転職25回 ~4回 Vol.2~
前回までのあらすじ
・新卒でブラック企業に就職したものの、約2ヶ月で退職。
・IT企業に就職するも、借金返済が追い付かずに退職。
・ソープランドに転職。過酷&ハイリスクなので退職。
・ボッタクリヘルス店。天才的詐欺師の才能を発揮するが1日で退職。
・イメクラ在住。イメクラ勤務。
さて、朝から晩までイメクラ内で生活する前代未聞のお話です。
イメクラの業務内容は、基本的には「タオルの片付け」や「プレイルーム&シャワー室の掃除」ですが、この辺りは吉原の高級ソープ店で鍛え上げられていましたので即戦力(?)でした。
イメクラの勤務時間は夕方18時~朝6時の夜勤です。仕事が終わったら、イメクラのプレイルームへ行ってご就寝するライフスタイル。さっきまで裸体の男女がイロイロやっていた部屋だとは分かっているのですが、当方は疲労困憊なのでそんな事を気にする余裕はありません。ぐっすりお休みして夕方にお目覚めし、シャワーを浴びてご出勤。朝から晩までイメクラ生活。ちょっとした変態でないと勤まりません。
さて、ここでまた1つ問題がありました。
朝6時に仕事が終わってグーグーとお寝んねするワケですが、このお店は朝10時から日中の営業時間がスタートするのです。日中は風俗嬢たちの出勤が少ないので全部屋を使いません。なので、自分が寝られる部屋は確保できます。
しかし、こちらが熟睡している最中に隣の部屋から怪しげな声が聞こえまくるのです。20代前半の健康男子にとっては、なかなか刺激的すぎる環境ではないでしょうか?
とはいえ、夜中の勤務中だってドアの向こうから怪しげな声が聞こえる環境にいるのですから、そのうちに慣れました。まぁ、通路に響き渡る大音量のユーロビートには辟易しましたが。
結構な人気店だったので、毎日忙しかったイメージがあります。
最初は掃除ばっかりしていたのですが、そのうちに店長からの信用を得られたようで、クレジットカードの売上の管理なども任せられるようになりました。クレジットカードの売上と実際の現金が間違っていないか、数百万円の札束を数えるのです。この現金を持ち逃げすれば、あっという間に借金が消滅するのになぁ…なんて思いながら計算していた記憶があります。まあ、実際にそんな事をしたら大変な事態になっていたのでしょうけどね。ビビりで助かりました。
そんな感じで順調に3ヶ月ほどイメクラ生活を続けていたある日。
夕方、いつものようにプレイルームでお目覚めしました。んんっ、いつもと何かが違う…。そうです、隣の部屋から怪しげな声が聞こえません。それに、通路に流れているハズのユーロビートも聞こえません。店内に人気すらありません。年中無休のハズのイメクラが謎のお休み状態です。
こ…これは何かあったな…。慌てて私服に着替え、裏口から脱出しました。
店の近くをウロウロしていると、先輩から電話がかかってきました。
実は、同じ雑居ビルには自分が働いているイメクラの姉妹店がありました。なんとそこに、警察の摘発が入ったとの事。お巡りさん達がやってきて姉妹店でアレコレやっている最中、自分は同ビル内でグーグー熟睡しており、お巡りさんがいる表口では無く裏口から運よく脱出できたのでした。
摘発の理由は「風営法違反」。風営法では、お店の場所から半径100m以内に小学校や図書館などがある場所には店舗を構えてはいけないという法律があるのですが、それに抵触していたようです。というか、まずそんな場所では営業許可が下りません。つまり「無許可」で風俗店を営業していたのです。こ、怖っ!
ここで、ある事実に気が付いてしまいました。
という事は、自分が働いているイメクラも無許可営業店だったのです。こ、怖っ!
リスクだけはノーサンキューだと思っていたのに、またまたやってきたハイリスク。
このままでは、いつこちらの店舗にも警察のガサ入れが入るか分かりません。
姉妹店の摘発が一段落した瞬間、イメクラの入口には、巨大な鉄の扉が設置されました。監視カメラも設置され、常連客以外は入店できなくなったのです。一見さんお断りの、完全会員制イメクラが誕生したのでした。
店側はそんな対応をしましたが、それでもリスクが消えたことにはなりません。
自分としては、借金返済があるのですぐには仕事を変えられません。しかし、まずはこの店で寝泊まりする環境を変えようと考えました。でないと、また住まい探しをしなければなりません。住所不定の切なさです。
ここで、一人の救いの女神が現れました。
女神とは、イメクラで風俗嬢として働いていたTちゃん(仮名)です。20代前半のAカップ。それしか覚えていません。
Tちゃんは自分より後にイメクラに入って働き始めたのですが、どうやら入店してからずっと自分のことを気に入ってくれていたようです。まぁ、神武以来のイケメンを自称する自分ですので、それは仕方ないのでしょう。
ある時、自分がイメクラで暮らしていると知ったTちゃん。どうやら母性本能がキュンキュンしてしまったらしく、「私のアパートで一緒に住もうよ」と提案してくれました。
もちろん、こちらとしては渡りに船。ありがたくご厚意に甘えます。
そして、若い男女がひとつ屋根の下に寝泊まりすれば、だいたい後はお馴染みのコースです(笑)。
さて、風俗業界においては「風俗嬢」と「店の従業員」の恋愛は禁止されています。
まるでアイドルグループのような話ですが、恋愛が発覚してしまった時のリスクも同様に高いのです。
私が働いていたイメクラでは、20代後半のマネージャーがいました。店長からの信頼が非常に厚かったのですが、この方が風俗嬢との恋愛がバレてクビになっていました。今までの功績がなければ、どのようなペナルティを負ったか分かりません。恐ろしや…。
そんなワケで、自分とTちゃんはバレないようにお付き合いを続けます。
2人でタクシーに乗ってご出勤。店から離れたところで降りて、二人バラバラになって歩いて店に行きます。イメクラではお互いに業務に励み(?)、仕事が終わったら何処かで落ち合ってタクシーで帰宅する日々。
このように書くと、「ええっ、自分の彼女が同じような空間で見知らぬ男性とアレコレしているんでしょ?嫉妬しないの?ケンカしないの?」などと思う方もいますでしょう。はい、しませんでした…と書くと自分がまるで人格障害者みたいな扱いをされそうですが、本当なので仕方ありません。当方、ちょっと変わり者なのです。この数年後、もっとトンチキな展開になりますので、今は大目に見てくださいな。
そしてイメクラで働き始めて約半年、Tちゃんと同棲を始めて約1ヶ月が経ち…。
自分はTちゃん宅から逃げ出し、そしてイメクラを辞めます。
その話は、次回に。