NPOのリスクを見極めるには?
こんにちは。リープ共創基金の代表の加藤です。
今年度の助成事業では全国で職を失った若者に対して就労支援の機会を提供する団体を中心に約1億7000万円の資金提供をさせて頂きました。
この助成規模は日本でも最大規模になるのですが、この資金を効果的かつ公正に使うにはとても苦労しました。
実際どんな提案が来るの?
大雑把に言って、文句のつけようのない提案をしてくれる団体は1割くらいです。こういう団体はこちらから教えを請いたいくらいで、採択した後に勉強をさせて頂くことも多いです。他の採択団体に不可欠なノウハウの源泉になったりします。ただ、優れた団体ほど、資金提供側を選んでくるので、全体のリスクを下げつつも、彼らに自由に資金を使って頂けるようにするというのが助成事業の最大のポイントだと思います。
ちなみに、「助成」という言葉は、優れた提案に対し資金を提供することを指します。つまり、重要なのは、資金を提供される側が資金の提供者よりも素晴らしいのだと信じることができるというのが前提です。「助成」はある種の投資でもあり、また、アウトソーシングでもあるので、もしも、資金を提供する側が当該事業において優れたパフォーマンスを出せるのであれば、自分たちで事業をすればいいわけです。逆に本当に優れた団体に助成ができるのであれば、彼らの成長や事業を邪魔をしないことの方が重要だと考えています。
従って、本当に優れた提案や、優れた団体を探し出せるか否かが中間に立つ財団や支援組織の最大の価値になります。
3割の団体をどう見極めるか
さて、1割の文句のつけようのない団体以外にどんな提案があるかというと、ああ、これは通したいなという提案は約3割です。事業や提案の中身はいいんだけれど、赤字が増えてきていて、団体の継続性に赤信号がついているケースが約3割。残りの3割程度は書類の形式や公募の趣旨が十分に理解されていないケースがでしょうか。
最低限の書類の形式や公募の趣旨が理解されていないケースは選考から外さざるを得ないのですが、悩みどころは、惜しい団体や伸びしろのある団体をどこまで採択するかどうかです。
コントロールできるリスクかどうか
問題になるのは、資金を提供するだけでは上手くはいかないのだけれど、成長の可能性が期待できる団体にどこまで「投資」するかという点です。取れるリスクなのか、取ると道連れになってしまうリスクなのかの見極めがもっとも重要になります。
審査にあたって、決算書などは出して頂くのですが、今回はこんな方針でリスクと可能性の双方を評価させてもらうことにしました。
リスクの見極め方
実際のところ、リスクの大元は経営者と組織文化にあることがほとんどです。これを見極めるには、これまでのように決算ベースも良いのですが、実際にオフィスに訪問するのがオススメです。アポなしの方が実態がよく見えるので、ふらっと訪問するのも良い手段です。
リモートワークで景色が変わりつつありますが、営利、非営利を問わず事務所の雰囲気が明るく、活気をかんじられるか否かはとても重要です。伸びる会社は「立っている人が多い」ともよく言われますね。メンバーの行動量が単純に多いのでしょう。個人的には、トイレも必ず使わせてもらうようにしています。私の経験上、物件や設備が新しいか古いか事業の成長とは関係なかったのですが、手入れをされているか否かは団体の事務処理能力と直結していました。
もし、こんなNPOや会社の目利きに興味があれば、藤野秀人さんの名著、スリッパの法則がオススメです。現場を訪れるだけで、会社の癖みたいなものがいかに読み取れるのか感覚的にわかるようになります。
2021.3.22
書き手・加藤徹生