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魔法少女は映画を作りたい 1


「映画を作るわよ!」
「何言ってんですか先輩。映画より魔法少女としての役目を果たしてくださいよ」
 呆れたような声で言ったブルーに対し、レッドは不満げな顔で地面を何度も蹴っては幼児がやるような地団駄を披露する。
「うるさい! もう魔法少女は時代遅れなのよ! 流行の最先端は魔法で映画を作ることなの!」
「頭ぱっぱらぱーが考えた流行の最先端なんて信じられないんですけど……」
「誰が頭ぱっぱらぱーよ! ブルー貴女後輩の癖に生意気なのよ!!」
「はぁ、すんません」
「全く。しょうがない後輩ね! というわけで映画作るわよ!」
「いや意味わかんないっす。……何で映画なんすか?」
 ブルーの声にレッドが嬉々として懐から取り出したスマホを見せた。
「魔法を使って空を飛んだ映像をイエローが動画にして投稿したらバズったのよ! ただ空を飛ぶってだけでこうなら、私達が魔法少女になった経緯をノンフィクション映画にして投稿したら流行ると思わない!?」
「いや自爆芸で草」
「くさ?」
 首を傾けたレッドにブルーは面倒そうな声を出す。
「うちらが魔法少女になった理由について動画投稿したらあっという間に特定されてアウトっすよ、先輩」
「経緯見たぐらいで特定なんてされるわけないでしょ。バカねぇ!」
「いや、特定班を舐めたらヤバイっすよ。ただでさえうちらが魔法少女として戦ってるとこの生活圏内を調べられて、そこの学生だってバレかかってんのに……」
「うっ……まあ、それはそうね。ストーカーなんて出来たら嫌よね。なら魔法をたくさん使ったフィクション映画はどうかしら?」
「例えばどんなのっすか?」
「もちろん魔法をふんだんに使った童話を実写映画みたいにやるのよ! シンデレラとかどうかしら!?」
 赤色が基調となったリボンの多いロリータ系の衣装を身につけているレッドだが、その気の強さから悪役令嬢みを感じるブルー。
 シンデレラをやるのなら、意地悪な継母か義理姉が合っているのではとだと密かに考える。
「もともとはノンフィクションをやりたいから映画を作ろうとしたんすよね? イエロー先輩みたいにバズらせるのが目的なら単純に魔法を使った所を動画にすればいい話なんじゃ……」
「それは分かってるけど! なんかイエローの真似したみたいでムカつくのよね! 私が流行の最先端になりたいのに! イエローが先は嫌なの!!」
「はぁ……」
「それと魔法少女ランキングで最下位なのよ私が! レッドなのに!!」
「それは先輩の気の強さのせいでは?」
「うるさい! うるさいうるさいうるさいぃ!! とにかく私の言うとおりに動きなさいよ後輩なんだから!! 映画はやります! シナリオは考えてくるからまた今度やるわよ!」
「はぁ……」
 気が乗らないブルーは、面倒なことに巻き込まれたなとため息を吐いたのだった。


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