何療法(手技)でも良いんじゃないか?という話
リハビリテーション界隈では、〇〇法・〇〇療法といったものがあふれかえっています。
「どの方法・手技を勉強しようか」と迷われた方、何かを勉強しようとしたときに周りの療法士から「それは宗教っぽいから辞めておけ」「そんなことやっても良くならないよ」などと言われた経験、ありませんか?
世間では特定の療法や手技に傾倒することについて賛否があるようですが、私個人は何療法でも積極的に勉強すれば良いと考えています。
むしろ、どういった療法や手技を選ぶかよりも大切なことがあると考えています。
今回は〇〇法・〇〇療法といったものへの私自身の考えを書こうと思います。
注:今回テーマに挙げた〇〇法・〇〇療法はリハビリテーション分野で理学療法士等に用いられるものに限っており、医師の行う療法に関するものは対象としておりません。ご了承ください。
〇〇療法が多すぎる
現在、リハビリテーション業界では〇〇法・〇〇療法などと呼ばれるものがあふれかえっています。
いま思いつくだけでも、
ボバース概念、カバット法、ボイタ法、PNF、認知神経リハビリテーション(認知運動療法)、スパインダイナミクス療法、デルモニューロモジュレーティング、ヤンダアプローチ、AKA、SJF、ロルフィング、川平法、装具療法、モーターコントロールアプローチ、筋膜リリース…
などなど、いくらでも出てきます。(順不同)
加えて、最近ではヨガやピラティスなんかを取り入れている療法士の方も多いですね。
これだけ色々な理論や手技が存在する中で、何を選ぼうか、何なら良くできるのか、迷われた方は多いのではないでしょうか。
結局、何を選ぶべきか?
私自身、臨床経験は10年くらいになりましたが、これまで色々なものをそれなりに勉強してきました。
理学療法士として働き始めてから、まずはバイオメカニクスから入って装具療法を中心に取り入れるようになり、運動学習が必要だと考えるようになってからは脳科学を勉強して、現在では自身の考え方の中心となっている認知神経リハに出会いました。
その後も、徒手療法(スパインダイナミクス療法、SJF、DNMなど)の講習会に行ったり書籍を読むなどしています。
10年程度の経験で何を言うんだと怒られるかもしれませんが、現時点での私自身の結論として、選ぶものは何でも良いと考えています。
何を選ぶかより、どう適用するか
上に書いたように、何を選ぶものは何でも良いと考えています。
それよりも、患者さん・利用者さんに対してどのように適用するかということの方が大切だと考えています。
以前、ガイドラインとSDM(Shared Decision Making)に関する論文を紹介した記事でも書きましたが、患者さん・利用者さんと共同して方針を意思決定していくプロセスは非常に大切です。
この過程なく目標設定や方針の決定、用いる方法などについて決定していくのは、療法士側の独りよがりになる可能性があるばかりか、どんな療法・方法・理論を用いたとしても、無意味なものになる可能性があります。
人間はそれぞれ感情や考え方、主義や思想を持っています。
自身の身体に対する考え方や、リハビリテーションに対する考え方も人それぞれです。
「リハビリテーションはしてもらうもの」と受動的に考えている方に、自身の努力を要求するような方法を強要すると上手くいきません。
「リハビリテーションは動作を繰り返し行って練習するもの」と考えている方に、局所的な身体部位に対するアプローチばかり行っていては上手くいきません。
患者さん・利用者さん本人の考え方と療法士の提供するものが大きく異なった場合、クレームを受けたり、介入自体を断られてしまうことも少なくないでしょう。
これは双方にとって好ましくないことです。
療法士に求められるのは、何を選ぶかよりも、症状や状態を評価するのに加えて、患者さん・利用者さんの人となりを評価して、どのような介入が適切なのかを見極めることではないでしょうか。
療法士に求められること
以上のような観点から、療法士に求められることとして、次の3点を提案したいと思います。
■幅広い分野を勉強すること
■患者さん・利用者さんの考え方や好みを見抜く力
■患者さん・利用者さんと対話していく力
療法士は、患者さん・利用者さんの動作や行為の問題点を見抜くのは得意です。
そこで立ち止まらず、患者さん・利用者さんの考え方や好みについて考えてみてください。聞いてみてください。行動から読み取ってください。
きっと、その人にとって大切にしているもの、その人が求めているものが見つかるはずです。
それが明らかになったとき、我々療法士は求めているものを提供できるのか?
療法士が幅広い勉強をしなければならない理由は、ここにあると考えています。
特定の方法や理論について学ぶのは決して悪いことではありません。
先人が色々な知見を集めて体系化したもの、長い間残ってきたものには、必ず何らかの示唆があります。
しかし、それ一つに凝り固まってしまうのが一番良くないと考えています。
リハビリテーションは本来、患者さん・利用者さんが行うもので、我々療法士はそのサポート役でしかありません。
患者さん・利用者さんが本当に求めているものを提供できる療法士であり続けたいですね。
まとめ
〇〇療法や〇〇法と呼ばれるものについて、私自身の考えを書いてきました。
何を選ぶのかは何でも良いと考えていますし、特定のものを学ぶことは決して悪いことではありません。
しかし、もっと大切なのは患者さん・利用者さんが求めているものが何なのかを考え、聞き、受け止め、それに合った方法を選んで提供できることだと考えます。