大谷翔平選手の高校時代の曼荼羅チャートについて、ただ解像度を高めてみただけの記事
なんとなく、曼荼羅チャートを軸に取り留めのない思考を巡らせてみたもの(笑)。彼にとってこのフレームワークがどう機能したのかを考える事が、何かの役に立つのではないかと思いました。
作成プロセス (高校時代のチャート作成)
●目標設定とチャート構造: 大谷翔平選手は高校1年生のとき、中心に「8球団からのドラフト1位指名」という大きな目標を書き、その周囲を囲む8マスにその目標達成に必要な要素を書き出しました。この中心目標は当時としても非常に高い目標でしたが、それを具体的な要因に分解することで現実的な道筋を描いています。大谷選手が書き出した8つの要素は次の通りです:
体づくり: 筋力・体力の強化やコンディショニング
人間性: 人としての在り方(礼儀正しさや周囲への気遣いなど)
メンタル: 精神力・メンタル面の強化
コントロール: コントロール向上(制球力や四死球を減らすこと)
キレ: 球のキレ(ボールの切れ味や伸びなどピッチングの質)
スピード160キロ: 球速160km/hを出すこと(速球のスピード目標)
変化球: 多彩で質の高い変化球の習得
運: 運・ツキを味方につけること
これら8項目それぞれがさらに小さな課題(サブ目標)に分解され、計64の具体的行動プランがチャート上に整理されました(この9×9マスで構成されるシートはB型マンダラチャートとも呼ばれます)。チャート全体は曼荼羅のように中心から放射状に展開する構造で、目標→要素→具体策という階層になっています。
●思考プロセスと項目選定: 大谷選手の思考過程の特徴は、野球の技術面だけでなく人間的成長や習慣面まで含めて目標達成に必要だと考えた点です。例えば「8球団から1位指名」を得るには投手として卓越することが必要ですが、彼は単に球速や変化球など技術的課題だけでなく、「運」や「人間性」など一見野球と直接関係ない要素も挙げました。実際、チャートの「運」という項目には**「ゴミ拾い」や「道具を大切に使う」といった具体策が書かれており、日頃の行いで運を引き寄せようとする姿勢が表れています。また「人間性」や「メンタル」の項目では、「思いやりを持って礼儀正しく振る舞う」「本を読んで教養を高める」「常に前向きに考える」「部屋を清潔に保つ」など、人間として成長し健康でいるための行動も含めました。これらは野球選手としてだけでなく人間的にも一流になる**という大谷選手の理念が反映された項目選定と言えます。
●指導者やメソッドの影響: 大谷選手がこのチャートを作成するに至った背景には、指導者の助言と「原田メソッド」という目標達成手法の存在がありました。高校野球部の佐々木洋監督は、大谷選手在籍当時に教育者・原田隆史氏の提唱する原田メソッドを指導に部分的に取り入れており、大谷選手もその一環として目標設定シートを書いたとされています。原田メソッドには5つのツールがあり、その1つが**「オープンウインドウ64 (OW64)」と呼ばれる曼荼羅チャートに似たフォーマットです。実際、大谷選手の作成した9×9の目標シートはこのOW64そのもので、高校で原田メソッドを学んだ大谷選手は「自分が達成すべき8つの重要分野」をこのチャート上で特定しました。つまり、大谷選手の曼荼羅チャート作成は、佐々木監督から教えられた原田隆史氏の目標管理術**に強く影響を受けていたのです。原田氏自身も「大谷選手も原田メソッドを活用して目標設定を行っていた」と述べており、大谷選手のチャートは同メソッドの理論やフォーマットに沿って作成されています。
活用方法 (トレーニング・日常での活用)
●日常的な意識づけ: 大谷選手はこの曼荼羅チャートを単に作成しただけでなく、高校時代を通じて毎日「夢シート」を意識しながら生活していたと伝えられています。チャートに書かれた内容は彼の日課や習慣に落とし込まれ、常に目標達成に必要な行動を意識するための指針となりました。一般にマンダラチャートは見える所に常に貼っておくことが推奨されますが、大谷選手も自室の壁や手帳など日々目にする場所にこのシートを掲示し、いつでも自分の目標と必要な行動を再確認できるようにしていたと考えられます。常に目に入るようにすることで、書かれた目標を思い出し脳に刺激を与え続ける効果があります。
