専門職が教える”集団リハビリ”のやり方
こんにちは!理学療法士の「あらい」です。
通所介護(デイサービス/デイケア)における専門職ではない人に向けた運動指導のやり方についてコツとポイントをまとめました。
集団リハ、運動指導に自信がない…
どんな指導をしたらいいかわからない…
内容がマンネリ化していて利用者満足度が低い。効果が出せているかわからない…
運動指導の参考が欲しい…
現場スタッフでよく聞かれる悩みをまとめてみました。
1~4つの項目で実際に現場利用者さんのあの人、この人を思い浮かべながらやってみてください。きっと明日からの運動指導に今日より自信をもって行えるはずです!
①自立支援の理解 - 自立支援ってなんだ? -
「運動指導っていうくらいだからとりあえず運動しなきゃ!」この意識が強すぎる、もしくはプレッシャーになっている人が多いのではないかと思います。運動する理由についてよく考えてみてください、人それそれ違いますよね。一般的な人でも、ある人は健康のため、ある人はダイエットのためと皆”目的をもって運動している”ハズです。
通所介護の現場でも同じです。利用者さんの言葉に耳を傾けましょう。この人は何ができるようになりたいのか?何に困っているのか?その”ニーズ”を聞いてください。そしてその想いを基に運動指導を行えば、その瞬間から質は跳ね上がりますので!!
余談ですが「認知症の方のニーズって何ですか?」とよく聞かれます。
多くの場合認知症のある/なしに関わらず、その人の出来るようになりたいこと、困っていること(ニーズ)を”分かりやすい形”で言ってくれる人は少ないです。そのため「何を目標にしていいか分からない」「やりたいことがない」と思ってしまいます。利用者さん本人でさえ分かっていないケースも少なくないです。こういった場合”昔の話をする”もしくは”昔の写真をみせてもらう”のが有効です。自分自身の全盛期を語ってもらうことで見えてくるニーズがあります。仮に運動能力に問題ないケースであっても、孤独だったり、対人コミュニケーションを必要としていることもあります。
大切なのは認知症のある/なしに限らず、その人の人間性(過去も含めた)から今出来ていない事、困っていることを分析する”評価力”です。専門的な知識なんていりません。意識的に行うことで誰でもできるようになります。頑張ってみてください。
②集団指導の難しさ - 意味づけ -
①でニーズを聞き出してくださいと言いました。すると多くの方からこんな意見を頂きます。「集団だから1人に合わせられない」と…4~5人持っている病気も違えば、身体能力も違う、そんな相手にどんな運動をすればいいのか!?もっともな話ですね。
何人の集団を相手にするにしても、その中の1人のニーズに合った運動を提供してください。”その人に必要な運動は他の誰かにとっても必要な運動になり得る”から。今必要なくても今後必要になり得るからこそ、1人を除く他の人の”予防”になっていると考えてみてはいかがでしょうか?ほかにも一見すごく簡単な課題で、できる人にとっては退屈だろうなぁ…と思いつつもなんとかやってもらうことは、社会における対人関係の一端を担っている課題になり得ないでしょうか?”出来ない人に合わせることができる”という評価ができます。
このように何人の集団であっても提供している運動が、1人のニーズ+他多数の予防になっているぞ!というマインドがあれば何人を相手にしても自信を持って指導にあたれると思います。逆にこのマインドがないと不安だし、自信がなくなっちゃいますよね…でも大丈夫です。1人のニーズが拾えていて、この人の生活の質を上げるために何が必要か分析できていれば、提供する運動に間違いはないです。
③運動のレパートリー - コツ・ポイント -
②の延長で集団能力に差があるときの運動指導のポイントです。運動指導に種類はいらないです。必要なのは”1つの運動にどれだけ幅(レパートリー)を持っておけるか”です。ボール投げを例に考えてみましょう。
誰でもできるレベルはどこにあるのか?
→集団で両手を使用しボールを投げあうことはなんとかできる。
もっとできる人は課題のレベルを上げる。
→○○さんと○○さんは片手でやってみてくださいと提案する。
さらにできる場合はさらに挑戦してもらう。
→両足上げた状態で片手で回してみてください。
はじめは低いレベルから徐々に上げる方法です。出来る人だけに変化のレパートリーを持っておくだけで1つの課題の中で複数のリハビリ要素を持たせることが可能です。さらに言ってしまえば簡単な課題を難しくしていくことで、できる人にとっての達成感や満足感につながり、できない人にとってはできる人たちと集団での運動に混ざることができている達成感を得られる形になります。幅を持っていることで複数の運動を指導しなくても”変化が起こせる”のです。
集団の中で1つの課題を1人ずつ行う場合も同様です。
最初に提示した運動がそもそもその人には困難な場合。
→元の運動要素を含んだ似たような運動をその人に別途用意する。
出来る人は最初に提示した運動を行ってもらう。
一番よくないのは1つの課題を延々とやり続けることです。変化なき運動は思考停止を招き、そこに達成感や満足感が得られないどころか、その課題自体が目的になってしまう恐れがあります。
③は経験が全てです。ありきたりな運動を延々毎日指導するよりよっぽど頭は使いますが、それが面白さでもあると思います。何か変わりたいと思えるのなら、少しずつでもいいので取り入れてやってみてください。
④介助技術 - 過介助にならない介助 -
自立支援を促すにあたり1番重要といっても過言ではない介助技術についてです。”過介助が自立支援を阻む”慣れ不慣れに限らず”危険があってはならない”のマインドが強すぎて、その人がどこまでできるのか?わかっていないために”とりあえず過介助”になっていませんか?その人の生活環境を考えたとき、常に介助者がいますか?近年ではそうでないケースの方が多くなっているのではないでしょうか?一見過介助の方が安心するし、親切に見えます。ただしその人が自宅で独居であり、これからも出来る限りその生活を続けていきたいと願っているなら、この場合過介助は”正解ではない”と考えます。
自立支援を促していきたいなら、その利用者さんはどこまで出来るのか評価してください。とりあえず過介助が一番簡単です。その人を評価する必要もなく、どこまでできるか攻めて探す必要もない。しかしよく考えてください、その人と関われる時間はとても短く限りがあります。通所介護では1日3~7時間、その数時間をどう使えばデイに来ていない時間を充実して過ごせるだろうか?そう考えたら介助方法は自ずと過介助ではなくなると思います。全員とはいいません、自分の中でひいきしている人、合う人合わない人いますからね。まずは合う人の生活を見たときに自立支援をどうやったら促していけるか?こういうことを考えると介護の現場非常に面白いんじゃないかなって思いますので是非行ってみてください。
デイサービス向けコンサル教材で使用する内容の1部です。専門職に頼った運動指導の時代は終わりです。現場スタッフ”誰でもできる運動指導・集団リハビリで結果を出す”を自社の強みに変える。
YouTubeで解説も行っています。よかったら見てください。