学会とは何か?|本当に学会から追放される人とは
知的探究心は奪えない
魚豊氏原作の漫画『チ。−地球の運動について−』がアニメ化され、放映中です。
架空の「P王国」を舞台に、「C教」の教えと相容れない地動説に魅入られた人々が、命をかけて異端の研究に身を捧げる様子を描いたフィクション作品。
人から知的探求心を奪うことはできない、というのが一つのテーマです。
とても残酷で、おもしろい作品です。
チ。の舞台は、宗教と政治が不可分の社会。
そのために地動説が排斥されるのですが、現代社会においては、“異端的な研究”を行ったために学会から追われる、ということはまずありません。
「学会」とは
「生命倫理に反する研究(例えばクローンの作成とか)を行って学会を追放される学者」はフィクション作品によく出てきますが、そもそも学会とは何でしょうか。
「学会」という言葉に含まれる意味は2つ。
研究会の名称(日本地理学会など)
“研究者の集う世界”程度の意味(日本地理学界隈、のようなニュアンス)
よく言われる、年会費を払わないと追放される「学会」は前者です。
1.研究会の名称としての学会
専門ジャンルを同じくする人たちが集って、研究会や勉強会、雑誌の発行を行うのが学会です。
規模は違いますが、サークル活動・同好会活動のようなものです。
雑誌の印刷費や学会報告者の交通費など、活動に際して発生する様々な出費は、会員から納められた年会費によってまかなわれます。
論文の発表の場としての学会誌、口頭報告を行う場としての大会を設定してくれるのが学会。
責任(=会費納入)を果たさない人は、学会から追放されます。
何年まで会費の滞納を許してくれるか、督促をしてくれるか否かは学会ごとに異なりますが、会費未納が理由で学会を除名される人は案外多いように思います。
人間はルーズです(私を含みます)。
2.学者のコミュニティとしての学会
「研究内容が尖っている」ことが理由で「研究者のコミュニティ」という意味の学会を追放されるのは、あまり考えられないことだと思います。
戦時体制下で反政府的な言説を展開するというような事例であれば別でしょうが、言論の自由が保証されている社会ではまずありえないでしょう。
その主張に納得することはできないが、あなたの発言を封じることはしない、というのが正しい学問のあり方。
当然、双方が「学問的な方法論」を正しく身につけていることが前提ではあります。
学会から敬遠される人
むしろ「学会」で煙たがられるのは、しかるべき場にしかるべきように参加できない、TPOをわきまえない人(いわゆる学会クラッシャー)です。
▼佐藤大朗さんのnoteを読んでいて、色々と思い出しました。
TPOを踏まえて生産的な発言をするために、先輩研究者は頭を悩ませるものです。
そういう概念がないのがクラッシャー。
誌面の場合、編集担当者の裁量で対応可能です。
そのため、クラッシャーが出没するのは研究会や勉強会、いわゆる口頭発表の質疑応答の場です。
から始まって、その場の趣旨に反して演説のように発言し続ける人もいるのです。
一般的には、司会が「手短にお願いします」「時間が迫っておりますので…」のように牽制に入ります。
近しいジャンルの学会を特定の人物が「荒らして」回っているという情報が共有されると、様々な対策が講じられます。
質問は紙に書いて提出、司会が全て代理で読み上げる形にするなど、クラッシャーを暴れさせないために、学会の進行そのものに制限が加えられたりします。
それでも、その人の参加を拒否することはできないから運営側は苦慮するわけで、「学会」の懐はかなり深いといえます。
運営委員の皆様、ご苦労様です。