土再生のはじまりは「切り干し大根」
コロナ大乱1年目、大根の悲劇
コロナウィルス蔓延1年目の秋。
その年の大根は豊作で、
スーパーの店先にも立派で瑞々しい大根が並んでいました。
とはいえ、感染対策のため客足が遠のき
飲食店の多くがお店を閉めざるをえなくなり、
先の見えない不安に誰もが息を潜めるように暮らすしかなかった
あの頃。
とあるテレビのニュースで
地方の大根農家さんが
飲食店向けに栽培した大根達を出荷できないため
立派に育った大根達を
涙ながらにトラクターで踏み潰すという映像が流れました。
当時の状況を鑑みれば、
それは救いようのない仕方のない行為で、
映像で流れた光景は特別なものではなく、
その年の多くの農家さんもいろんな作物に対して
同じ対処を迫られていたことと思います。
育てた農家さん達も、
育ってきた大根達も、
そこまでに至る苦労も時間も
真実、無駄にするしかなかった本当に辛くて悲しくて悔しい
救いのない冬の始まりでした。
大根、食べなきゃと思う
大根大量処分の映像を見た日から、
「大根、食べなきゃ。」という思いに駆られた私は
とにかく大根の大量消費方法を考え始めました。
ふろ吹き大根、おでん、豚バラ大根、牛肉、鶏肉との炊き合わせ
サラダ、ゆず大根、なんちゃってたくあん….
食べ盛りの子供達がいた頃ならまだしも
普段食べる量に限界があり、
間食を漬物に置き換えたとしても
普段の調理くらいでは大根の消費量はそれほど増えることはなかったし、
大根つづきのメニューは案外食べ飽きてしまう。
「ダメだ、こんなんじゃまるで意味がない。」
食べるまでの期間が長ければ、なんとかなるかもと考え直し、
そうなるとやっぱり行き着く先は切り干し大根なのかな。
「そうよ!切り干し大根なら保存も効くし、
大根の大量消費も夢じゃない!」
「作ろう!切り干し大根!やるぜ!保存食!」
湿気の溜まりやすいベランダ
我が家のマンションは昭和の香りを残すいわゆる
「蹴上がり」のあるデザインのベランダで、
晴れていれば乾燥しやすく、曇天や雨天では湿気が溜まりやすい。
夏はエアコンの室外機から出る熱風が滞留しやすく灼熱地獄。
冬も風のない日は余計に寒い寒冷地獄。
そのために植物はほぼ育たず、
草系の園芸植物は持って3ヶ月。
ベビーリーフも二十日大根もへにょへにょで
シソすら枯れる。
野菜は蔓なしどじょうインゲンは優秀で、
それでも最高3本収穫でストップ。
引越し前から大切にしてきた月桂樹、ブルーベリーは
引越ししたその年に枯死し、
長年生き残っているのは山椒の木が2本と
「一番丈夫な品種だから!」という触れ込みで購入した金柑1本だけ。
しかも、山椒に至っては真夏と真冬の2度葉を落とすという
あまりにも過酷でブラックな環境。
もちろん金柑も似たり寄ったりで、
よくぞ生きながらえているといった感じで
私にとって、ベランダは疑う余地なしのデスバレー。
水やりに問題があるかもしれないけれど、
日中仕事に出掛けてしまうので土が乾燥するフォローは
まずできないのも仕方はない。
そんな場所で切り干し大根が作れるかと言えば、
答えは「できない」一択。
一択なのだけれど、
実はその頃までに全く別の理由からベランダの改造が
完了していたのです。