●具体的行動への落とし込み: チャート上の各項目は、そのまま実行すべき具体的なタスクや習慣として定義されていました。例えば「運」の項目にある「ゴミ拾い」「道具を大切に使う」は、毎日の練習後にグラウンドのゴミを拾う、バットやグローブを丁寧に手入れする、といった即実行できる行動です。同様に「人間性」の項目では挨拶や礼儀を欠かさず周囲に感謝する、身の回りを清潔に保つなど、人格面の習慣が設定されました。「メンタル」の項目ではネガティブな言葉を使わず常に前向きに考える、自主的に読書をして見識を広げる等、精神面を鍛える具体策が含まれています。また「体づくり」ではウエイトトレーニングや体重管理、「スピード160キロ」では筋力強化や投球フォームの改善、「コントロール」では的を絞った投球練習の反復といったように、それぞれ日々の練習メニューに組み込める課題が設定されていました(具体的な数値目標や頻度も盛り込まれていたと推測されます)。このようにチャート上の目標=日々のタスクとなるよう細分化されていたため、大谷選手は毎日の練習・生活の中で「今日はどのマスの行動を実践するか」を意識し、確実に行動に移していきました。例えば:
グラウンド整備やゴミ拾いをルーティン化し、運気を高める行動を習慣づける
毎朝全体に挨拶し、寮や自宅の掃除を行うことで規律正しい生活を維持する
練習ではキャッチボールやブルペンでコントロール向上メニュー(コース別投げ分け練習等)を実施する
ウエイトトレーニングや走り込みを計画的に行い、身体能力や球速アップに努める
本を読んだり日誌を付けたりしてメンタルトレーニングを欠かさない
このようにチャートの内容は日課に直結し、「今日はこれだけの練習をした」「この行動ができた」と毎日チェックできる仕組みになっていました。原田メソッドでは日誌をつけて日々の実践を記録・振り返ることも重視されますが、大谷選手も高校時代から自分の行動を振り返り、チャートの項目をどれだけ遂行できたか自己評価する習慣を持っていた可能性があります。こうしたPDCAサイクル的な実践と確認を繰り返すことで、チャートの内容が絵に描いた餅で終わらず行動に移され、目標への着実な前進が図られていました。
●継続的なモニタリングと修正: 大谷選手はチャートに書かれた目標や行動を定期的に見直し、必要に応じて修正していたと考えられます。マンダラチャートは何度書き直してもよく、見直す中で「この項目はもっとこうした方がいい」「この課題は変更しよう」と気づきを得て更新することができます。大谷選手もシーズンの節目や練習の結果を踏まえ、チャートの内容を微調整していた可能性があります。例えば、ある程度目標に近づいた項目についてハードルを上げたり、新たに見えた課題を追記するなど、チャートを“生きた文書”としてアップデートしながら活用していたでしょう。このように常にチャートと向き合い、日々または週ごとに達成度を振り返って調整することで、目標達成への道筋からブレずに進み続けることができたのです。
進化と更新 (時間経過による変化とプロ入り後の活用)
●高校卒業までの修正: 大谷選手は高校在学中、上述のチャートを自身の成長に合わせて発展させていきました。高校1年時に作成した当初のチャートでは「球速160km/h」「8球団からドラフト1位指名」といった目標を掲げましたが、その後高校3年生になる頃には実際に160km/h近い速球を投げ、ドラフトでも複数球団から1位指名を受けるまでに至りました。目標が達成に近づくにつれ、彼はチャート上の内容をより高度な目標に更新したり、新たな課題に置き換えたりしたと推測されます(例えば球速目標を更に上げる、変化球の精度向上に重点を移す、など)。ただし、高校時代のチャート自体は基本的に「ドラフト1位指名」をゴールとするもので、大谷選手はまずはその実現に全力を注いだため、大幅な目標の変更はなくブレない軸として機能していたと思われます。
●長期ビジョンの存在: 実は大谷選手は高校時代に、9×9の曼荼羅チャートとは別にキャリア全体の長期計画も書き出していました。彼の「人生設計ノート」には、18歳から42歳に至るまで年齢ごとの目標やイベントが列挙されており、高校卒業後の進路やプロ野球での目標が詳細に記されていたのです。その内容には、「メジャー挑戦」「〇年までにワールドシリーズ優勝」「〇歳でノーヒットノーラン達成」「〇歳で結婚・家族を持つ」等、プロ入り後の大きな目標が含まれていました。実際の記録によれば、大谷選手は二度のWシリーズ優勝(32歳と34歳で)や複数回のノーヒッター達成、さらには最終的な引退時期や家族計画に至るまで将来像を描いていたといいます。このように高校時代からプロ入り後を見据えたビジョンを持っていたことは注目に値します。原田メソッドでもチャート(OW64)と併せて長期目的・目標設定用紙を作成することになっており、長期的なシナリオ作りと具体行動の両輪で成果を出すとされています。大谷選手もまさに長期目標シートと曼荼羅チャートを組み合わせ、「将来の夢」と「いま成すべきこと」をリンクさせていたのでしょう。
