#23 多職種協働の上手な“効かせ方”
医療・介護の世界で仕事をしていれば必ず耳にする“多職種協働”。異なる専門職種が集まって、一人の患者さん・利用者さんの目標に向けてともに働くことです。多様な視点を取り入れることで、より良い医療やケアを提供することを狙いとしています。
医療も介護も、今は多職種によるチーム医療、チームケアが考え方の基本となっています。現場で扱う様々な書類も、多職種協働により作成することが法令で義務付けられていて、その重要性は広く認識されていると思います。
その一方で、多職種協働の具体的な進め方や、効果的な取り組み方法までは、まだ広く共有されていないように感じています。「多職種協働=多職種で意見を出し合う」のレベルで止まっており、せっかくの多職種協働が、イマイチ効いていない現場も多いのではないでしょうか。
そこで、チームが多職種協働をしたことによる恩恵を最大限受けるための工夫について考えたいと思います。
脱・多職種“意見交換会”
例えばデイサービスには個別機能訓練加算というものがあり、その計画書作成にあたっては多職種協働が求められていますが、果たしてどのくらいの割合のデイが、「多職種協働」の時間を作っているでしょうか。計画書作成者の欄に多職種それぞれの担当者印をポンポンポンと押して一丁上がりとしているデイも多いのではないでしょうか。
また、法令で求められているからと、極めて形式的な実施となっていることも多いでしょう。もちろんやってないよりは随分立派ですし、自分にはない視点を別の職員が示してくれることもあり、それなりに多職種協働の意味は見出せているかもしれません。
でも、それではもったいないのです。違う意見に触れて勉強になるかもしれませんが、それは単なる多職種意見交換会であり、効果的な多職種協働とは似て非なるものです。
デイサービスの場合、多職種協働で考えるのは、利用者の暮らしの質をどう上げるかという話ですので、まず、「人の暮らしを構成する要素とは何か?」や、「人の暮らしの表現方法」などの前提を揃えた上で話をしないと、結局多職種が各々の土俵で好き勝手意見を言う多職種意見交換会に終始し、利用者の暮らしを良くするための効果的な話し合いには至りません。
ICFで暮らしを語る。
その意味で、多職種は全員、ICFの考え方をベースに暮らしを捉え、対象者の今の暮らしをICFで整理したり考えたりできることが大変望ましいのです。
利用者の暮らしの質を上げるとは言っても、そもそも人の暮らしというのは大変複雑で、例えば、「右半身麻痺のために字が書けず、それによって復職できないでいる利用者の暮らしにどう介入するか?」を考える時、麻痺側上肢の機能訓練を実施するか(心身機能・構造)、字を書く訓練をするか(活動)、今の麻痺の状態で復職出来る先を探す(参加)か、介入にもパターンがありますし、その選択に当たっても自宅環境や人間関係(環境因子)、その人の考え方(個人因子)も考慮していく必要があります。
人の複雑な暮らしの全体像をとらえ、専門分野の違う職員同士が目標に向かって仕事していくためには、ICFという同じ土俵に立って人の暮らしを考えられることが必要です。ICFが多職種協働のスタートラインだと言えます。
加算の正しい理解と算定にも繋がる!
ICFで利用者の暮らしをとらえられるようになると、日々現場で算定している加算が利用者の暮らしのどの要素に位置付けられたものなのかも理解できます。
図はデイサービスで算定される加算ですが、このように理解できれば、「この加算は、利用者の暮らしのどの部分に働きかけることで評価されているのか?」も見えてきますし、こうして見ると全ての加算が利用者の暮らしの質向上に働きかける重要なものばかりで、現場における加算算定の必要性の理解にも繋がるかと思います。
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