『 花束をもらったことがありますか? 』
ウォーキングの途中、
くたびれた身体を休めようと
腰を下ろした石のベンチには、
先客がいた。
誰が摘んだのか小さな花束。
忘れて帰っちゃったのかな?
と思っていたら、
走って取りに来たのは、
意外にも
小さな男の子だった。
てっきり女の子だと思っていたのに。
彼は小さな手でそれをまとめると
くしゃくしゃにならないように
そっと掌にのせ
落とさないようゆっくり歩き始めた。
なんて可愛いのだろう…と見ていると、
少し離れた所に
日傘をさした女性が笑って立っているのに気づいた。
あぁ!
お母さんにあげたくて摘んだのね?
暮れかけた公園の
優しい光景が
あの頃のわたしと
小さかった息子の
赤いほっぺと
懐かしい笑顔を連れて来て
胸がいっぱいになった
波打つことの少なくなったわたしの心が
甘い痛みに小さく震えて
嬉しかった。