●プロ入り後の目標設定への影響: 花巻東高校を卒業し日本ハムに入団した後も、大谷選手は自発的な目標管理と自己研鑽を継続しました。高校時代に身につけた曼荼羅チャート思考は、その後のキャリアでも生きています。原田隆史氏によれば、大谷選手は日本ハム入団後に球団の教育ディレクターから本格的に原田メソッドの指導を受け、引き続き目標設定と達成に取り組んだといいます。つまりプロの世界でも、彼は自分の課題を洗い出し紙に書いて整理する習慣を続けていたと考えられます。もっとも、具体的にプロ入り後も曼荼羅チャートそのものを書いていたかについて公表された情報はありません。しかし彼の言動や成長過程から推察すると、高校時代のチャートの内容を発展させた新たな目標(例えば「メジャーで二刀流成功」「年間MVP獲得」など)を掲げ、それに必要な要素(英語習得や体重増加、変化球の改良、打撃力向上など)をリスト化して取り組んでいた可能性は高いです。実際、大谷選手は日本ハム時代に投手としてだけでなく打者としても一流になることを目標とし、二刀流に必要な練習メニューを徹底して行いました。その裏には、高校時代に培った複数の課題を並行して達成していく計画力が活きていたといえるでしょう。
●現在への継承: 大谷選手が高校時代に作った曼荼羅チャートは、その後の彼のキャリア形成において精神的な羅針盤になったと思われます。プロ入り後は目標設定シートを公開することはありませんでしたが、チャートで養った習慣(定期的な目標確認・更新、自己分析)は現在でも彼の思考に根付いているはずです。例えばメジャー挑戦時には「メジャーで成功するための要素」を再度洗い出し、肉体改造やメンタル調整、スライダー改良など具体策を練ったことでしょう。加えて、高校時代にチャートへ盛り込んだ「人間性」「運」といった項目は、プロでも彼の人格面に現れています。実際に大谷選手はメジャーでも試合後にグラウンドのゴミ拾いをする、道具を大切に扱うなど、高校時代からの習慣を貫いており、その姿は現地でも称賛されています。これは高校時代に曼荼羅チャートで目標と向き合い、人としてどうあるべきかまで考え抜いた経験が、プロになってからも揺るがない信念として残っている証と言えるでしょう。つまり、チャートそのものを書くことは無くなっても**「曼荼羅チャート的な思考法」**が大谷選手の中に根付いており、状況の変化に応じて自分で目標を細分化し達成していくセルフマネジメント力として進化・継続しているのです。
心理的・哲学的側面 (チャート構造が与えた影響)
●考え方への影響: 曼荼羅チャートというフレームワークは、大谷選手の物事の捉え方や思考習慣に大きな影響を与えました。まず目標を「見える化」して細分化したことで、漠然と大きすぎる夢だったものが具体的な行動レベルまで落とし込まれ、心理的負担が軽減されたと考えられます。「8球団から1位指名」という一見途方もない目標も、「160キロの球速を出す」「制球力を上げる」「体を大きくする」など現実的な課題に分解されたことで、達成への道筋がはっきり見え、目標が手の届くものに感じられる効果がありました。この明確なロードマップは大谷選手に自信と集中力をもたらし、「何をすれば目標に近づけるのか」を常に意識させることで迷いを減らしたと推察できます。実際、チャート作成後の大谷選手は目標に向けて貪欲に努力を重ね、高校3年間で飛躍的な成長を遂げていますが、これは目標と現在地とのギャップを常に自覚し続けられたことが大きいでしょう。
●内省と自己成長: マンダラチャートは自分自身と対話するツールとも言われます。大谷選手もチャートを書く過程やそれを眺める時間を通じて、自分の強み・弱み、そして成長のために必要なことを深く考える機会を得ました。その構造上、8つの異なる観点から自分を見つめ直すため、視野が広がり偏りのない自己分析ができます。例えば「技術」「体力」だけでなく「メンタル」「人間性」「運」といった多面的な項目を設定したことで、全人格的な成長を目指すマインドセットが養われました。「野球が上手くなること」と「人として立派になること」を並列に扱ったチャートは、大谷選手に謙虚さと向上心のバランスをもたらしたと考えられます。チャートには「礼儀正しく」「思いやりを持つ」といった徳目も書かれていましたが、これは内面的な成熟を促し、どんな成功を収めても驕らず周囲への感謝を忘れない今の大谷選手の人格形成につながっています。また、目標達成において運や環境といった自分では左右しづらい要素まで意識したことは、「自分にコントロールできること(努力)とできないこと(運)を区別し、できることに全力を尽くす」という心理的スタンスを育んだでしょう。これはスポーツ心理学で言うところの課題志向的な考え方であり、大谷選手がプレッシャーの中でも淡々と自分のすべきことに集中できる秘訣だったかもしれません。
