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精神疾患持ち、ついに転職初日を迎える

精神疾患を患っている僕は
そのことを隠し、昨年末、転職先の内定を勝ち取った。

僕の精神疾患についてはこちら↓


そして年が明け、初出社の日を迎える。
事前に人事部から頂いた資料には 服装:オフィスカジュアル
と記載してあったので、上は特にネクタイもせずワイシャツにセーター、下はユニクロで買った「感動パンツ」という人の感情を付加価値として勝手に創造し押し付けてくる系ズボンで向かった。
無論、『タイタニック』を見ても泣かない僕には響かない。

電車を乗り継ぎ、港区のアホでかいオフィス30階に到着するとすぐに人事の人から声をかけられ、その日入社する人たち用の会議室に通された。

会議室にはすでに何人か着席しており、どうやらここに集められた人達は今月入社の人たちのようだ。
さすが上場企業。中途採用でも一月で同期が7人もいる。
なお、そのほとんどが20代で30代は僕一人だった。

そして、ネクタイをしていないのも僕一人だった。

その場の全員が互いに初対面で、気まずい空気が流れる中、
動悸がしてきたことを隠すように、僕が沈黙をやぶる。

「あの、服装ってオフィスカジュアルで良いんですよね?」

すると、目の前に座っていた、どう見ても営業職で採用されたであろう
ツーブロック前髪ジェルアップくんが

「そうですね。けど、初出社ですし、念の為スーツできました」

とのこと。

他のメンバーにも軽く話を振ると、皆同様のことを口にした。

しまった。早くもビハインドである。

精神衛生を保つため、転職先ではなるべく目立たないように振る舞うつもりだったのだが、初日から格好で目立ってしまう羽目になった。

そしてそのまま会議室で社内の簡単なルールを教わり、
社員全員が出社しているオフィスエリアに通された。

同期7名、全社員の前で横一列で並ばされ、簡単な自己紹介と今年の抱負を発表することになった。

僕は知っている。

ここはウケを狙いに行く場では無いことを

こういうケースでウケを狙いに行って成功した試しがないのだ。
ということで、そのまま履歴書に書けそうなほどシンプルでありふれた自己紹介をしてその場をやり過ごした。

ちなみに、最後に発表した7人目はウケを狙いに行き、やっぱり滑っていた。
ふん、まだまだ青いな、青年よ。

そこからは研修として組織図を覚えたり、上司になる方と面談をしたりして一日目が終了した。

初日の感想はというと
仕事は楽しそうで、部署のみんなは優しいし、上司もすごく気を遣ってくれる方だ。オフィスも綺麗で駅直通。福利厚生もバッチリ。給料も前職より年間100万円以上アップしている。

結論、「無理そう。働けそうにない。」

なぜならば、これだけいい環境にも関わらず吐き気と動悸が止まらなかったからだ。体調不良が出てしまった自分が嫌になる。

ちなみに、一番キツかったことは、ランチに部署のメンバーと親睦を深めるためにカレー屋さんに行ったこと。
会食恐怖症の僕からしてみれば、地獄のような時間であった。
着席してすぐに出されたサラダのドレッシングに吐き気がし、出されたカレーについても世界史の資料集くらいでかいナンをなんとか烏龍茶で流し込み、半分食べたところで力尽きた。「ここ量多いですねー」と誤魔化しの一言を添えて。

解決策が見出せないまま自宅に帰り、ダメもとで両親に今日のことを伝えてみた。

すると父からこんな提案をされる。
「父さんの会社の産業医の先生が有名な人だから今すぐ見てもらえないか確認取ろうか?」

父はそこそこの規模のIT企業の経営者でいろんなところに顔がきく。

藁にもすがる思いでその提案に飛びついた。

「すぐにお願いします。そうでないとせっかく入社した会社を1日で辞めることになってしまいます。」

「わかった。直接先生に電話してみる。ただ、その病院、自費診療しかやってなくて、薬も院内で調合されたものを処方されて成分も教えてくれないみたいよ。」

はい???
そんな病院があるんですか?
まさか、こんなおじさんは出てこないよね?

ダイジョーブ博士

よく聞くと、精神疾患など難治性の病気の方が何年も治らず最後の砦として辿り着く病院らしい。

実際のHPにも「なかなか完治、寛解せず当院の診療にたどりつかれている患者が多い」的な記載がされている。また、診察費用の箇所に料金の目安2万円とも。

けど、僕の精神疾患も6年治ってないわけだし、ここは一縷の望みをかけて
この怪しい病院に突撃するしかない。

「父さん、それでもいいからすぐに予約をお願いします。」

覚悟は決まった。
その日、僕の口座から渋沢栄一が2人、消息を絶ったことを会社の人は知らない。

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