマートフォンアプリを用いて運動や生活習慣の改善に取り組みます。医療者は患者の経過を遠隔でモニタリングし、適切な指導を行います。

従来の心臓リハビリテーションでは、医療機関への通院が必要であるため、患者の身体的・時間的負担が大きく、継続率の低下が課題でした。

遠隔心リハは、これらの課題を解決し、より多くの患者に心臓リハビリテーションを提供することを目的とします。

遠隔心リハの必要性

遠隔心リハが必要とされている理由は、主に以下の3点が挙げられます。

  1. 心疾患患者の増加:高齢化や生活習慣の変化により、心疾患患者は年々増加傾向にあります。そのため、心臓リハビリテーションのニーズも高まっています。

  2. 通院の負担:従来の心臓リハビリテーションは、医療機関への通院が必要であり、患者の身体的・時間的負担が大きいという課題がありました。遠隔心リハは、この課題を解決することができます。

  3. エビデンスの蓄積:遠隔心リハの有効性を示す研究結果が数多く報告されており、その効果は明らかになってきています。

遠隔心リハを必要としているのは、主に心疾患患者とその家族、および心臓リハビリテーションを提供する医療機関です。遠隔心リハの導入により、患者のQOL(Quality of Life)の向上、医療機関の効率化、医療費の削減などの効果が期待されています。

遠隔心リハのプレイヤー

遠隔心リハに関わるプレイヤーは、主に以下の2種類に分類されます。

  1. 遠隔心リハのベンダー:遠隔心リハに必要なデバイスやアプリ、システムを開発・提供する企業です。これらの企業は、医療機関と連携し、遠隔心リハの普及に努めています。

  2. 遠隔心リハ実施者(病院):実際に遠隔心リハを提供する医療機関です。医師、看護師、理学療法士などの医療者が、患者の遠隔モニタリングや指導を行います。

これらのプレイヤーが連携することで、遠隔心リハの普及・発展が促進されます。

遠隔心リハのビジネスモデル

遠隔心リハのビジネスモデルには主に以下の2つがあります。

  1. BtoB(企業対医療機関)モデル:遠隔心リハシステムを開発し、医療機関に提供するモデル。遠隔心リハのベンダーが該当します。

  2. BtoC(企業対消費者)モデル:自社で遠隔心リハシステムを開発するか、上記のベンダーが開発したステムを利用し、直接患者に自費サービスとして提供するモデル。自費でのサービスを提供している医療機関や、一部の医療者が所属する民間企業が該当します。

企業紹介

遠隔心リハを提供するヘルスケア企業は多岐にわたります。 これらのサービスは、その特徴から大きく「システム提供」と「心リハサービス提供*」」の2カテゴリーに分類することができます。 それぞれ代表的な企業として、以下が挙げられます。

*ここでは心リハサービス提供=自社システムを活用し自社に所属する専門医療従事者による心リハサービス提供

株式会社CaTe

【カテゴリ】
システム提供
【事業内容】
株式会社CaTeは、IoT/AIを活用して医療の質を向上させることを目指しています。全ての人がテクノロジーの力でより良い医療を受けられる世界の実現を目指しており、医療・ITのエキスパートを有しています。また、心臓リハビリ治療用アプリの開発も行っており、心疾患患者の再入院・死亡リスクを低減することを目的としています。

https://cate.co.jp
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000074104.html
https://www.nikkei.com/compass/company/1p2r5e5dh8pVxq7HEDatQC

株式会社リモハブ

【カテゴリ】
システム提供
【事業内容】
株式会社リモハブは、遠隔医療をデザインする企業として、オンライン管理型の心臓リハビリシステムを開発しています。通院が必要だった心臓リハビリを在宅で、医療者の監視のもと安心安全に実施できる状態を作ることで、心疾患患者のQOL向上を実現しています。現在、遠隔リハビリ領域における日本初の治験を進めており、3~5年後にはより多くの患者に心臓リハビリを受けてもらえるようになることを目指しています。

https://www.remohab.com
https://osaka-startup.com/player/04
https://www.nikkei.com/compass/company/kbj2bdC93bAwUQ8X2cZc8H

