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#22 転がる石
「A rolling stone gathers no moss」
「転石苔を生ぜず」
これは米国や英国にもある諺だが、その解釈が面白い。
この「転がる石は苔が生えない」と言う意味を、日本では「腰を落ち着けずに動き回ってばかりいると身に付かないぞ」と受け取る。
つまり「苔」は良いもののイメージ、熟練の証しとしての意味を持ち、つまりこの諺は戒めの言葉としてある。
一方米国ではその意味を「動き回ってさえいれば、苔など生えない」と、「苔」をマイナスのイメージ、忌むべきモノと捉え、つまりこの諺は戒めと言うよりは、生き方の決意表明のようなものとしてある。
ところが、今まで私は欧米と日本では解釈が正反対と思っていたのだが、イギリスも日本と同じような解釈をする事を知った時は驚いた。
考えてみれば、骨董に価値を見出し、歴史ある建造物を大切に保存しようと言う英国社会の共通意識には苔をプラスのイメージに捉える感性が育っていてもおかしくはない気がする。
すると同じように古くからの建造物が保たれている他のヨーロッパ諸国ではどのような解釈なのだろう。世界的にはどうなんだろう。
ひょっとしたらアメリカ的な解釈は少数派である可能性もあるのではないか。
そもそもこんな言い回しが世界中にあるのだろうか?
英語を母語とする国だけなのか?
と、次々に疑問が湧いてくる。
すると、バンド名をマディウォーターズの楽曲から名付けたイギリスの"The Rolling Stones"。
その名前はどちらの意味合いで付けられたのだろう。
マディの曲であるし、動き続けることの「ロックなカンジ」から米国式だとは思うが、イギリス人である彼らは別の解釈があることを知りながら敢えて付けたような気もする。
というのは考え過ぎか。
ボブディランの「Like a Rolling Stone」はどのような意味合いで歌っているのだろう。