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ヒッチキャッチャー


この街の一角にある租界。様々な人種が入り混じり、この街を出入りしている。この界は犯罪の巣窟だ。お決まりの麻薬、ドラッグ、合法麻薬、非合法は横行し、それを運び屋が持ち込んでくる。さらに人身売買、売春、未成年、強姦、強盗、殺人、詐欺と頻繁するそれら達…、そんなゴミ共が寄って集って群れをなす。

ここは隔離された街でもある、ここへ来るには峠道を通り、トンネルを抜け、険しい山道を通らなければ辿りつけない。ここを抜けるには交通網を使うか、車で来るしかない。
つまり出る時もそうだ。この街へ来て一文無しになった奴はヒッチハイクをして帰る者もいるが、絶対に乗せてはダメだ、この街からヒッチで帰る奴はかなり危険な人物だ。途中の山道でドライバーは殺され車を奪われて終わりだ。

だが、俺はヒッチハイカーを乗せる。
相手が誰であろうとな。

そんな俺を皆はこう言呼ぶ、

ヒッチキャッチャーと、、。



鱗雲が夕焼けに染まる頃、俺は一人のヒッチハイカーを乗せた。
親指を水平に突き出し、映画やドラマで見るようなあの感じだ。

「どこまでだ…?」

女は小声で「隣町まで…」とささやく。

「いいぜ、乗んなっ…」

相手の女は、俺の車の助手席に乗ってきた。
身なりはいかにもバックパッカーでリュックサックを背負っている。

アクセルを吹かし、車を走らせる。

俺「お前さん、どっから来たんだ?」
相手「質問はなし…」

「まあ、そう言うなよ」

「………、天国よ」
「プッ(笑)…つまりお前さんは天国から地獄へ来て帰るわけだ」
「…………ええそえよ」
「面白ぇ〜」
俺「あんた名前は?」
相手「………天使」
俺「悪魔だ、よろしく」

相手「…煙草ある?」
「ああ…ほらよ」
女はたばこを一本取ると俺はライターで火をつけ、女は顔を近づけ煙草に火を移した。

「教えてくれたっていいじゃねぇか、ただで隣町まで送ってやるんだからよ…」

「ふ〜〜(煙草をふかす女)」

「この街のボス、ガンダイを知ってる?」
「ああ、あの悪名高い人身売買組織のボスのガンダイだろ?」
「ええ、私ね奴の愛人だったの」
「ほう…」
「私ね〜、アイツの子供を産んだの」
「………」
「でもあいつは子供を引き取ると言ってきたの、冗談じゃないわ…、私は子供を連れて逃げたんだけど、今日あいつから呼び出されて来たんだけど…子供を渡せと言ってきた、、もし渡さないと殺すと脅しをかけてきた……」

「だから持っていた銃でその土手っ腹に撃ち込んでやったわ」
「マジかよ…よく逃げられたな」
「ええ、なんとかね」
「でももし俺がガンダイの手下だったらどうすんだ?」
「それ冗談でしょ」
「………」
「だったら」
「その時はあんたを殺るだけよ
、あいつを始末したこの銃でね」

「それで解決したのか?」

「解決はしない…」

「あいつのせいでこれまでどれだけの人間が犠牲になったことか…」

「この地獄から抜け出ても本当の地獄はこれから待ってるぞ、奴の手下らがアンタを探しにくる」

「大丈夫よ、もうこの街へ戻ることはないから、、、子供と一緒に海外で暮らすの、もう準備は整っている」

「それはどうかな、この先で奴の手下らが待ち構えてるぞ…」
「えっ?!」
「きっと殺される」
「いったいどうすれば…、それであなたはどうするの?」

「ああ、任せておきな…」

ドライバーはパトランプをルーフに付け点灯させ、サイレンを鳴らし警察車両に見立て走行させた。

「もうすぐ隣町だ、追っ手は来ないだろう」

「事情を話して良かったわ、でなきゃ今頃は…」

「あ、あなたはいったい?」

「俺か…実はなプロの逃がし屋だ、あんたがガンダイを殺ったのは知っていた、そしてそのリュックサックには奴から奪った大金が入ってるのもね…」

「なるほどね〜、上手く逃がして報酬を頂くわけね」

「どうして私がヒッチハイクすると分かったの?」

「交通網、列車やバスは降車場所に手下が張り付いている。タクシーを使うのもバレる、だとすればヒッチハイカーに化ければ気づかれない、それに女のヒッチハイカーは男より乗れる確率が高いんだ」

「そしてあんたはガンダイの愛人なんかじゃない、殺し屋のミア、暗殺一課のメンバーの一人だ」

「フフッ…バレたらしょうがないわね、だけどこの金は渡せないわ」

「このお金は売買された被害者に渡すもの」

「知ってるさ、あんたのその高額なギャラから請求させてもらうぜ」

「抜け目ないわね」

「お互い様さ…」


俺はプロの逃がし屋、いやヒッチキャッチャー?だっけ。どんな手を使ってでも逃がし、ガッポり報酬をもらう、それが俺の仕事さ…。



         了 















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