化学メーカーが、農業を志すとき
「YAYOI NŌKŌ PROJECT」をはじめるに至った背景について、代表取締役社長、二口真がご紹介します。
・でんぷんの原料は穀物です
・この街の将来のこと
・プロジェクトの3本柱
・ノウハウを活用できる、水耕栽培へ
・街の施設・資源の再活用も
でんぷんの原料は穀物です
こんにちは、代表を務める二口(ふたくち)です。
ヤヨイ化学の製造するでんぷん系接着剤は、食べ物である穀物を原料にして製造しています。世界的に食料供給の問題もあるなかで、農作物の一角を工業用に使用させてもらうということは大変重要なことですから、私たち自身が何かしら恩返しをしなくてはいけないという長年の想いがありました。
そこで、社内に向けて農業に関するアンケートも行い意見をヒアリングすると、なかには積極的な回答の社員もおりました。農作物を製品の原料として使っているからこそ、農業に貢献する。そのための農業への参入という道を、徐々に模索していきました。
この街の将来のこと
また、全国的に言われていることですが、私たちの地元富山県でも、大都市の人口集中による地方都市の働き手の減少という課題に直面しています。自分たちの暮らす地域経済の安定化を図るためには産業と雇用を生み出し、あらゆる人が地域に残って働くことができるための工夫が必要です。私たちが新規事業を始めることで、地域の課題解消に貢献できれば、これに勝るものはありません。
地域の課題とは、あらゆる側面でつながり合っており、すべてに対応できるものではありませんが、長期的な社会の変化を見据えて、今すぐに取り組み始めなければいけないと考え、「YAYOI NŌKŌ PROJECT」の構想を練り上げていきました。
プロジェクトの3本柱
「YAYOI NŌKŌ PROJECT」(ヤヨイ ノーコー プロジェクト)は、「1ファーム事業」「2エリア再生事業」「3雇用促進事業」の3つの柱からなる新規事業です。これら3つの事業を起こし融合させるプロジェクトで、人々にとって必要不可欠な農業事業へ進出します。
1.ファーム事業
”食料問題”、”食の安全”の社会課題への貢献。手段は、完全閉鎖型の制御された環境による水耕栽培法での果物・野菜作り。工業製品で培った、同じものを同じ品質で作る品質管理技術を応用し、高付加価値の果物・野菜の栽培を中心とした事業を目指す。
2.エリア再生事業
ファーム事業の水耕栽培技術を用い、新しい視点から耕作放棄地や公共施設等、地域に眠る既存資産の再活性化。
3.雇用促進事業
ファーム事業およびエリア再生事業就労による、持続可能型雇用の創出。
ノウハウを活用できる、水耕栽培へ
私たちはこれまで、同じ規格の製品を同じように作り続けるという考え方で製造業を行なってきましたので、このノウハウを活かせる農業としてまず浮かんだのは、水耕栽培でした。それも、完全屋内で生産管理を徹底するような方法です。この構想を練っているときに、ある展示会で出会ったのが、水耕栽培のメロンでした。
「メロンも作れるのか!」とインパクトがありましたし、構想と一致する部分がありました。完全屋内での水耕栽培は、外界との接触を制限することで病気の発生を減らすことができ、同じ環境を保つことで、路地栽培では生育の季節があるメロンのような作物を、年間を通して生産・販売することができる。それは、農作物の新しい需要の開拓という可能性にもつながります。
街の施設・資源の再活用も
また、別の切り口として、完全屋内での水耕栽培を検討したのは、やはり地域の課題解消と関係があります。私たちの地元では、人口の減少、特に子どもが減ってきたことで、さまざまな施設に空きが出ています。学校をはじめとする公共施設がその役割を終えて、どう存続するかという課題があるのです。そういう活用可能な資源を、私たちが目指す農業をベースとした活動で、再利用できるかもしれない。建物だけではなく、中山間地の耕作放棄地が増えていることもあります。こうした課題の一つひとつにアプローチする「新しい矢」として「YAYOI NŌKŌ PROJECT」を動かしていきたいのです。
工業と農業では、取り扱うものは全く異なりますが、アプローチする方法はそう遠くないと考えています。仮説を立てて実験し、データを収集・分析して、その分析を元に計画を立て、次につなげていくという手法は変わらないはずです。その考え方のもとで私たちは長年にわたり「ものづくり」を行なってきましたので、今回の水耕栽培でのメロン栽培にもこの方法で取り組んでいます。
このように、利点の一致と、農作物として新しい需要が見込める点から、メロン栽培をはじめることになりましたが、はじめての農業ですから、「ちゃんと実が実るだろうか?」という地点から出発しました。一歩一歩、美味しいメロンの安定した生産を目指しています。
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