熱と皮膚の関係
こんにちは!理学療法士の「あらい」です。
今回は皮膚と熱の関係について超重要な内容を、自論たっぷりですので参考までにお願いします。自分の体を知るうえで、他者の体を触れるうえで知っておきたいことを伝えていきたいと思います。
「熱」についての基本
平熱=深部熱(脇・口腔など)は平均36.5℃と言われており、日内変動はありますがほぼ一定に保たれます。これに対し表面温度は部位によっても大きく異なり、深部熱ほど一定ではない特徴があります。例えば、手のひらは平均温度は「28℃」と言われていますが、寒い日や冷え性の方は20℃を割っていたり、運動後や暑い日には30℃後半を超えてきたりと外部環境によっても変わってきます。
人間の体は温度を勝手に調節してくれる素晴らしい機能を持っていて、温度が上がれば発汗等で下げるように働き、温度が下がれば震えにより発熱を起こすこの一定に保とうとする働きを”恒常性(ホメオスタシス)”といいます。
皮膚の構造と熱の関係
皮膚は表皮・真皮・皮下組織に分けることが出来、特に真皮には温度を感知したり痛み感知する感覚センサー”受容器”が集中しています。構成成分は膠原繊維と呼ばれるコラーゲン(タンパク質)で、細胞1つ1つをこのコラーゲンがつなぎ合わせ支えています。皮下組織は脂肪組織と呼ばれ、保温や緩衝効果が主です。
このように皮膚の構成にはコラーゲンが必須であり、重要な役割を果たしています。コラーゲンは3本の鎖からなる”らせん構造”を呈しており、熱を加えるとこのらせん構造がほどけるようにできているのです。そして温度が下がると、再びらせんは結びつきを強める性質をもっています。
線維化を紐解くために必要なこと
生命活動による熱が常に産生されている、深部熱を持つ部分の皮膚は柔らかく動きやすいのはらせん構造が緩やかだからです。表面温度も通常一定の活動・運動を行っていれば、筋肉により熱を産生することができます。しかし活動量が乏しくなったり、不良姿勢などで特定の部分が動かなくなったりすると、その部分の熱産生乏しくなり温度が下がった状態になります。温度が下がった状態が慢性化すると、コラーゲンのらせん構造は結びつきをどんどん強めていき”線維化”と呼ばれる状態を呈します。線維化した部分は皮膚が動かなくなるのはもちろん、治癒の遅延や感覚の低下、痛覚過敏などが生じます。
では対策として、線維化した部分に「熱を与えればいい」ということでホットパックや温湿布などの温熱療法を用いたくなります。しかし温熱療法はこまめな冷却が難しいのが難点で、温め始めたらどんどん温度が上がってしまいます。線維化を紐解き元の弾性に富んだコラーゲンを取り戻すには、通常の熱刺激のように徐々に温度が上がったり”冷却したり”もまた重要な要素なのです。
お手当の真価
ではどうするか?いいものがあるじゃないですか!
徐々に温度を上げられて、こまめに冷却ができるものが!
そう!「手」です。
手は小さな筋肉が密集しているため熱が起こしやすく、冷ましやすいまさに「お手当」は最上の治療法なのです。しかし多くの場合ここのは誤解があります。手を当てているだけが「お手当」ではないことを、治療としての「お手当」のポイントを紹介していきます。
①体の熱は徐々に起こすもの”短時間”ではいけない
少しリハビリのアプローチの話をしておきましょう。あなたは患者さんの皮膚に触れるときどんなことを気を付けていますか?多くは”触り方”と答えるのではないでしょうか?もちろん不快を与えない触り方は重要です。では不快を与えない触り方をすれば、次の瞬間から動かしてもよいですか?答えは否ですね。患者さんの肌に触れた瞬間、相手に何が起きているか?線維化している場合触覚センサーの低下から、すぐに触れられたことが感知できない、温痛覚が過敏になっていて相手の手を異物として認識してしまう、これらのことが起こりうるわけです。大切なのは相手に自分の手を受容してもらうことから始めることです。それには短時間では難しいですね、長年気を付けてきて感覚的にできるレジェンドクラスの方々とは違います。相手の肌に触れて、”不快なく受容してもらって時間をかけて手で熱を創り出す”これを意識的に行ってみてください。きっと気にしている痛み、動きは変わります。結構精神力使いますので調整して使ってください。
自身の体に使う場合も同じ要領で、他者の手と違いすぐになじみます。ここで意識したいのは”とにかく熱に集中する”ことと”すぐに動かさない”ことです。たとえ自身の手であっても触れて受容して熱を送るまでは、タイムラグがあります。ですので呼吸は止めないように尚且つ、手全体をしっかり温めたいところにくっつけるということですね。試してみてください!
②動きを入れる
①だけでも効果は絶大ですが、広範囲巻き込んで動かしていきたい場合、少し動きを入れるのをススメます。ただしここで動きを入れるのは表皮だけです。熱もいきなり真皮→皮下組織には届かないので、表皮から徐々に深部へといった要領でやってみましょう。表皮と真皮を分けるコツは手に加える圧です。真皮に働きかけたいときは、少し圧を加えた動かし方を実践してみましょう。表皮が動いているか動いていないかの基準は、動かしたときの張り感や動かしにくさを参考にしてみてください。動きにくい場合はまだ圧を加えるべきでない状態と思って頂けたらいいと思います。
①,②を実践してみていかがですか?動かしていくとポイントポイントで動きが全然違うのが感知できるでしょうか?コラーゲンの結びつきが強くなっている部分とそうでない部分、意外と点在している印象ですね。慣れてきたら動きの中でどこが動かなくて、どこが動く、なら圧力もこことここで変えてー、といった形でできると思います。まずは大前提①をしっかり探っていくことも大切ですね。
まとめ
皮膚はコラーゲンのらせん構造でできている。らせん構造は熱によりほどけ、冷却により結びつきを強める。動かなかったり、活動量が低下すると線維化する。元に戻すには徐々に加熱と冷却を繰り返すことが大切。「お手当」の真価はこの調節が容易いところにあり、それにより弾性に富んだ状態への復元が可能である。
1つ前の記事、自律神経と呼吸のアプローチも同じ理論です。応用ができる部分なので是非理解し実践してみてください。 あらい