読書録「行動を変えるデザイン」
スティーブン・ウェンデル氏による書籍「行動を変えるデザイン 心理学と行動経済学をデザインに活用する」を読了。
個人的な備忘録として、簡単な感想とまとめを記載しておく。
1.本書との出会いの経緯
行動経済学、幸福経済学に興味を持ち始めたところで刊行された本書。行動経済学を活かすための手法が得られるかと思い購入。
2.本書の概要
本書で言うデザインとは、いわゆる美術的なデザインではなく、"設計"である。ビジネスやプロダクトの設計にあたり、行動経済学をどのように活かしていくかがまとめられた書であり、序盤は著者の考える論理方法の紹介、中盤以降はフェーズごとの具体的なHow Toを紹介する書になっている。理論本であり、How To 本でもある。
本質的には、顧客のストーリーを理解してプロダクト設計を行い改善を続けることにあり、先日読了した「ジョブ理論」に通じる。本書では、プロダクトがユーザーの行動を変えることがポイントとして語られるが、これはジョブを解決するためにユーザーがプロダクトを購入することと同義(購入によってユーザは何かしらの行動を変えている)。それぞれの書で言葉とニュアンスは違うが、本質は同じことを説いている。ただし、本書の方がHow To がケース別に記載されていることもあり、実用性はある。
3.本書の要点
要点となる一言は、”CREATE”である。Cue(気づき)、Reaction(反応)、Evaluation(評価)、Ability(能力)、Timing(タイミング)の頭文字をつなげたもの。ユーザが何かしらの行動を実行するための心理的なフェーズを表したものであり、プロダクト設計においても、そのプロダクトを使い続けてもらうため、生活に浸透させるために必要な要素となる。
まず、ユーザはプロダクトを認知できるか、認知した後、この瞬間似利用するだけの理由(メリットであり、タイミングであり、利用するまでのハードルの有無)があるか、を5つの壁として表現している。
ユーザがプロダクトに気づかなければCueの壁を超えられず、気づいたとして利用してもらう気持ちにならなければReactionの壁を超えられず、使い続けてもらえない。使うためのハードルが高い(準備する物が多い、手間がかかる)のもAbilityの壁を超えられない。
この5つの壁を超えるために、プロダクトをどのように開発していくか、企画段階から設計、開発段階、プロダクト提供後の評価や改善に至るまで、各フェーズにおいてHow To が記述されている。How To の部分は、要約すると小さなPoCを短いスパンで繰り返し、意見を集めひたすら改善をかけていくことが好ましいと表現されている。多くの手法の記載はあるが、個人的には既知の内容が多く、本録でも深くは触れない。
4.本書の深堀り
ジョブ理論が、ユーザ体験を基にプロダクトを「雇う」ことを主眼においたのに対して、行動変容デザインではプロダクトを「行動の中に埋め込み習慣化させる」ことを主眼としている。
行動変容デザインでは、「雇われた」プロダクトであっても、ユーザの日常生活を変える要素を持ち、習慣化されないことには良いプロダクトといえないことから、「行動の中に習慣化」させるまでをゴールに捉えている。如何にプロダクトを購入してもらうか、購入したものを使い続けてもらうか、使われ方をどうリサーチするか、何を改善するか、改善で習慣化されるか、などなど様々な手法の結果、習慣化まで導くことがポイントとされる。
プロダクトを提供したのちの改善まで見据えた準備ができているか、も非常に重要であり、ユーザの使い方の収集方法や改善を素早く行うための仕組みづくり(アジャイル開発の土壌の有無)など、プロダクトの外の環境も重要な要素になる。プロダクトの企画設計に加えて、将来の改善を見据えた徹底した準備も心がけていきたい。
5.所感とまとめ
ジョブ理論のあとに読んだこともあり、比較的スムーズに落とし込むことができた。本質的に同じことを表現していることから、ユーザの行動を変えるためのプロダクト設計が重要であることを再認識できた。雇われるプロダクトであり、使い続けてもらえるプロダクトにするためにも、ジョブ理論と行動変容デザインで学んだ2つは重要な指標になると思う。
事業構築を推進する身としては、自身のプロダクトのアウトプットに活かしていき、習慣化されるプロダクトを生み出していきたい。
〆