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出身地問題
社会に出ると初めましての人との会話で必ずと言っていいほど出てくる「出身はどこですか?」という話題。
「◯◯県です。」
「これが有名ですよね!あれが美味しいですよね!」
と会話が続いていく。
私は生まれも育ちも東京の人間。
大抵の人はそれを聞くと「いいな〜。」と言う。
きっとそれくらいしか返せることがないのだろうなと思いつつ、頭の中ではいつも、「そっくりそのまま返したい…いいなぁー!!!(叫び)」という気持ちでいる。
東京で育って生まれた人間のいう「いいなぁ!」は、どんなに心の底から言っても伝わらない。
なに言ってんのって顔して笑われて終わる。そしてそこでまた、地方勢は〜と東京以外の結束力が高まっていく。伝わらないもどかしさ、寂しさ、色んな感情が込み上げてくる。
出身地の話題は、東京vsそれ以外みたいなところがある。
他にもまだまだ東京育ち、東京生まれの苦悩がある。
例えば、車の免許。
私は免許を取得していない。
取りたくなかったわけではなく、取るつもりでいた時期に家庭の事情で時間が作れなくなり、今の今までタイミングを逃し続けただけだ。
今でも取る気持ちではいる。
でも持っていないと言うと、「あー、東京は車必要ないよね。」とまたここで東京を理由に孤立する。
言い訳をつらつら言うのも恥ずかしいので、親が危ないからって許してくれなくてなんて当たり障りのないことを言って笑う。
最近では、「船舶の免許をとろうと思ってる!」と答えるようになった。(冗談ではなく、海が好きで母が取得したのを機に興味を持ったから)
そして観光地案内。
よく東京の案内を頼まれる。それ自体はなにも問題ないのだが、案内を頼んでくる人は大抵、東京に来てすぐに観光地という観光地(東京タワー、浅草、原宿、東京スカイツリーなど)はすでに巡っているのだ。
無難にカフェがたくさんあるところ?ショッピングができるところ?いや、でもそれはどこにでもあるか?なんてぐるぐると考える。
行きたい場所もわからないと言われると、どこへ行くべきか考えを巡らせすぎて頭がパンクしそうになる。
おまけにsnsに掲載されているスポットは、東京で育っても行く機会のないような場所も多いのである。
あとは方言。
幼い頃から憧れて育ったこともあり、今ではだれかの標準語からふとこぼれるなまりや方言に惹かれるようになった。
私も、「また出ちゃった。恥ずかし〜笑」と照れ笑いする可愛らしいひとになりたかったなぁなんて妄想したりする。
なんてここまで色々と書いてきたが
もし自分の出身地が別で、東京に出てきていたら
きっと同じことを言っていたのだろうと思う。
ないものねだり。頭ではわかっている。
でもやっぱり憧れるのだ。
幼い頃からたくさんのビルや人に囲まれて育ち、早くしなきゃという焦りや騒音、街の明るさに息苦しさを感じることも多かった。
そんな時に母と行く旅行が、私は大好きだった。
特に島は、時間の流れが穏やかで暑さもカラッとしていて嫌な暑さではなく居心地が良い。
人も気さくで、温かい。
海も、土の香りも、真っ暗な中に浮かぶ満点の星空も、カエルの大合唱を聴きながら寝る時間も全部が好き。
なので東京育ちにしては珍しいと言われることもあるが、実はカエルやトカゲも触れたりする。
たまに孤独だし寂しくもなるけれど、きっと東京で生まれ育っていなかったら出会えていなかった好きなものがたくさんある。
だから東京で生まれ育ってよかった。
と、この歳になって思う。ちょっとだけ。