株式会社サプリム

【カテゴリ】
システム提供・自費の心リハ提供
【事業内容】
株式会社サプリムは、心臓リハビリテーション指導士が提供する在宅での運動支援サービス「リカバル」を提供しています。このサービスは、心臓リハビリテーション指導士の資格を持った医療従事者が、心臓病の患者さんが体力を回復し自信を取り戻し、快適な家庭生活や社会生活に復帰することを目指しています。リカバルは、スマートウォッチを使い、心臓リハビリテーション指導師の資格を持った医療従事者が健康支援を行う、遠隔運動指導サービスです。また、心臓リハビリテーション指導師があなたの身体の状態や生活に合った運動プログラムを薦めてくれることもできます

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000102259.html
https://recoval.jp/

遠隔心リハベンダーでの主なポジション

セールス

医療機関への営業や提案活動を行います。具体的には、以下のような業務が含まれます。

  • 市場調査や戦略立案に基づき、重点顧客(KOL、大規模病院など)を開拓し、関係を構築する

  • 商談管理方法を構築し、営業活動の進捗を管理する

  • 営業資料(提案書、プレゼンテーション資料など)を作成する

  • 販売会社(代理店)への製品説明や販売トレーニングを実施する

セールスポジションにおいては、リハビリ機器やモニタリング機器を実際の業務で利用した経験があると、顧客との関係構築や販売提案の質を高められます。

マーケッター

市場調査やマーケティング戦略の立案・実行を担当します。具体的には、以下のような業務が含まれます。

  • 遠隔心リハ市場の動向を調査し、自社製品のポジショニングを明確にする

  • 製品の上市前後のマーケティング施策(広告、PR、イベントなど)を企画・実行する

  • 研究会や学会でのプロモーション活動を通じて、リード獲得や案件化を推進する

  • 販売後のカスタマーサポートを通じて、顧客ニーズを把握し、アップセルにつなげる

理学療法士の方々は、心臓リハビリテーションの現場で患者と直接関わっているため、その経験と知見は非常に貴重です。マーケッターとして、理学療法士の方々にインタビューを行い、現場のニーズや課題を把握することで、自社製品のポジショニングを明確にし、製品改善につなげることができます。

専門医療従事者

医療従事者としての知見を活かし、システム開発への臨床的助言や、利用医療機関へのコンサルテーションを行います。具体的には、以下のような業務が含まれます。

  • 自社の遠隔心リハシステムの開発に臨床的な観点からアドバイスを提供する

  • 利用医療機関に対し、遠隔心リハシステムの効果的な活用方法についてコンサルテーションを行う

  • 学会や研究会で自社システムを用いた臨床研究を発表し、エビデンス構築に貢献する

療法士から遠隔心リハベンダーへの転職アドバイス

病院で心臓リハビリテーションに携わる理学療法士の皆さんにとって、遠隔心リハベンダーやサービス提供者への転職は、キャリアの選択肢の一つとして考えられます。

心リハ現場や遠隔システムを活用した臨床経験があれば、大きなアドバンテージになります。システムの改善点や患者さんのニーズを現場目線で考案できると思います。

遠隔心リハベンダーやサービス提供者で働く醍醐味は、自分の臨床経験とITの知識を融合させ、医療とITの橋渡し役として活躍できることです。遠隔心リハの発展に貢献し、将来の心リハの在り方を変革していく過程に関われるのは、非常にやりがいのある仕事だと言えます。

また、遠隔心リハは比較的新しい分野であるため、エビデンスの構築が急務とされています。遠隔心リハベンダーやサービス提供者での働きを通じて、遠隔心リハの有効性を示すエビデンス生成に貢献できることも、大きなモチベーションになるでしょう。

療法士として培ってきた臨床知識を活かし、「通院が難しい患者」や「遠隔心リハを行いたい医療機関・医療従事者」に貢献したいとお考えの方は、ぜひを遠隔心リハベンダーやサービス提供者への転職を検討されてはいかがでしょうか。


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参考

*1:日本心臓リハビリテーション学会. (2023). 心血管疾患における遠隔リハビリテーションに関するステートメント

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