第1編: **SSCとは何か?理論と基本メカニズム** 1.1 SSCの定義と役割 ストレッチ・ショートニング・サイクル(SSC)は、筋肉が伸張(エキセントリック)から保持(アイソメトリック)、そして短縮(コンセントリック)へと連続的に移行する筋活動のパターンです。特に歩行やランニング、ジャンプといった動作で、エネルギー効率を向上させるために重要です。SSCの本質は、筋肉や腱の弾性エネルギーを最大限に活用し、筋力の発揮を効率化することにあります。 1.2 SSCの3つの
1. はじめに被殻(ひかく)は、大脳基底核の一部であり、運動制御や学習、認知機能に関与する重要な脳の構造です。大脳基底核は運動の開始や調整を行うため、これらの部分が損傷すると、筋緊張の異常や運動の滑らかさが失われることが多く見られます。特に、被殻の損傷はパーキンソン病や脳卒中後の運動障害と関連があり、理学療法士が被殻の役割を理解することは、適切なリハビリテーションを行う上で欠かせません。 被殻は運動の「計画」と「調整」を担っており、その障害がもたらす症状は患者の日常生活に大
はじめに右心不全とは何か 右心不全は、右心室が十分に機能しなくなる状態を指します。心臓には4つの部屋(心房と心室)があり、右側の心室は体から戻ってきた血液を肺へ送り出す役割を担っています。右心不全が起こると、この機能が低下し、血液を効率的に肺へ送り出せなくなるため、血液が全身に滞留してしまいます。 一般的に心不全は、左心不全と右心不全に大別されますが、左心不全が進行して右心不全を引き起こす場合もあり、両者は密接に関わっています。右心不全の主な症状は、末梢浮腫や頸静脈の怒張
1. はじめに - 左心不全の基本的な定義 • 理学療法士が知るべき心不全患者の治療ニーズ • 日本と海外の医療現場における心不全の治療アプローチの違い 2. 左心不全の病態生理 - 左心不全とは何か:左心室の機能低下 • 症状のメカニズム:肺うっ血や呼吸困難の原因 • 左心不全と右心不全の違い • 海外と日本の文献から見た病態の理解の進展 3. 左心不全の診断と評価方法 - 海外で推奨される心エコーやMRIなど
1. 骨盤-大腿リズムとは 「骨盤-大腿リズム」(Pelvifemoral Rhythm)とは、骨盤と大腿骨が連動して動くメカニズムのことを指します。この概念は、特に歩行や立ち上がり動作など、下肢の動きが必要な日常生活動作やスポーツにおいて非常に重要です。骨盤と大腿の動きが適切に連携することで、効率的な運動とバランスが保たれ、関節や筋肉への負担を最小限に抑えることができます。 歴史的背景:骨盤-大腿リズムの研究の発展 骨盤-大腿リズムの概念は、比較的最近の研究で明らかにさ
フットコアシステム: 理学療法における最新アプローチ 1. フットコアシステムとは何か? フットコアの概念と誕生 フットコアシステムは、足部が全身のバランスや運動に果たす重要な役割に焦点を当てた新しい概念です。特に「フットコア(Foot Core)」という言葉は、体幹の重要性が広く認識されてきた中で、足部が同様に中心的な役割を果たすという考え方から発展しました。 このシステムは、足部を中心に、骨、筋肉、靭帯、神経の協調的な働きが、全身の安定性と動作効率に大きな影響を与
大腰筋は、理学療法士にとって体幹安定性や股関節屈曲に欠かせない重要な筋肉です。本記事では、大腰筋の解剖学的特徴や機能、さらにその機能不全が引き起こす問題について、日本と海外の文献を交えながら解説します。また、臨床における大腰筋の評価方法やリハビリテーションアプローチを紹介し、実践に役立つ知識を提供します。 1. 大腰筋の解剖学的特徴と役割大腰筋とは 大腰筋は、腰椎から股関節に至る筋肉で、腸骨筋とともに腸腰筋を形成します。主な機能は股関節の屈曲ですが、腰椎の安定化や姿勢維持