【ホラー・コント】ゾンビが押し寄せる
テレビからニュースが流れている。
ニュースキャスター「それでは速報です。今日未明にゾンビが押し寄せるでしょう。一刻も早くゾンビから逃げ、避難するようお願いいたします。身を守る方法がありましたら、すぐに実行して下さい。繰り返しお伝えします……。今日未明ゾンビが……」
押し寄せる!
大内サトルはテレビから流れるニュースを呆気に取られながらも、驚愕の様相で見ていた。
冗談のようで冗談じゃない出来事だった。
もうこれは一大事だ!こんな経験は人類史上初めてだから、そりゃ皆戸惑う、と言うよりどうしたらいいか分からないって。僕はまずゾンビマニアのタクローに電話した。
タクローはゾンビマニアでゾンビ映画もほぼ観ているし、生き延びる方法を知っているはずだ、早速聞いてみることにした。
電話のコール
ボソッ
タクロー「はい、もしもし?サトル?」
サトル「うん、そう。テレビのニュース見た?ゾンビが押し寄せるって言ってたんだけどお前信じる?」
タクロー「ああ、もちろん信じるよ、いつかこういう日が来るだろうと思っていたよ。そのための準備もしてきたしな」
サトル「……そっ、そうかお前らしいよ、それで、どうすればいいんだ?」
タクロー「まずゾンビがいつ現れるかなんだが、ニュースでは未明って言ってたよな。俺の推測では夜明けだ。つまり夜明けのゾンビならロメロ系のゾンビだ」
サトル「えっ………。」
タクロー「だから動きはきっと遅いんだ、それならまだ勝機があるんだ。これが走るゾンビならやばかったな」
サトル「ちょっと待て!夜明けのゾンビのリメイク版ならゾンビは走るぞ!なんでロメロのゾンビだと分かるんだ?」
タクロー「勘だよ!確かにザックスナイダー版のゾンビは走るけど、押し寄せる最初のゾンビはやっぱり動きが遅いんだ、いや遅くなきゃ駄目なんだ!」
サトル「おいおい、それはお前の映画に対するリスペクトと願望だろ?どこまでマニアックなんだよお前は!現実的な話しをしているんだ」
タクロー「現実的さ、いきなり登場したゾンビが走ったら皆戸惑うだろ?だから最初はノロノロゾンビだよきっと…」
サトル「分かった、お前がそこまで言うなら信じるよ。で、そのノロノロゾンビのロメロ系ゾンビが現れたらどうすればいい?」
タクロー「ゾンビの定義はな、ゾンビは頭部破壊すれば動きは停止する、だから頭部を破壊できる武器を用意しろ、銃があればいいんだかなここは日本だ代用品としは、ハンマーや木製バッドなんかだ、あとはチェーンソーで切断すればいい」
サトル「ちょっ、いきなりゾンビと戦うのかよ、噛まれたらゾンビになるんだぞ!俺はゾンビになんかなりなくはない!」
タクロー「そこは考えるさ、重要なのは何処に隠れるかだ」
サトル「まさかモールとか言うんじゃないだろうな」
タクロー「ふふふっ、この街にはイオンモールしかないからな、あそこはヤバい、きっと皆が押し寄せるし、略奪者共から乗っ取られて滅茶苦茶にされるさ」
サトル「それ、映画の見過ぎや!トム・サヴィーニなんか出てこんぞ!それになヘリコプターなんかないし操縦できんわ!」
タクロー「俺が考えているのはな、籠城や!家をバリケードで塞いでゾンビと戦うんや」
サトル「それって、ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド!」
タクロー「そうや!原点にして原点!生き延びるにはなこれしかない」
サトル「でもな、あの映画の最後って誤射されて死ぬんだぞ!」
タクロー「心配すんな、撃たれないように、マジックペンで俺は人間だと顔に書いておけ」
サトル「そんな事したら、かえって標的にされそうだな」
タクロー「大丈夫さ、そんな事よりも電話も不通になるぞ、皆が使うからな、これからはトランシーバーで対応する。無線ってのは世界が崩壊しても使えるからな」
サトル「よし分かった!じゃ、どこで待ちあわせすればいい?」
タクロー「イオンモールだ」
サトル「結局モールかよっ!」
タクロー「じゃとりあえずよ、俺んち来い」
サトル「ほんとに行くぞ」
タクロー「待ってるぜ!完全防備で来いよ」
ガチャん(電話を切る音)
サトル「切りやがった、ったくもう〜!」
ゾンビ発生予測のニュースが流れ、信じる者、そうでない者、ニュースを見ていない者、バカバカしいと相手にしない者、様々だった。
トレンド1位に「ゾンビ」が浮上し、話題となった。今日は4月1日のエイプリルフールではないし、本当に死者が甦りを果たすかもしれない。
そして運命の時は来た!タクローの言う通り夜が明け、明け方になり、ゾンビ発生の時は来るはずだった。
しかし、タクローの予想とニュースの報道とは裏腹にゾンビは発生しなかった。良かったのか、悪かったのか2人の気持ちは複雑だった。
サトル「おいタクロー!」
タクロー「何や」
サトル「ゾンビ出へんかったな」
タクロー「あたりまえや!んなもん出てたまるかアホっ!」
サトル「そんな、怒らんでもええやん、さっきまであんなに張りきってたやないか!せめて一体だけでも出たらオモロかったのにな」
タクロー「なんやて、んなもんオモローないわ!」
サトル「それにしてもがっかりやわ〜」
タクロー「実を言うとなワイも一緒や、わしの心のトキメキどないしてくれるんや!」
サトル「つぅかな、なんでそんな急に怒り出すんや!」
タクロー「知らんわ!こんな展開になるからやろ!ホンマにもう、どないしてくれんねん!」
サトル「じゃ2人でゾンビごっこでもしようか?」
タクロー「アホっ!せーへんわ」
サトル「そう言わず、心のトキメキ戻るかもしれへんぞ!」
タクロー「戻るか!アホっ!」
「何でワシが、んな事せなあかんのや!」
サトル「よし決定!やろやろ」
タクロー「せ〜へんてほんまに」
サトル「あ〜〜あ〜〜、ほらゾンビ来たぞ!」
タクロー「やめろて!」
サトル「なんや、ホントはしたいくせに!」
タクロー「せーへん言うーたやろ!」
サトルはゾンビに化けて両手を前に突き出し、タクローに襲いかかろうとする。
タクロー「仕方ねーなー、これでも喰え!」
タクローは手で銃を撃つ真似事をした。
サトル「あ〜あ〜、」
なかなか死なない
サトルゾンビはタクローに噛み付いた
タクロー「うわ〜噛みつかれた」
「くっそ〜俺もゾンビになっちまう!俺の最後はゾンビに噛まれ、ゾンビになって終わるのか〜俺の、俺の人生の夢が実現できずに全てが終わる…ううっ」
するとサトルは銃の真似事をしてタクローめがけて撃った
サトル「バンっ!」
「夢で終わらせない」
タクロー「それはバイオハザードやろ!」