●モチベーションと自己効力感: 常にチャートを目にすることで得られる視覚的な刺激も、心理的効果として見逃せません。自分の夢やそれに紐づく行動項目が一枚に整理されている様子を見ると、「これだけのことをやれば夢に届くんだ」というポジティブな動機付けになります。チャートには達成すべき具体策がずらりと並んでいるため、一つ一つチェックを入れて消し込んでいくような感覚で小さな達成感を積み重ねることもできます。これは自己効力感(self-efficacy)の醸成につながり、「自分は目標に向けて前進している」「努力すれば計画通り結果が出せる」という自信を育てました。また、チャートの項目を実行できなかった場合でも定期的に振り返り改善策を練ることで、失敗や停滞を建設的に捉える習慣が身についたと考えられます。原田メソッドでは週単位・日単位での振り返りと行動修正が推奨されていますが、大谷選手もチャートを用いてトライ&エラーを繰り返す精神的タフさを培っていったでしょう。
●行動への影響と哲学: 曼荼羅チャートで掲げた目標・価値観は、大谷選手の行動規範そのものになりました。例えば「人間性」の項目に書いた内容は、前述の通りプロ入り後も彼が体現しています。チャート作成当初、それらはドラフト1位になるための手段と考えられていたかもしれませんが、いつしか彼自身の人格や信念へと昇華したと言えます。実際、今や大谷選手の「礼儀正しく謙虚な振る舞い」や「野球道具や周囲の人へのリスペクト」は世界中のファンに称賛される彼の魅力となっています。高校生の頃に曼荼羅チャートで目標と真正面から向き合い、自らを律する術を身につけたことが、競技面でも人格面でも一流である現在の大谷選手につながっているのかもしれません。この点に関して、一般社団法人マンダラチャート協会の松村剛志氏も「マンダラチャートで目標と向き合う中で視野が広がり、新たなアイデアや気づきが生まれる可能性がある」と指摘しています。大谷選手のケースはまさに、目標達成のプロセスで人間的成長までも果たした好例であり、「目標達成のために自分を高める」という哲学的な姿勢を若くして確立したことが伺えます。
他のアスリートやビジネスリーダーとの比較
●他の成功者による曼荼羅チャートの活用例: 大谷選手の目標達成シート(曼荼羅チャート)は彼自身の成功によって有名になりましたが、同様の手法を活用する例は他分野にも存在します。まずスポーツ界では、大谷選手の高校の先輩である菊池雄星投手(現・MLB)も在学当時に原田メソッドの指導を受けており、目標管理シートを活用していたと伝えられます。また、日本発祥のこの「マンダラート」はビジネス分野にも取り入れられており、ユニクロやキリンビールなどの企業のマネージャーが社員育成や目標管理に原田メソッド(OW64を含む)を活用してきた実績があります。実際、原田氏は過去20年間で9万人以上のビジネスパーソンにこの手法を指導してきたとされ、多くの企業で社員の目標設定や課題解決のフレームワークとして曼荼羅チャートが応用されています。また芸術・クリエイティブ分野でも、アイデア発想法の一種としてマンダラチャート(マンダラート)のテンプレートが使われることがあります。たとえば、漫画『ドラえもん』のひみつ道具一覧表がマンダラート式に作られていることや、商品開発のブレインストーミングで中心にコンセプト、周囲に要素を書き出すなどの手法は古くから知られています。このように、分野を問わず目標や課題を体系立てて整理したい場面でマンダラチャートは広く利用されているのです。ただし、大谷選手のように明確に紙に書いて日々実践している具体例は彼ほど有名ではなく、多くの場合は「頭の中でイメージしている」「ホワイトボードで分解している」程度かもしれません。
●他の目標設定手法との比較: 成功者たちは様々な方法で目標設定・管理を行っていますが、マンダラチャートには他手法にないユニークな強みがあります。一つは**「漏れなくダブりなく」目標達成に必要な要素を洗い出せることです。人は目標を考えるとき、普通はせいぜい3~4個の要素しか思い浮かばないものですが、マンダラチャートは強制的に8つのマスを埋める構造のため「他に何が必要か?」と発想を拡げる動機になります。この結果、大谷選手の例のように技術・フィジカル面以外の「人間性」や「運」まで含めた包括的プランが立てられ、目標達成に必要なピースの抜け漏れを防ぐことができます。