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『 あなたを忘れない 』

本当の絶望とは

自分を信じられなくなった時にやって来ると
思い知らされたあの日から
砂を噛むように生きて来た

それでもそこにたどり着いたのは
気づかないうちに
神様の道標を辿っていたからかもしれない

そんな風に思えるようになったのも
あなたに
あなたたちの笑顔に出会えたから

だから
笑わないで聞いてほしい
子供たちよ
神様はいるよ

あなたの
あなたたちの中に


何にもない
何の取り柄もないわたしの
たった一つの願いは

あなたたちに
たった一度でもいい
嬉し涙を流せる ” 時 ” を
プレゼントすること

それだけだった

でも
それは
とてつもなく
大きな希だと
あの頃のわたしは
まだ気づかなかった

だってそれは
生きていて良かった

心が震える
ということなのだから

どんなに辛いことがあっても
心ん中に
たった一粒でも
嬉し涙の先っぽが残っていれば

人は生きていけると
そう思うの

その瞬間を
分かち合った人がいれば
人は一人ではないと
たとえ遠く離れても
この世界を信じることができるから

お掃除の最中
次から次へとトイレを覗きに来る子供たち
「どうしたの? 何か用?」
尋ねたわたしに
あなたが
あなたたちがくれた言葉

「何でもないよ。
  せんせの顔を見たかっただけ」
「せんせの声を聞きたかっただけだよ」

先生なんてかったるい言葉
自分には似合わないと
ずっと思っていたけれど
それでも
届けるものがあった喜びを

わたしは忘れない

校庭を駆け抜けるとき
追いかけて来る自分の影を
嬉しそうに確かめながら
踊るようにかけていたあなた

生きている
ということを確かめているのだと
気づかされたあのとき
あなたたちは
天国からやって来たのだと
教えてもらった気がしたの

寒い風の中
冷たくなった真っ赤な頬で
わたしのコートに潜り込んできたあなたたちの
あの温もりを忘れない

悲しくて
止まらない涙を流しながら
あなたが書いてくれたというサヨナラのお手紙
読みながら
わたしの頬を流れたのは
嬉し涙だった

「せんせぇ、わたしのこと忘れないでね」
そう言って
あなたが流してくれたのも
嬉し涙だったのね。

別れが寂しいのは
一緒に過ごしたその “ 時 “ が
大切だったということだから

あなたのいた嬉しい日々を
わたしは忘れないよ

だからあなたも忘れないでね
わたしのこと
わたしと過ごした嬉しい世界があったことを。

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