剣神#2
悟丸と流木矢の2人は、護衛する藩主の白鳥家に挨拶を済ませ、宿入りした。
2人が護衛する娘の家は、大名・白鳥家の娘だった。
流木矢「さすがは大名一家の接待は豪華だな、旨いめし、美味い酒」
悟丸「おいおい、相変わらずだな、遊びに来たんじゃないんだぞ」
男「失礼します」
襖の奥から男の声で呼びかけられる
悟丸「はい、どなたで…」
男「拙者、白鳥家の使いの者でございますが、明日の巳の刻に迎えにあがります、藩主の白鳥泰蔵がお会いしたいと申しております。」
悟丸は襖を開けて返事をした
悟丸「承知した」
「その時、藩主・泰蔵殿の娘、百合恵様と対面していただき、そのまま首都の大京へ向け出発いたしますので、よろしゅうお願いいたします」
会釈する悟丸
流木矢「ところでその…、娘のゆりえ様ってどんなお人?」
男「ええ、別嬪でございますよ、世話人の私は、ゆりえ様が嫁いでしまうのは、寂しゅうございます…」
悟丸「そうであったか、それは寂しかろうに…」
男「それでは私はこれで失礼します、明朝の卯の刻にお迎えにあがります」
悟丸「よろしくお頼もうす…」
去っていく使用人
流木矢「…これは大変な旅になりそうだな…」
悟丸「流木矢、今日はたっぷり寝て、明日に備えよう」
流木矢「だな、ゆっくり寝させてもらいますか」
卯の刻、大名・藩主、白鳥家に到着する悟丸と流木矢
藩主・泰蔵「よくぞ、参った。首都大京までは長い道のり、嫁入り娘の護衛よろしく頼むぞよ」
悟丸「はい、大京までは長旅ではございますが、御息女の身の安全は我々にお任せを…」
泰蔵「うむ、期待しておるぞ」
「おい、百合恵挨拶なさい」
白鳥家の泰蔵の娘・百合恵登場
百合恵「これから、お世話になります、百合恵と申します、よろしくお願いいたします…」
剣神と流木矢は会釈する
2人のもとへ体格のいい男が近寄ってくる。
豪太義「俺は豪太義、お嬢様の親衛大将を努めているものだ、お前たち2人と、百合恵様、馬車係の2人オウブ、サタロウとわしを入れて6人で大京まで旅をする、3日間で到着するはずだ」
「途中で、馬車、馬、人の配置はその都度変えていく、最初はわしが先頭し、その後に馬車、最後尾はお前たち二人だ、よいな」
悟丸「分かりました」
悟丸、流木矢、百合恵、豪太義、黄武、佐太郎の6人旅。
百合恵は父、母、兄弟たちと言葉を交わし、母と兄弟は号泣で皆、涙を浮かべていた。
家来たちも皆、そうであった。
両親や兄弟のいない剣神と流木矢は、その光景をじっと眺めていた。様々な想いが双方、駆け巡っていたが、自分たちの役割りと重要性がどれほど重大であるかは、二人は暗黙の了解で察していたのである。
豪太義「では出発だ!」
「 百合恵! 百合恵様! 」
皆は万感な思いで百合恵を見送るのであった。
百合恵「みんな、本当に、ありがとう!」
百合恵も涙を拭いながら、それに応えるのであった。
馬車のあとを追うように悟丸と流木矢は2頭の馬で進行した。
いよいよ、悟丸、流木矢の護衛の旅が始まった。
剣手として、護衛するのは当然ではあるのだが、この先何が待ち受けているのかは、誰にも分からない。
だが人は、その分からないもののために、生きていかねばならないのである。
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