対して、一般的な目標設定手法として知られるSMART目標**(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)は各目標自体の質を高めるフレームですが、一度に扱う目標は単発であることが多く、マンダラチャートほど目標間のバランスや関連性に目を向けることはありません。その点、マンダラチャートは中心の大目標とサブ目標群との全体像を一枚で俯瞰できるため、どの分野にどれだけ力を割くべきか配分を考えたり、物事を体系的に捉えたりするのに優れています。またビジネスで用いられるOKR(Objective and Key Results)やバランストスコアカードとも比較できます。OKRは大胆なObjectiveと検証可能なKey Resultsを設定しますが、やはり単一路線の目標に紐づく成果指標が中心です。一方バランストスコアカードは「財務・顧客・業務プロセス・学習成長」の4観点で企業目標を設定する点でマンダラチャートと発想が近く、複数の視点で目標を管理する強みがあります。とはいえ、バランストスコアカードは主に企業業績向上のためのフレームであり、個人の成長や習慣レベルまで掘り下げることは想定されていません。大谷選手の曼荼羅チャートの強みは、個人の内面的な成長要素(人間性やメンタル)から技能習得、運や環境といった要因まで網羅的に盛り込める柔軟性にあります。さらに図示することで直感的に理解・共有しやすく、チームで用いればメンバー間で目標観や課題認識をすり合わせる効果も期待できます。
●マンダラチャートの弱み・留意点: もっとも、マンダラチャートにも注意すべき点や弱みはあります。まず、項目を8つ埋めることに拘りすぎると、重要でない要素まで無理に挙げてしまうリスクがあります。Parasapoの解説でも「無理に全てのマスを一度に埋める必要はない」とされており、空欄があっても後から思いついた時に埋めればよいとしています。大谷選手のように明確なビジョンがある場合は8項目出すのは有効ですが、そうでない場合は質の低い要素を書き出してしまい焦点がぼやける可能性があります。このため、チャート作成時にはブレインストーミング的な発想フェーズ(できるだけ多く書き出す)と取捨選択のフェーズを分け、必要な項目を見極める工夫が必要でしょう。また、マンダラチャートは書いただけで満足してしまう危険もあります。きれいに目標を整理する作業に達成感を覚えて終わってしまい、肝心の行動に移さなければ意味がありません。実際、原田メソッドの開発者・原田氏も「OW64(チャート)だけ作成しても十分な効果があるとはいえない」と述べており、チャートは実行とセットで初めて価値を持つと強調しています。大谷選手が成果を出せたのは、チャートに書いた内容を愚直なまでに日々実践したからであり、そうした自己管理能力や継続力が伴わなければチャートも机上の空論になりかねません。さらに、マンダラチャートは一人で完結できる反面、メンターや第三者のフィードバックが得られにくいという面もあります。他の手法(例えばコーチとの面談で目標設定する方法等)では外部からの視点が入りますが、マンダラチャートは基本的に自分の内省で項目を決めます。そのため、思い込みや見落としが入る余地もあり、必要に応じて信頼できる指導者にチャート内容を見てもらったり、議論したりすることも有益でしょう。
●総合評価: 大谷翔平選手が高校時代に活用した曼荼羅チャートは、目標達成手法として非常にバランスが取れており効果的だったことが彼の歩みから伺えます。他の多くの成功者もそれぞれの方法で目標を追いかけていますが、大谷選手のように徹底して可視化・細分化し実行した例は希有です。彼の場合、マンダラチャートというツールと自身の強い意志が見事に噛み合い、若くして結果を出すことに繋がりました。一方で、この手法自体はスポーツに限らずビジネスや日常生活の目標設定にも応用可能であり、上手く使えば誰にとっても**「夢を計画に変える」**強力なフレームワークになり得ます。大谷選手の成功は、マンダラチャートの有用性を世に示すとともに、目標に向き合う姿勢の大切さを我々に教えてくれていると言えるでしょう。彼が15歳で描いた未来図は、その後の努力とともに現実のものとなり、24歳時点で「最初のチャートに書いた内容を超える大きな成果を収めている」と報じられています。この事実こそ、曼荼羅チャートをはじめとする体系的な目標設定と愚直な実行の威力を物語っています。大谷選手のケースを参考に、他のアスリートやビジネスリーダー達も自身の目標達成のためにマンダラチャート的手法を取り入れ始めており、それぞれの分野で新たな成功例が生まれつつあります。今後もこの手法は進化し続け、人々の夢の実現を後押しすることでしょう。